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燃え尽き王の再燃  作者: オリーゼ


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6/9

紋章つきのいい感じのやつ

 メルシア王立植物園の温室に三人は足を踏み入れた。

 ふんだんにガラスの使われた最新式の巨大な温室は植物の育成のためにリベルタ沿岸諸島の湿気と気温が再現されているらしく、とても蒸し暑かった。

「植物見て何がおもろいんだ? と思っていたが、これはなかなか……。見てみろ! この草、虫を食っとるぞ!」

 サミュエルがギザギザの葉で虫を挟んで捕食する植物を見つけて目を輝かせた。

 その様は城で珍しい生き物を見かけてはしゃぐ孫のアーネストによく似ている。

 ヴィルヘルムも閉じた葉の隙間を覗き込んだ。

「すごいもんだな……」

「ヴィルさん、サムさん! こっち! こっち見てください! こんなドデカ葉っぱ初めて見ましたし、なんか変な形の実がいっぱいなってますヨ! これって食べられるんですかね?」

 少し離れた場所から二人を呼んだオリヴェルの声も子供のように弾んでいた。

 植物園に興味がなさそうだったサミュエルとオリヴェルだったが、入場してみれば二人とも予想外に植物園を満喫している。

 二人の出身地であるベルニカはメルシア連合王国の北東部の寒冷地に位置する。森の木々も針葉樹がほとんどで、大きな草花も多くないから新鮮なのだろう。

「そっちはノイメルシュ宮の温室にもあるぞ。ここまで大きくは育ってないが、パーティーのデザートで出したこともあるラカダンだよ」

「むむむ……思い出せん」

「えっ⁉︎ あの地味な温室こんなのあるんですか⁇ 一度ぐらい入ってみりゃよかった。もいで食べたら美味しいですかネ?」

「ちょっと取ってこい。この植物園は王立、すなわち、ここにあるものすべからく婿殿の物だ。一本ぐらい拝借しても問題あるまい」

「っすね。んじゃ行ってき……」

「駄目だろ。せめて係員に……」

「そこの人! なに入ろうとしてるんですか!」

 研究員と思しき人物が柵を乗り越えようとしたオリヴェルを見咎めて走ってきた。

「あっ、やべ!」

「勝手に入らないで。下生えの植物も大切なサンプルなんです。踏み荒らされては困ります」

「そいつは悪かった。俺達はただ、そこになっている果物が食べたかったんだ」

「ますますダメです! ご退出ください」

「この人が誰かだけでも聞いてください。食べてもいいご身分の尊きお方ですヨ!」

 オリヴェルがまなじりを吊り上げた職員の前にヴィルヘルムを押し出した。

「誰です?」

 不信感も露わに三人を睨め付ける職員の対面にヴィルヘルムを置き、サミュエルとオリヴェルは流れるような動きでその左右に侍った。

「このお方をどなたと心得る! 恐れ多くも先の国王、ヴィルヘルム・ブリッツ・トレヴィラス陛下にあらせられる! 頭が高い! 控えおろう!」

 オリヴェルが高らかにヴィルヘルムの身分を明かした瞬間、そこに寒風が吹いた。

「あー、はいはい、おじさん達、冗談はいいから出てって」

「おじ⁇ えっ……俺も⁉︎ 言葉も雑に⁈」

「そりゃそうだろう……」

「いや、待ってくれ。本当なんだ。ヴィル、なんかないのか? ババーンって出せる紋章ついたやつ!」

「ここでさっと見せられるような物なんて持ってきてるわけないだろ」

「おぃいい! そこは薬入れ(印籠)とか持っとけよ!」

「馬鹿どもがすまなかった」

 サミュエルのツッコミを無視でいなしたヴィルヘルムは、自分も謝罪の姿勢をとりながら二人の首根っこを掴んで頭を下げさせた。

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