雨粒が細かった
きれいな水滴
イズヤのクリアファイルの中に入っている、アルフォンスミュシャのポストカードを手に取ったホソミは 目のまわりをゆるめる。
「こんな 趣味よかったっけ きみ」
「意外と繊細なんです…実は。」
「へえ…人はみかけによらず」
「うん。傷つくわ」
「えへへ。ごめんね。」
「…いいよ。かわいいから、許すけど、じゃあ 代わりに一句詠んでよ…」
「でえれえ無茶ぶりやな…。そだね。
【オリジナルな生命なんて 無いよ ♡】 かな…」
静かな雨の湿った空気を灰に吸い込むイズヤ。
「ああ … それいいな…」
にっこりと笑う青年のほころぶ貌がこの世界に陽光の残光が
滞在することを想ひ出させているよう。
「君が好きだった、なんてね」
「…過去形なところが キラーワードな 駄洒落コンテンツなわけね…」
「んあ。今でも好きだよ」
「詩情だとしても、わたしは 駆け引きなんて 嫌いなの」
「ごめん。普通に 好き。」
ホソミの手をそっと握るイズヤは 幸せになれることの罪を
そっと受け入れる覚悟を静かに 呑み込んだ。
苦いコーヒーを飲んでみたホソミは嘆息する
「はあ…これが 大人の味ってやつね…」
「そんなこと言う奴はのまなくてよろしい」
イズヤが目を伏せ気味につっこむ。本当は彼の 骨が折れるほど抱きしめたいのを
無かったことに しながら…。
「ああ、また そんな生意気なことを…」
ホソミがすこしご機嫌ななめ
そうに言う…。
「あ、ごめんごめん。機嫌を直して…舞スウィートプリンセス…」
「なんか 鯖寿司でも食べそうなニュアンスで発音するよね…」
Δ 降りしきる細いこまやかな雨… 霧すさぶ静かすぎる水の香り。
「はは…君と世界なら ちょっとだけ君のほうが上、と言いたいけど
ちょっとだけ世界のほうが上かな…」
「ん…それなら いいかな」
首にチョーカーをしているホソミがイズヤを見つめる。
「わりと高い評価じゃん」
「ああ…馬鹿な俺たちにふさわしい」
ホソミは傘をおとして年上の少年を抱きしめた
「あたしまで ばかにしないで…」
fall out rain Δ




