不確かなあやまち
彩町
「ふつつかものですが…」
白い女が言葉を捨て置く…
しろい世間話。
仏事など、男は無関係なのだろう…
面倒ごとは全部女性がするのだ…
少しフォーマルな服を着ている女はつまらないイズヤを思い出す。
ああ、ほんとにろくでもない人だ…
☩
イズヤは十字を切る、もちろんクリスチャンではない。
「あざ」… 十に対する形容なのか かぞえが 字となる。
漢数字の形のことではない…
なにが ジュウなのか…
にわとりがさきか、の話のようにどちらが、いやさ、どれが、もともとの入り口なのか
わからない
困れば気に入った言葉から始める
それがイズヤの用いる「しゅ」である。…
この場合、すでに彼にとって悪い意味は残らない。
依存している本人がそれを否定する術は、とくに ない。
キャンバスノートがお気に入りなら
キャンから はじまってみる。
キャンナコッタとは 言わないな
キャノンボールとか キャンノミノルタは言うな、とか…
なので
「学生は、一義が大事、ということか…」
あくまで斜に構えるイズヤ…。
捉え方が、ずれる。
しかしそれは彼が生きていた環境がある意味では過酷だったため、その
余韻らしい。
その文房具屋でイズヤは白い女に出くわす
「うわ びっくり」
「こっちのセリフです」
あからさまにいやそうな白い女。
「呼んでくれないから」「こっちのセリフです」「それしたら俺が金かかるじゃん」
「そうです。立場をわきまえてください。ご用命あらば…うけたまわりますよ…☆」
ゆっくり妖艶に微笑む白い女は影を宿す。
「…ネクタイ曲がってますよ」
それだけ言うと白い女は文房具屋からそそくさ 退場した。
「…してないけど」
イズヤは虚空にひとりごちる。ただ、
「あ、胸に入ってるわ」
胸にしまわれたネクタイを触るイズヤ。
相手に恥をかかせるよりは自分が嘘をついたと言われることも受け入れて嘘をつく。
たったひとつの所作というか…行動でも
ひととなりは 出てしまう。
「互いに不器用だね…」
虚空にそっと捨て置く言葉
添えた言葉は
「あ、俺客だっけ…うっかりうっかり…」
寂しい年上だった。
なんどくりかえしたか
デジャブがあり
しかし
昨日よりは進んでいる
昨日よりは淵に近づいている
死と言う透明な境界に…
十字架の灯などはない…
灯篭は十字架、ではない
ピンク色の十字架もあまり見たことがない 明るい十字架…
穴を穿つ、ベルの音
それは むしろ不吉…
しかして それを福音と成す…
ナス科のタバコを吸わないイズヤ…ご年齢がそこに達していない…
また 合う個体とは限らない
部室にたどり着いたイズヤ
「おそいじゃないか」
「すみません」
「いいよ。おぬしがこんでもずっと待っとる…」
「…ヘヴィですな…そりゃ」
「おう。年のこうだ。」
「コーダ…クミン?」
「まず、違う。」
イリヤはダジャレをいなして言う
「課題の小説は書いとるかい。送るんやで…賞にな」
「形にこだわりますねえ…」
イズヤは言う
「んだ。しかたねえ。何事も基本じゃて…」
「はあ。わかりました…」
部室を出たイズヤ
「ホソミは元気かな…」
ザードって 野球のサードから来てるのかな…
どうでもいいことを考え出す…
「んー、なんか順不同 あべこべだな…」
自動販売機でスポーツ飲料を買う
ボトルのふたを開ける
「ひねらざる得ない」
青年はひとり、やはり変なことをつぶやく そこらへんにある大切な そらのした。
綾街




