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燃え尽き王の再燃  作者: オリーゼ


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飢えの中で

本日4話更新(2/4話目)の上、完結させます。

 暖炉の薪が爆ぜている。

 明々とした炎を眺めながらサミュエルはヴィルヘルムからの酒盃を受けていた。

「旅に連れ出してくれて感謝する」

「改めて礼を言われる事じゃない。俺が行きたかったからお前を付き合わさせただけだ」

 メルシアの美酒を一献飲み干して、サミュエルはヴィルヘルムの様子を窺った。

 旅に出たのは正解だった。

 リアムの戴冠後の気の抜けようはひどい有様だったが、どうやら持ち直したようだ。

「この後も、俺とお前の二人で世直し旅に行くんだろ?」

「付き合ってくれるのか?」

「もちろんだ。俺達は親友だし、冒険も楽しかった。新たな美姫との出会いもあるだろう。付き合わない選択はないね。偶然とはいえディアーラの氷華も手元に戻ったしな。いい旅だった!」

 そう笑うとヴィルヘルムははにかんで、それを誤魔化すように酒をあおった。

「……俺はお前の事をかけがえのない友だと思っているが、正直そこまで付き合ってくれる理由が分からない」

「お前の人徳だよ。ソフィアと婿殿の役にも立ちたいし、深い理由なんてないさ」

 そう言ってヴィルヘルムの背中を叩くと納得することにしたらしい。

 深く追及してこないのがこの男のいいところだ。

 サミュエルは、ただその心の裡で彼の力になると決めた過去を振り返った。

 

 ディアーラの氷華。亡国となった国の宝。

 義弟から国が滅びた時には血脈を継ぐ王子に繋いで欲しいと託された想い。

 だが、誰も彼もが飢えていた。

 軍馬は倒れ、兵士は剣を持つ力を喪いつつあった。

 口に入れることができて、腹を壊さないのであればなんでも食糧となる状況だった。

 王としてなんでもない顔をしてそれを口にし、そこまでしても部下達が次々と心身を弱めているのを感じ取って、サミュエルは兵馬を生かすために迷わずディアーラの氷華を質に入れた。

 それでもその対価は戦い手を養うだけで精一杯で、民へと回らなかった。

 子供を産んだばかりで栄養が必要なのに、妻は不甲斐ない王の配偶者として食糧を率先して他者に回した。

 妻の痩せ細った姿を、そして火がついたように泣きながら出てもいない乳を食む娘の姿を見てサミュエルは目頭を揉んだ。

 まだ泣く余力のある強い子だ。

 だが早晩、この娘も死ぬのだろう、と、醒めた頭で早世した上の子供達を思い出す。

 一人目はノーザンバラの手の者に毒を盛られ、二人目は乳母と共に城壁から落ち、三人目は栄養が足りずかかった風邪をこじらせて亡くなった。

 妻は医者にこれ以上産むのは命に障りがある、まだ望むなら命をかけろと言われている。まして戦の最中だ。

 本人は医者が大袈裟なだけだ、まだ産める、奪われるなら作り続けるだけだと強く笑っていたが、誰もいない部屋で蹲り、声を殺して泣いていたのを知っている。

 ベルニカは後継に己の血を重視しない。その技を、力を継ぐことに重きを置いている。

 強くなりそうな子を猶子として城で育て、ベルニカ魂ともいえる尚武の気風と郷土への忠誠を叩き込む。

 また、平時でも自然の厳しい土地としてのならいとして、幼くして死んだ子は神の恵みが与えられて天の庭に戻っただけだと信じられている。

 だからサミュエルも早世した子はこの苦しみに満ちた現世から安らぎの地に住処を移しただけだし、実子でなくてもベルニカの子は皆、己の子だと考えている。

 だが、その実、胸は焼けた鉛を飲み込んだようにじくじくと痛んで、それが腹の中で冷えて重い。

お読みいただきありがとうございます。

コンテストの関係で本日完結とします。この話を含み、後3話よろしくお付き合いください。

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