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謎にせまる!

悪魔との契約と呪いの謎編スタートです!


ピクシーズムーンが終わるまで、体を重ねるわけにもいかず、一先ず、悪魔との契約を解く方法を探すことになった。

「まずはいつ契約が結ばれたかだな」

「確か250年くらい前までは我が家は商人だったとお祖母様から聞いています。」

ケムダー家の書庫で作戦会議。


ミリエールとパトリックの決意を聞いた時、両親は驚いたが反対はしなかった。

「私の時は自分のことでいっぱいいっぱいだったからね、あんたたちが臨むなら頑張りなさい」

母はそう言ってミリエールの頭を撫で、

「たとえ幸運を失うことになっても気にしないでくれ。

どうにかするのが家長の仕事だ」

と父は言った。

そして協力は惜しまないとのことで、堂々と書庫で会議をしているという訳だ。


「250年…」

パトリックが呟いた。本棚の資料をパラパラと巡っては戻す。

「伯爵になってからは100年程度です。確かひいお爺様か…そのお父様あたり…」

「領地も変わっているんだな…」

彼は地図を見つけたらしい。数が多い。

「はい、ケムダー家の領地経営は必ず上手くいきますから、上位貴族の方に領地の交換を持ちかけられるんです」

多少広い痩せた領地とケムダー家の守ってきた領地が交換される。すると、栄えていた旧領地は少しずつ普通の土地となり、ケムダーの手に渡った領地は天災も人災もなく繁栄する。

それをさせてしまう王も王だが、それによって広い領地を手に入れ、そうしているうちに爵位も上がり、今に至る。

「やはり手がかりはは250年前だろうな」

「はい、そうなんですが…」

代々の当主の日記を見る。数が多い。

「多分私たち以外にも、調べた人はいたんだと思うんですが…」

とミリエールはその中でもかなり古い手帳を机に置いた。

元々使い込まれていただろうその手帳は、長い年月でさらに傷んでいる。インクも褪せ文字は辛うじて見えるが、現代のものと違い読みにくい。

「これは?」

「現存している一族の最古の手帳です…シリウス・ケムダー…多分、合ってると思います」

パトリックは手帳を開いた。

ミリエールも覗き込む。

「………」

「…つ…け…た?」

読めない。読みにくいでは済まなかった。

まず文体が違う。

「すまない、俺は剣一筋だったから…兵法書なら読めるんだが…」

「私も、一部しか読めません」

さすがにこれは部屋に持ち帰り、辞書を片手にミリエールが翻訳に挑むことになった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


ミリエールは机に向かい、解読作業をしていた。

これだけ机に向かったのはいつ以来だろう。

辞書を片手に1ページずつ捲る。

ふと、それまでと、日記の空気が変わった。


ーーーーーーーーーーーーー

某月某日

(一部抜粋)

仕入れに行って道に迷ってしまった。

蒼い洞窟で休ませてもらうと、沐浴中の美しい娘に出会った。

娘は笑いながら道を教えてくれた。また会いたいものだ。

ーーーーーーーーーーーーー

某月某日

(一部抜粋)

あれからというもの娘の笑顔が頭から離れない。また会いたい、会って話をしたい。声を聞きたい…。

私は一体、どうしてしまったのか…。

ーーーーーーーーーーーーー

某月某日

(一部抜粋)

蒼き洞窟にまたきてしまった。

彼女はそこで歌を歌っていた。優しく美しい声だった。

また会いたいと伝えると、ここで待っていると言ってくれた。

ーーーーーーーーーーーーー

日記の内容はシリウスが洞窟で出会ったという娘に出会い、逢瀬を繰り返したという内容に変わった。

そして彼は想いを伝える。

ーーーーーーーーーーーーー

某月某日

(一部抜粋)

ついにフェリシアが頷いてくれた!

2人で幸せな家庭を作ろう。

ーーーーーーーーーーーーー


ミリエールはごつんと机に頭をぶつけた。

ーーーただの惚気か…

何か予感がしたのに、関係なさそうだ。

だが…

「あれ?結婚した後から商売が急に上手く言ってる?」

日記の最後にかいてある利益が急に跳ね上がっている。

「この頃に悪魔と契約したってこと?」

首を捻る。

嫁を幸せにしたくて悪魔の手を取った?

まさかね?行動が突飛すぎて何か違和感がある。


シリウスとフェリシアは、その後、女児をもうけるが、義両親と子供の件で揉めて彼女はでていってしまった。

シリウスは方々を探したが見つからなかったそうだ。


ーーーいやどうでもいいし


と


ふいに、ドアがノックされ、ミリエールは振り返った。

どうぞと言って扉をあけると、そこにいたのは任務帰りのパトリックだった。

「こんな時間にすまない」

彼は謝り、ミリエールの机の上をみた。

「もう始めてたのか」

「じっとしていられなくて」

ミリエール自身のことなのだ。

ーーーそりゃ、パトリックとしたいけど

それはそれ。呪いも関係なく、何の気兼ねなく結ばれることができるなら、それに越したことはない。

「でも、ただの日記でした」

ここまで翻訳した部分を見せると、パトリックは苦笑した。

「さすがにすぐには見つからないだろうな」

「明日はまた書庫を探してみます。契約なら何らかの形で残ってるはずですよね?」

「金庫とかは?」

「真っ先に父に調べてもらいました。なかったそうです」

「そうか…」

パトリックも悩み、無理はするなよ、と彼女の頭を撫でた。

「そいいえばリック、今日はどうしたの?」

ミリエールが尋ねると、パトリックの耳が赤くなった。

「…会いたくなっただけだ」

…今日は来なかっただろう?と言われて思い出した。いつもならエレオノーラと共にお菓子を作り、届けていたのだが、今日はどうしても手帳の翻訳がしたくてお休みした。

「訓練場ではマックスに揶揄われるし…」

言われて目に浮かぶのは、楽しそうなマクシミリアンの顔。

「今日は婚約者殿はどうしたんだい?」

絶対言った。

「あ、明日は必ず!」

ミリエールが力一杯いうと「書庫を探すんだろう?」と返された。確かについさっきミリエールが言ったことだ。

「だ、大丈夫です!両立させます!」

「無理はしてほしくない」

意気込むミリエールにパトリックは譲らない。

「リック、過保護になった…」

彼女がむぅと頬を膨らませると、パトリックはそうか?と気付かないフリをした。

そして、ミリエールの額にそっと唇を落とす。

「な…」

真っ赤になるミリエール。

「兄にも言われていてな…たまには恋人らしいこともしろと」

じゃないと逃げられるぞと言われたことは秘密にしておく。

もっとも、ミリエールが逃げることはないが。

「……ミリー」

低く、でもどこか甘さを含んだ超えてパトリックが呼んだ。

「ピクシーズムーンが過ぎたら…」

そこで止める。パトリックを見つめるミリエールの瞳が潤んでみえた。

「…お前の全てを貰ってもいいか?」

低く、甘く、優しく、しかしどこか不安そうな声。

最初は婚姻関係を結んでからと思っていた。

恋人になってからも、婚約してからも、我慢できるとおもっていた。

悪魔との契約のこと、呪いのこと、それらを背負うその姿を見て、愛おしさがあふれた。

「お前の背負っているものを、俺にも分けて欲しい」

パトリックのその声が震えていたことに、ミリエールは気がつかない。

それ以上に彼女の胸が震えていたからだ。

「はい…はい!」

涙ぐみそうになりながら、ミリエールは答えてパトリックに抱きついた。

彼はそれをそっと受け止める。

2人は笑顔で見つめ合い、ミリエールは瞳を閉じた。

長いまつ毛が揺れる。

パトリックはそっと顔を寄せ、呼吸さえ感じる距離で囁いた。

「……愛してる」

そしてそっと唇を重ねた。


ピクシーズムーンが終わるまで後1週間…

それは長いようで短い1週間になりそうだった。

やっとピクシームーンが終わります…


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