最後のさいご
黄泉との因縁に終止符を付けるため、戦うなゆたたち。
今、特務退魔課との決着が決まる
「さっさとくたばれ人間風情が」
その言葉がヤマトに打ち付ける。
…あんな言葉使うような奴だったか…?
「よそ見とは余裕なんだね」
「心の整理がついたらからか?俺はもう容赦はしない。迷わない…黄泉、」
「今すぐ眠らせてやるよ」
「君にできるかな。なゆたをほっといていいのかい?」
「あぁ、あの子は強いからな」
黄泉は面白くなさそうに睨む。
「いつまで兄気取りなんだい?あの子の兄は俺だろう?」
「そうだ。お前はなゆたの兄だ。だが、俺のことも兄だと慕ってくれる。だからさ、黄泉…」
「もういいから、眠ってくれ。頼むから」
切なく笑う。
俺がこの手で殺さなくちゃいけないのかぁ…
「死ぬのは君だ。赤夜叉。なゆたは渡さない。俺の傍でずっと閉じ込めておく」
「昔のお前はそんなこと思ってても口に出すような奴じゃなかった。純粋な兄をしていた。それすらも忘れたのか」
「黙れ…」
ヤマトはため息を着く。
「初めて会った日、俺はお前のことが嫌いだった。なんも知らねぇくせしてズカズカ踏み込んできたお前が」
「けど、一緒に暮らして一緒に笑って一緒に怒られて俺はお前が大切だって思えたんだ」
黄泉の剣が降りかかる。
だが、
ヤマトの目線は黄泉。
腕を上げ、素手で刀を掴む。
腕を伝って血が流れてもヤマトの目線は黄泉だけ。
「お前は俺に言ったよな?なゆたを頼んだって。覚えてねぇかもしれないが俺はお前に託されて嬉しかった」
黄泉の顔が歪む。
「離、せ…っ」
「離さねぇ!!俺はずっとお前に呪われてた!!!命令という名の呪いを!!その呪いをかけた本人が忘れてたら俺のこれまでは何だったんだ!!戻ってこい黄泉!!俺らは…」
「俺らは友達なんだろ!!」
一瞬、黄泉の目に光が宿る。
「ヤマ、ト…」
だがすぐに蹲る。
「あ"ぁぁ…っ!!!」
それと同時に凄まじい刃のぶつかる音。
視線だけ少し向ける。
「忌み子の王。貴様はなぜ今頃になって王となった」
「…君とは話したくない」
なゆたは無表情に相手に襲いかかる。
その小さな身体でなんていうパワーなんだ…
「ヤマトを傷つけた罪で死んでもらう。容赦はしない。たとえ、壊れてもお前を殺す」
黒い瞳には如月。ただ1人。
黒い霧が溢れ出る。
「壊れればそこの2人も死ぬぞ」
「関係ない。お前を殺したらそれでいい」
大鎌を弾かれ、咄嗟に離し刀を出す。
「しつこい奴だ!貴様は!!」
なゆたは立ち止まる。
ユラユラ小さく揺れる。黒い霧が一気に広がり、
重い空気が支配する。
「また繰り返すのか?!」
「ボクから大切なものを奪おうとしたんだ。それだけの覚悟があるってことでいいよね」
如月が押されるもなゆたは動きを止めない。
黒い霧は増えていく。
「くっそ…なゆた何を考えて…」
なゆたに恐怖を覚える。
思い出したくない記憶。
「ならばここで死んでもらうぞ忌み子の王!!!」
次の瞬間、
如月の腕が飛ぶ。
カラン
カラン
と、剣が地面に打たれる。
「…っきさ──」
突き出された刃先。
「ボクの勝ちだ。人間は妖怪に勝てない。黄泉を使い、ヤマトを傷つけた。死んでもお前だけは許さない」
首を刎ねる。
転がる頭をなゆたは刀で刺す。
「終わっ、た…?」
終わった。それなのになゆたは止まらない。
ただ無表情に顔を刺し続ける。
「なゆた!!止まれ!もう死んだ!終わったんだ!」
「終わった…?なんで?まだ敵は生きてる」
黒い瞳。
ゾッとした。
なゆたは指をさす。
指した先は、
黄泉。
刀を引き抜きゆっくり近づく。
「やめろ!今の状態だと───」
ヒュッ
目の前には刃先。
「どいて。そいつ殺すから」
「お前の…兄だぞ…」
「関係ない」
「なゆた!いい加減にしろ!!!」
肩が揺れる。それでも黒い目はヤマトを見る。
「…なんだよそれ…もういい。ヤマト、眠ってて」
ヤマトに向かい、なゆたは刀を振り下ろす。
死ぬと思った。
けど、切られたのは俺じゃなかった。
目の前に飛び出る血。
揺れる銀髪。
「黄、泉…?」
また繰り返した。
また同じ光景を見た。
「なゆ、た…もう終わった…戻っておいで」
優しい笑顔。なゆたの目がゆっくり金色に戻っていく。
「ボ、クは…なんで…」
「黄泉!!」
「やぁ…ヤマト…元気、だったかい…?」
「なんで、また…っ!!」
「君が、あまりにも…うるさく起こすから…ふふっ、様を、付けるのは…もうやめた、のかい?」
俺はずっと守れない
同じ悲劇を2人に負わせてしまった
「ヤマト…俺は死んだ、んだ…けど、無理やり…蘇った…生きて、ちゃいけないんだ…」
「なゆたを…責めないでくれるか、い…?」
「責めるわけねぇだろ…っ」
「そう、だよね。俺らの大事な、妹だもんね…なゆ、た…大きくなった、ねぇ…」
「はっ、はぁ…っはぁ…何して…ボクは…」
「なゆた。こっちおいで…」
黄泉の手がしっかりなゆたを握る。
「君の兄は…ヤマトだろう…?泣いてばかり、じゃ、兄ちゃん困るん、じゃないかな…?」
「でも…っ、君も兄で…」
「思い出し、ちゃったかぁ…そうかぁ…本当に、大きくなった…すっかり、お姉さん…だ…」
黄泉はゆっくり起き上がりなゆたの刀を手に取る。
「なに、してるの…兄様…」
震える声。
黄泉は自分の体を刺す。
「何、やってんだよ…っ!」
「祢々切丸は…ここに、ある…それで君の能力を、戻して…でないと、なゆたが前に…進めないだろう…」
「ボクは…また兄様を殺して…」
なゆたの髪を優しく撫で笑う。
「俺が…自分で刺したん、だ…なゆたに、切られる前に…」
「その時点で…意識は危うかった…」
「なん、で…そんなこと…」
「祢々切丸を…渡すため」
「いいかい…2人とも…2人、は…強い。その強さを、もって…しっかり俺の分まで、生きてて欲しい…」
「死な、ないで…ボクのせいだ…また、簡単に暴走して…」
「ほら…ヤマト、妹が泣いてる…守ってあげてよ…」
「馬鹿野郎…っ、なんで…なんでこんなことしたんだよ…っ」
「こういう、運命だよ…ヤマト。もう一度、君と話せて、よかった…もう悔いなんてない…大好きだよ。ふたり、と、も…」
手がなゆたの頬から落ちる。
「兄様…っ!兄様!!なんで…っごめ、ごめんなさい…っ!!」
「…っ、馬鹿野郎…」
大きな声で泣くなゆたとは対照的に静かに泣く。
昔みたいに大きな声は出なかった。
「兄、ちゃん…ごめんなさ…い…っ」
なゆたを引き寄せる。落ち着かせるように背中をさする。
「なゆたのせいじゃない。黄泉を無理やり蘇らせ、この運命を作ったこの組織が悪い。だから自分を責めんな。俺ももう自分を責めねぇ」
「けど、もう安らかに寝れるように安全な場所に運ぼう」
ふと黄泉を見るとなゆたの刀とは別の刀が乗っていた。
「これ、は…祢々切丸…?」
「本当に最後の最期までとんだお人好しだ…」
黄泉を持ち上げる。
「転送術式」
白夜から貰った札で4人が待つ場所に帰る。
静かな空間。血を拭き、綺麗な顔で眠る黄泉。
「もう、悪い奴らに捕まるなよ。黄泉」
風が吹く。
"大丈夫"
そんな声が聞こえた。
ここまで見てくださりありがとうございます。
特務退魔課との話が終わりました。
探していた祢々切丸。その刀がついになゆたの手に…
あれ?目的達成されたんじゃ…




