絶望
妖怪の国から帰ってきたなゆたたち。そこには死んだはずの実の兄が立っていた。取り戻そうと刃を交えた瞬間、現れたのは───
刃と刃がぶつかる音。
ヤマトは武器すらも出せずにいた。
なゆたが戦ってる…行かなきゃって分かってるのに…っ
「クソ…っ!」
「ね、ねぇ…ヒメ押されてない…?」
「…そりゃあ、兄と対面すれば戸惑いも──」
「違う…」
ヤマトが割り込む。
「単純に、黄泉が強すぎるんだ」
ヤマトは奥歯を噛み締めた。
「ただあそこまで強いかはわからない。けど、」
「俺は一度も剣術であの人に勝てなかった」
「勝てなかっ、た…?冗談でしょ…?」
「あの国で1番を誇ったお前よりか?」
「あぁ…」
大きな音が響く。
咄嗟に見るとなゆたが姿勢を低くし刀で立っている。
右腕からは大量の、
──血。
その瞬間、ヤマトの中でなにかが切れる。
「黄泉、てめぇ!!!」
大剣を出し黄泉一直線に振り上げる。
「また君か…」
「実の妹に血を流れさせてんじゃねぇよ!!」
「必要なことだよ。力づくでもなゆたを連れて帰る」
ヤマトは俯く。
「させねぇよ…させるわけがない…」
力いっぱい大剣を握り震える。
「忘れたんなら思い出させてやるよ!!てめぇの友達想いはそんなもんなのか黄泉!!!」
その瞬間、
黄泉の顔が歪む。
「俺、は…なにを…」
頭に流れるノイズ。
「痛くても辛くても嫌でも思い出せよ!!お前が俺に手を伸ばした日、隠れて街に降りた日!!そして一緒に怒られたあの日々を簡単に忘れてんじゃねぇよ!!!」
剣を投げ捨て肩を掴む。
「俺らは友達なんだろ?!なぁ!」
「ヤマ、ト…」
一瞬、目に光が入る。
「…っ?!ヤマト!!」
なゆたが飛びかかりヤマトの首を引く。
⎯⎯⎯次の瞬間、
重い圧が、その場の空気を沈めた。
「実に熱い友情だ。けど、それも終わりにして欲しい」
その場にいる4人は言葉を失う。
だが、相手はそんなこと気にせず黄泉の肩に手を置く。
「お前の目的はなんだ?答えてみろ」
「俺の…目的は…なゆたを…」
「愛おしい妹が半妖に連れてかれた。だから取り返す。そうだろう?」
「いや、でも…」
「切れてきたか…」
「隊長〜ネズミ捕まえました。これどうします?」
「有馬くんまじウケる。ネズミじゃなくて」
「狐でしょ?」
後ろから現れる緑色の髪をした青年─有馬
と水色の髪をした少女─白雪
「…は?」
ニコは目を見開く。
有馬の刀の先から血が流れる。
その反対の手には血だらけの
白夜
目線に気づく有馬が笑う。
「あぁ、これ?この狐…いろいろ厄介だったので先に処分しようかと」
ニコは目に見えない速さで白夜を掴みまたサクヤの元に戻る。
「わぁ、速い!」
「ちょっと…っ!ねぇ!!」
「ゲホっ…っ、やぁ…ニコちゃん…っ」
肩で呼吸…息が浅い…っ!
「待っててすぐ能力を使う。サクヤ」
「手早くな。俺でも防ぎ切れるかわからん」
「ニコちゃん、サクヤくん…あの2人連れて逃げぇや…あやつら化け物や…大妖怪たちと比にならん…」
「喋らないで…!」
「あ、ちょっと治されたら困るんですけど」
有馬は札から鎖鎌を取り出し一気に距離を詰めニコたち向かって振るう。
「あれ?」
前にはサクヤ。鋭い視線を送る。
「相手は俺だ」
「カラスさんが相手?カァカァ」
バカにするように笑う。
「ニコちゃん…ほんまにあかん…っつ…」
「黙って治療受けてなさい」
「貸しひとつ作ってもぉたな…」
「要らないわよバカ…バカ白夜…」
目に溜まる涙を指で拭う。
「ははっ…べっぴんさんが簡単に泣いたらあかんやん…」
そのまま白夜は静かにニコの能力に身を委ねる。
ここまで見てくださりありがとうございます。
お盆なので兄様帰ってきたんですかね(すっとぼけ)




