生まれた理由
街を荒らしていた赤夜叉──ヤマト
ヤマトの目の前に現れたのは────
「また"あいつ"だ!追え!」
「しつけぇんだよ!クソ野郎!」
あれから2年。ヤマトは盗みをしては暴力が増えた。
「はぁ…っ、はぁ…今日はしつこかったな…」
盗んだ食べ物を齧り空を見る。
「静かだなー…」
睦月が死んで2年。
まだ信じられずにいる。
草陰から音がする。
耳を動かし振り返ると、
妖怪がいた。
「…何もんだてめぇ」
「こいつが噂の半妖か。半妖の肉はよく売れる」
…こいつ噂の半妖狩りか?
「そう簡単に殺されてたまるかよ」
ヤマトは姿勢を低くし相手を睨む。
その瞬間、
相手は真っ直ぐヤマト目掛けて短剣を振る。
「…っ」
避けるも左手から血が出る。
「いってぇ…っ!」
「反応はいいな。だが次は避けられるかな」
ヤマトは振り返り走る。
やばい…確実に殺される…っ
本能が警告している。
だが、なんの警告かはわからない。
「逃げんなよ半妖。この世界にお前の居場所なんざねぇんだ。大人しく殺されろ」
「はぁ…っはぁ…!」
殺らなきゃ死ぬ…!!
そう思った瞬間、白い霧から大剣が現れる。考える間もなく相手を切った。
流れる血。
返り血がヤマトの頬を濡らす。
「…へ?」
意識が戻ったかのように呆然と立ち尽くし右手を見る。
血で染まった大剣。
「ひっ…!」
投げ捨て腰を抜かす。
先程、食べた物が逆流し出てくる。
「お"ぇ…っ」
お、俺が殺した…?
何やって…
だが、奴の言葉が張り付く。
「居場所がない…」
「俺は…これさえあれば居場所を作れるのか…?」
大剣を握り直し見つめる。
初めて人を殺した。
なのに急に冷静になる。
「ふはっ…あはははは!!!そうか…そうか!!俺はこれで上を目指せばいいのか!!」
街にもどる。
バカにしたやつ。
石を投げたやつ。
あの日、睦月を蔑ろにしたやつは
「全員殺す」
「あいつだ!昼間の盗んだもん返せ!!」
ヤマトに殴りかかろうと走る。
だが、
相手の首がポロッと取れる。
「俺をバカにしたやつは全員殺す」
光のない赤黒い目。
誰も信じない。
誰も頼らない。
俺は、俺しか信じない。
村が消える。
それは1人の少年によって。
その少年は赤い髪をした犬神の半妖。
「次だ」
そう言い歩き出す。
空は曇り後に雨が降る。
濡れた髪の隙間からただ殺人鬼の表情。
あの日以来、人を殺すのに抵抗がなくなっていた。
村から村に。
半妖とバカにした妖怪は全員殺してた。
そして誰かが俺に向かって言った。
「赤夜叉」
「赤夜叉…?」
ヤマトは立ち止まり、大剣を肩に担ぐ。
「赤夜叉か…へぇ…おもしれぇ異名だな。勝手に呼んでろ」
村人は逃げ出す。
「世界が嫌いだ。妖怪も人間だった父親も俺なんか作りやがって…」
赤夜叉が生まれた。
妖怪は人の噂で作り上げられる。
小さな子犬のような耳と尾はなく、大きな耳に大きな尾。
犬神──赤夜叉は半妖ながらもそこらの妖怪より殺しを続け恐れられた。
雨が続く水無月。
ヤマトは大人に押さえつけられている。
こいつら村人じゃねぇな…っ
すると
突然、若い声がする。
不思議に思い、顔をあげると
「君が村を荒らしてた犬だね」
「んだ、てめぇ…殺すぞ」
「噂の赤夜叉くん?」
銀髪の少年はにっこり笑う。
「だったらなんだ。今すぐどけねぇと本当に殺すぞ」
「それは怖い。父様!居ました!犬神の子です!」
奥から大きな鬼が現れる。
ヤマトは威圧で声も出せずただ見上げる。
「貴様か。村人を次々殺しているのは」
「だ、だったらなんだ…」
「俺を前にして話せるとは…気に入った!着いてこい」
「行かねぇよ…俺は上に上がって───」
「それを手伝ってやる」
濡れた服の上に大きな鬼は自分の羽織を掛ける。
大きすぎる羽織の裾は地面につき汚れた。
「あん、た…」
「俺はこの国の王だ。そこの子供は俺の息子。娘もいる。どうだ。俺たちのそばに来ないか?」
手を引かれる。
雨が止み、太陽が顔を出す。
「俺は黄泉!君名前は?」
「なんでてめぇなんかに…」
「教えてよ!」
太陽のせいか、笑顔が眩しく見える
「……」
「ヤマトだ」
「ヤマトね!よろしく!ヤマト!」
太陽のように眩しいそいつは、
俺に笑う。
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