王の導き
現れた黄泉に悩むヤマト。
王であるなゆたが放った言葉とは───
王座の部屋に行くとヤマトが地面に座っていた。
近づこうとすると
地面を殴る音。
何回も
何回も。
ふと見ると拳から血が出ている。
「…っ兄ちゃん」
なゆたはすぐ駆け寄る。
「…どうしたんだ?なゆた」
笑っている。
なのに、目は笑っていない。
その顔に足が止まる。
「…なゆた、お願いがあるんだ」
「なに…?」
ヤマトは王座を指さす。
「ちょっとそこに座ってくれないか?」
「…うん」
なゆたは王座に行き座る。
そして、ヤマトを見た。
不思議に思っていると、
「王」
跪き、頭を下げる。
「それヤダって──」
「俺は、今とても悩んでおります。貴女様の兄である黄泉様を連れ戻すか」
「敵として殺すか…」
「黄泉様は確かに亡くなられた身。俺がこの目で…体温で、感じました。死者が蘇るのは術式でない限り…不可能です」
「王のご決断にお任せします」
なゆたは息を吐き、静かに目を閉じた。
「ボクが殺すと言えばお前は黄泉を殺せるのか?トドメを刺すことができるのか?」
「お前はボクに決断を委ねて逃げようとしているだけではないのか?」
「過去は消えない。消えない過去を背負いどう前に進むか」
「生き物は後ろを向いて歩けない」
なゆたは立ち上がりスッと目を開ける。
「ただ前だけ見ろヤマト。お前はこの国の総大将だ。王であるボクの護衛だ」
「そして、」
ヤマトの前に行き手を握る。
「ボクの兄ちゃん、でしょ」
血で滲んだ手を優しく包む。
「なゆたのことは大切だ。けど、それと一緒なぐらい…」
「俺にとって黄泉の存在は大きいんだ…」
「悩む必要はないよ。あの日、ちゃんとヤマトの声で黄泉はヤマトを見てた。操られている可能性を考えよう。そして、取り戻そう。黄泉…兄様を」
なゆたは手を引き、外に出る。そこにはみんなが集まる。
「ニコ、絆創膏ちょうだい」
「怪我?私が治療するわよ?」
「いいの」
消毒液と絆創膏を貰いヤマトの拳を手当する。
「ありがとな、なゆた」
「お守り。兄ちゃんが道に迷った時、ボクがすぐ駆けつけれるように」
そう言い、拳の上に貼った絆創膏に軽いキスを落とす。
「俺ぜってーこの手洗わねぇ」
「汚いから洗ってね」
なゆたは立ち上がりサクヤの元に行く。
「ねぇ、サクヤ。前にサクヤはどっちか選べって聞いたよね」
「…あぁ」
「ボクはどっちも選ぶ。ヤマトも黄泉も。どっちもボクの兄だから」
(それができたら…いや、)
「なゆたならやって見せそうだな」
「うん、そのためなら手段を選ばない」
「たとえ、守ってきた人間を犠牲にしても」
「そうか、だが無理はするなよ。なゆた」
「うん」
今日も晴天。
ボクは──
兄様を殺す覚悟はできているよ。
兄ちゃん
ここまで見てくださりありがとうございます。
なゆたが最高に王してますね




