その声は
「でも、まぁ、焦ってもどうか出来るわけやない。手がかりを探せばええ」
「能力…」
「能力?」
ギュッと握る手が強くなる。
「祢々切丸に能力を宿す…」
「そ、れは…だれが」
目を伏せ首を振る。
「わからない…でも、声が聞こえた。皆は能力をどうやって出しているの?」
なゆたは無意識に出している。
自我を持っていない。
「それは…使おう思って使っとるからなぁ…俺にもやり方が分からん」
「そっか…」
小さく呟く。
終わったのに終わっていない。
ヤマトの能力を戻す
目的の出発地点
なゆたの能力
問題点が多すぎる。
「なぁ、なゆた」
横を見る。月に照らされる金髪が揺れる。
「ゆっくり1つずつ解決してけばええ。ヤマトの能力がなくたってヤマトが居らんくなるわけやない。焦ったところでどうもできん」
「…うん」
「さてと、考えてもしゃーない。また遅くまで起きとったら朝起きれんとちゃうん」
「……起きるし」
「なゆたってほんまなんでそんな意地っ張りなん…?」
「うるさい…バカ狐」
「あー!!!ヤマトの影響やろ!!そんなとこ兄ちゃんに似んくてええねん!ほら!寝ろ!クソガキ!!」
白夜はうるさい。
前会った時はもっと静かだったのに…
「おやすみ、白夜」
「おー、おやすみさん」
自室に戻り壁に祢々切丸を置く。
"いつかこの国は赤い空に覆われ1人の化け物が暴れるだろう"
"妖怪の王、お前が生きていればこの祢々切丸で止めろ"
知らない声。
顔がぼやけて見えない。
君は誰。
あの大きな鬼は…
"あの化け物は──"
「なゆた!」
「…っ」
目を開ける。外が明るい。
目の前にはヤマト。
焦った顔で見ている。
「…どうし、たの」
「起こしに来たら魘されてたから焦った…」
ゆっくり身体を起こし祢々切丸を見る。
「おはよう、嫌な夢でも見たか?」
「お、はよ…わからない」
布団を握る。
汗かいてるのは自分でもわかる。
化け物…
それは誰を指して…
「ボクの、こと…」
「え?」
「なんでもない。顔洗ってくる」
どこか思い詰めた顔。
声をかける前になゆたは部屋の外に出る。
あれは人間だった。
人間と妖怪の前王…
ボクの父。
赤い空…化け物…
誰でもないボクのことを話していた。
ボクが暴走するのは生まれた時からわかっていた?
「なにか…どこかに…」
濡れた顔を拭き、居間に行く。
「おっはよー!ヒメ!よく眠れた?」
「おはようなゆた。ご飯運んでくれ」
いつもの朝。
そんな朝になゆたはどこか安心する。
安心するのにどこかザワつく。
「今行く」
今は見ないふりをしたい。
壊したくない。
この日常がいつまでもずっと、続けばいいのに…
なゆたとヤマトは静かに食事をする。
「なぁニコちゃん…あまりにも暗すぎひん?」
「本当に…この2人なんで変なとこで似るのかしら…」
「そりゃあ、兄妹やからやろ…」
ヒソヒソとニコと白夜が話す。そんなことは気にもせず2人は食べ続ける。
ヤマトもなゆたもどこか淀んだ空気。
ニコはため息をつく。
「ねぇ、今日って休みよね?だいぶ暑くなってきたし」
「ちょっと気晴らしに付き合って」
圧をかけて笑うニコにただ頷くことしか出来ない。
嫌な予感がする。




