犬の少年は夢を見る
ヤマトの少年時代。
睦月と過ごす日々の先には───
「ちっ、逃げよったか…追うぞ黄泉」
黄泉は目を見開き呆然と立っている。
「お、れは…」
赤い髪の少年が目の奥で笑う。
「黄泉」
名前を呼ばれ現実に戻る。
「なゆたを取り返したければあの半妖どもを殺せ。わかったな。命令だ」
「…はい」
◇◆◇◆
「なんかヤマト、今日ぼーっとしてない?」
「そうか?なーんか忘れてる気がするんだよな」
ヤマトと白い少年
"睦月"
「てか、睦月。その怪我どうしたんだ?」
「あぁ、これ?ちょっと掠っちゃって」
「ほんと、睦月はおっちょこちょいだよなー」
まだ幼いふたりは川に向かう。
睦月と呼ばれた少年。
「俺たち半妖は舐められたらお終いだ。強くなっていつか上を目指す!」
「ヤマトの夢はでかいなぁ…じゃあ俺はヤマトに使える将軍になろうかな」
「睦月の剣術ならあっという間になれるぜ。特にあの鎌!さすが鎌鼬だ」
「やめてよ恥ずかしいなあ」
川の遠くで叫び声。
「なんだ?」
近くに行くと猫の妖怪が溺れていた。
「助けなくちゃ!」
2人が向かおうとした瞬間、カラスの妖怪が助けに入る。
「俺たちの出番はなかったみたい。ほら!1番でかいザリガニを釣った方が勝ち!」
"ヤマト"
遠くで声が聞こえる。
「誰だ…?」
遠くを見つめる。だが、その場にはヤマトと睦月の2人だけ。
ほかの気配もない。
「どうしたんだ?」
「いや、なにもねぇよ。お!ザリガニ発見!」
「俺の方がデカイな」
「くっそー!」
日は落ち2人は帰る。
「じゃ、ヤマト!また明日!」
「おー!またな!」
手を振り家の中に入る。
その瞬間、
鈍い音。
頬に激痛が走る。
見上げると母親が睨んでいる。
「どこ行ってたんだい」
「…」
何も答えない。
「なんだいその目は!!アンタのせいでアタシの人生はめちゃくちゃだ…っ!何処にでもほっつき歩いてるんじゃないよ!」
犬神の母親。
そして、
人間の父。
父は母の手によって殺された。
目の前で。
けど、俺には睦月がいる。
睦月がいてくれたら俺はこんな生活は我慢できる。
ヤマトは玄関に立ったまま小さな拳を握る。
約束の場所。そこで睦月を待つ。
暮らせ待てど睦月は来ない。
岩の上に座りボーッと空を見る。
"ヤマト"
またあの声。
懐かしくて、守ってあげたくなるような声。
誰だった?
あの銀髪の少女は…
「…考えても分かんねぇもんは分かんねぇよな」
ヤマトは立ち上がり踵を返す。
村に戻ると人が集まっている。
好奇心で駆け寄ると白い髪に血が滲んだ姿。
「むつ、き…?」
人をかき分け前に出る。
「親に殺されたって…」
「え、私は村の子供がって聞いたわよ…」
「睦月…?」
近づき、揺らす。すでに冷たい身体。
「なんで…誰がこんなことを…!!!」
顔をあげるも誰も何も言わない。
「まぁ、でも…」
「半妖だからな」
その瞬間、思い切り殴る。
「ふざけんな!!!人が死んでんだぞ!!半妖も妖怪も関係ねぇ…!!人1人死んでその言葉で片付けるなんてどうかしてんじゃねぇのかてめぇ!!」
「なんだこの子供!いきなり殴りやがって!!」
殴り返され尻もちを着く。
「許さねぇ…てめぇら全員殺してやる!!!」
だが、
所詮は子供。大人の力に勝てるはずがない。
血でグシャグシャの顔。
ボロボロの服。
幼いヤマトには理解ができなかった。
「なん、で…俺たち半妖ってだけで…」
誰も信じれない。
誰も頼れない。
守れるのは自分自身だけ。
家に帰ると母親はいなかった。
食べるものも何もないヤマトはそっと店の陰に隠れ食べ物を1つ奪う。
「あ!おいコラガキ!!!盗んだもん返せ!!!」
ヤマトは必死に走る。
生きるため。
睦月の無念を晴らすため。
「睦月、俺…絶対、上を目指してこの国を変えるからな…っ」
ヤマトの目は赤く淀んだ。
ここまで見てくださりありがとうございます。
ヤマトが軍に入る前の話です




