KOE
重複した世界
「おれたちはしょせん、全員雑魚だし…」
イズヤは言う。
「はは。なんだよ、それ」ホソミが笑う。
「気になること、言うじゃん…」
「いやさ おれたち えもい音楽いっつも聴くじゃん… でも
どいつもこいつも 結局 地域が大事なだけなくだらないちっぽけな いのちだなってさ」
「ふふ…それならわかるよ…」
ホソミはただそっと静かに笑った。
「ああ、図書館が近くにあるから…一緒にいこっか」
「んん…? イズヤ君は僕が好きな本なんか読まんでしょ。インテリ風じゃん…きみ」
「やや言葉にとげがあるぞ。かわいい少年くん…」
すべての羅列がパターンとして
あるはずだろうな… ヘッドフォンの女性のイラストのポスターを見ながら
イズヤは口ずさむ。しかし頭の中だけで。
「おれはなんもしらんよ。音楽のコードも。バンドマンの名前も、どこの出身かもな…」
イズヤは髪の毛をかきあげながらホソミに言う。そんな図書館の机と、椅子。
「ぼくは自分が好きなバンドならわかるよ。教えないけどね…」
ホソミがにんまりと言う。うつむいて。
「美少年に秘密があるとかえろいな…」
「そういうこと云うから、イズヤは誰からも 信頼されないんだよ…」
約束の時間、それは ない。 めざめたときに起きて
珈琲を飲みたいときに呑む。
選ばれた孤独を、まるで自分が選んだものとして抱きかかえて、静かに生きていた。目を細めて。
イズヤは文系の本のあたりで 本を探してみる。 理系ではないがゆえに理系に憧れる自分はどんな本を読むのだろう、文系の棚から 選ぶなら。
白い女のことを思い出してしまう。なぜだろう。自分は死ぬほどホソミが好きで、
好きで、好きで、好きなのに…。あの女が気になってしまう。
暗い、玄い、エレベーターを真っ逆さまに宇宙のごみ廃棄場まで上昇するような
優しい吐き気がする、…あいつといると。
わかっている。 むしろ 同じ男の自分とホソミより
あの女とホソミのほうが 近い存在なのだと。
考え方や立場が違うだけ。安全圏でまどろむチキンの自分と、彼らは違う…
イズヤは思う。
「でも しかたない。 あらそいに興味がない…いつからか…」
「あ、ナルシストがいる!」 少年かのようなはしゃいだ声のホソミ。
「あ、不良少年がいる。スカートとかはきそうな…」
「それを よだれ垂らしてよろこぶ、男が言うかね…」
ホソミはイズヤの手をそっと取る。
「ねえ 好きだよ」
ホソミがのべた
「ああ、でも顕微鏡で見たらホソミのほうれい線が見えそうだ」
「…まあ 見えるけど…うーん。空気を読めないというのをはるかに超えたものを君に感じる。腐ってんじゃないの? なにかが。」
「ああ。そうかも」
イズヤはおもむろに本を棚から取り出す
「ああ、字が多くて うんざりだ…」
なにか 回避方法、というか解決策あるいは妥協案は無いかな…
「イノベーター、エレベーター、 ファシリテーター、コンダクター、ソリューション…」
イズヤが声を出す。
「…何、言ってるの?」 目をぱちぱちしてホソミが尋ねる
「ああ、のばしぼうがあるものを 意識しようかなって。口笛で吹いてもいいな。人がいたら、朗読は出来ないしな」
「あいかわらず 変なひと」
ホソミがほほをふくらませる。
「民俗学の本は僕すきだな…」 ホソミが言う
「あ、それは俺もだ」
イズヤが言う
「はは…ぼくはきみとはちがうよ。ただ言葉遣いが好きなだけ。幼いでしょ…」
「…え。すげーかわいいけど」
「また ばかにしてるのー それ…」
ホソミがエルボーをイズヤに与えた…。
カーブミラーの裏に落ちてる紙ヒコーキ




