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白い宵闇の路地  作者: まこた


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68/72

炎より熱い地味な連中

静かにしてる喫煙者

イズヤはめずらしく ホソミとは別の「人々」といた。

赤い青年を見渡すように、そして彼と距離を取るように複数の人間がそこに存在したが

チーマーとか暴走族と言うには多分に変てこな人間ばかりがいる。

喋り方が変な人、趣味が変な人

結局のところ何かが変なのだ


全員が運動が苦手とか、全員がインテリとか そういうことではない

ただ ひとつだけ共通点があるとすれば…

どうにも「もてそうにない」連中だろうか


顔が悪いとか、服装がダサい、ということではない…

もてる気配がしない



この集団のリーダーである赤い青年だけはとてつもなくもてそうだが…

ほかの人間はみな 衛星のようだった。

「イズヤくん、ごめんね」

赤い青年がイズヤに声をかける。

彼は大学生でイズヤより年長者となる。白い女と同じ大学の奇妙な美大生。

しかし正直美大生と言うよりは…ホストか政治家に見える。


そう その見え方自体がイズヤのもつバイアスである。

彼にとっては

「政治は顔」なのである。

与党も野党も実はよくみれば 顔がいい政治家が多い。

褒め方が星の数ほど器用にあるだけで それでも 全員とは言わないまでも男前が多い…それがイズヤによる評価だった。


赤い青年は、弁舌さわやかで、非常に好青年然とした…ルックスの長身であり

政治家に足る存在…

その青年はただし 政治家ではなく…

ふうがわりな宗教集団のリーダーだった。教団ではなく、「似た考えで集まる」ていの

あやふやな群れ。

イズヤはブッディスト…はたからみればまったくの無宗教なのだが、結跏趺坐を組めるため、座禅会に行ったことがある。

そこで出会ったのが赤い青年だった。その赤い青年から紹介されたのが白い女…。

罪深い、最高に病みつきな愛すべき女…そいつに出逢ったのはなぜか

座禅会で出会った最高にイケメンな好青年のつてだった…



「イズヤくんはサグラダファミリアとモンサンミシェル、どっちが好きかい?」

少し気食悪い語尾で、赤井青年がきく。

「いや…どっちもかっこいいと思うけども…うーん。他の建物がいいかなあ…北インドのキリスト教会とか…」

「…そりゃあ 俺も知らないなあ…あるだろうけど…」

さわやかに静かに微笑む赤い青年。

ふたりともブッディストのていなのに話すことはキリスト教がらみ、あるいはインド系の宗教がらみが多い。どこか宗教を畏れているのがこの集団の共通項かもしれない。


宗教集団の分際で「宗教が 怖い」 … そういう若人の集まり


そう 宗教の書籍の内容、知識など話題に上がらない

せいぜい、どこの讃美歌がどうだったとか

ある境界の知覚のタバコ屋の建物のカラーリングはどうだった、とか…

よくよく考えれば珍妙な会話しかない…



イズヤは岡山市内の生まれであり今もそこに在住している

自分が士農工商で

どういうルーツかは規定してない

あえていえば 自身は普通科の進学校よりは実業高校の人間の部類にかろうじて入る、気がした。工業高校、農業高校ほどたくましくはない、商業高校寄りだが男性

そういう稀有と言うより多少気の毒なもっさりとしたもてなそうな 顔だけ少し良い青年…。

「タタヤンもボアもイズヤは聞かないっけ」

赤い青年が言う

「んん かっこいいのは僕はきかないな…。ポーターロビンソンはきくけど」

「はは そっちのほうがなんかオシャレっていうんじゃないか ふつう」

たしかにそれはそうかもしれない クラブとかでもポーターロビンソンは流れるだろう…

ただ イズヤ自体は「オシャレな音楽」にたいして軽いアレルギーがある…

いや 聞けないわけじゃない…

結果的には聞いてない、それは日本の今のメジャーシーンに対してもおなじ姿勢だった

そしてそこが赤い青年からイズヤが「ちょっと面白い変なやつ」と評価される所以(ゆえん)かもしれない……


「イズヤくんさあ…おれが 病気で急に倒れたら介抱してくれるかい」

変なことを聞いてくる赤い青年… 彼には名前が無い

そういうわけにもいかないから… ゼロとでも言いたいけど

いや 白い女もゼロと言う印象だった

ゼロのFが白い女とすれば

ゼロのMが赤い青年だろうか…


Fはフォワイトではない…

Mは赤ならばマゼンダ…

黒をあらわすMはないが MALEという男性という言葉からはなぜか黒色をイメージできる。

そう 日本人の体毛と瞳は黒い(あるいはそれに近い茶色なのか)


「FとM ふたりあわせて FMラジオ…」

「なんだ、それ」

笑うゼロのM 赤い 青年。


赤い青年は 顔が良い だから政治家だ。つまり 文系の世界の人間。

しかし 彼といるとき、 そこで思いつくのは芸術(おおげさにいうなら、である)の話

そして 科学である。


「あ、ごめん。わかったんだ。君は勉強が僕より出来て、そして顔がいい。ゆえにそこに音楽が好きという要素が追加されたら最高に罪深い野郎なんだと…」

照れ笑いをするイズヤ。


「君は髪に赤を入れてるから 赤いMALEだね…」

「…赤備えみたいに言うなよ」

発音がよくないイズヤが言えば聞こえ方、つまり聞き間違いのパターンは大体他の人と同じだった。

歴史に興味がないイズヤが話すと歴史の語句はすこし工業的、あるいは美術的な話になる。今もメイルが鎧で武具、という話になるし 武具の「思想的な男らしさ」に関心を示さないイズヤにおいてはそれは工業製品、ただの道具(ツール)として認識される。

ゆえに会話も「頓珍漢」とならざる得なかった。

そう イズヤは日本史の知識がきわめてお粗末だった

「北條に 藤原、聖徳たいしに 蘇我いもこ…」

「もうおかしいよ」

つっこむ赤い青年。苦笑いしていた。

「俺も得意ではないけど。それ蘇我馬子とかイルカだろう。妹子は別枠だろうに」

「…ほんとじゃな ひっぱられとるわ ごめん」

そういえば小野と名のつく工場や町工場がどこかにあったきがする

そんなのどこの土地にもあるか…また複数だろうし

手を拡げれば薬品メーカーだろうと画材に関係した文脈だろうとどこにだって小野は、いる。小野に限らない。織田信長の「織田」だっているだろう。ただ 織田という名字は岡山ではあまりいない 気はする。


「きみは普通科高校だったっけ」

青年にきくイズヤ

「ああ 近いとこにいったんだよ。うーん。公立だったか…それすら興味ないな」

「じゃあ 私立だろう。地方だと公立はブランドじゃけえ…」

「ああ、たしかにそれはわかるな」


イズヤと青年は同レベルの会話をした

青年は苦労人

イズヤは異常な個体

二人とも全く違うのに

同じ周波数で会話をしている

だから 赤い青年のようなカリスマがイズヤみたいな変てこな存在と会話をしてくれる。


そう…白い女はイズヤよりは赤い青年側

罪深い美人の部類なのだが…

こうかふこうか

イズヤと同じく 異常な個体

そう思える…


「この前きみにあわせた先輩 どうだった?」

赤い青年が言う

「ああ あの小柄な陽気な人か」

「うん わかるような気がする」

笑う赤い青年。

赤い青年に会わされたのは いわゆるヤンキーなのだが…

インテリで工業系で、そしてギタリストだった。

赤い青年も歌は歌うのだが…

楽器を弾いているとは聞かない。


小柄だから人の痛みがわかる、短絡的にそう思うけど

彼ならヤクザともわたりあえてしまう…そう思った


白い 赤い ときたから 色で表現するなら


「…ブルーグレー、そういいたいけど色黒のおっさんだったね」

「あ おっさんって言ったら殺されるよ たぶん」

苦笑いする赤い彼。

「ああ、そうだな。いや、うん礼儀にうるさそうな人だった」

苦笑するイズヤ。


「彼は Gくんかな」

「なんでだい」 尋ねる赤い彼

「いや なんとなく。そうこじつけるなら ギャングとか 小柄だけどなんかごつい、とかうんゴッサムシティは関係ないな」

「…グラビティとか言うのかと思った」

笑う彼。

「ああ 重力か 引力はなんていうのかなあ」

イズヤは缶コーヒーを手に握ったまま夕方の夜空を眺める。

「なんできづかなかったのだろう。Gは ギタリストだな」

イズヤは言う。


「ああ、それな」

赤い青年が 答えた 笑って。


挿絵(By みてみん)

踏んだり削ったり

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