浅い天空
雑な輝き
白い女と遊ぶイズヤ。一緒にいるほどに単純に傷つくだけなのに
なぜか つまらない密会を続ける。
「なんで あたしにつきまとうんですか」
顔に垂れる前髪を手でかき分けながら、視線を落としている白い女はイズヤに
尋ねた。
「前から言ってるけど ぼくはきみのことが好きで単純に、こう仲良くしたいんだ。それは体の関係、って言う意味でもある」
「…問題発言ですね。かわいい彼氏がいるんでしょうに」
「…うん。本当は多分ダメなのはわかってるのだけど。」
「ねえ あたしのこと … どのくらい 好きなの」
「え…キスしたり…うん 好きだよ」
「…物足りないよ。舌噛みながら手首切りながらキスしたい、とか
なにか 情熱は無いんですか。」
「…すごいこと言うな。そんな性癖ないよ…」
苦笑いするイズヤ。
「あたしだってないですよ。あたしはないけどあなたにあっても受け入れますよ、ってことです」
「…変わった心遣いなんだね」
「あのー、世界がしばらく続く限り、あたしとあなたはこの世界に放置されたけがれた魂なわけですし。もうちょっと オリジンなこと しません?」
動きを緩慢にして、白い女、ではない方向に目を泳がせて 彼女にペーシングして
つぶやいた。 「オリジン…か」
オリジナル、といえばすべてそうだが すべて二番煎じだとは思う。
音楽などは無数のパターンに分解し要素を合わせて正直いろんな音楽を作れるのだろう…
「はあ まあ 君はオリジナルっぽいな。 見た感じも 会話も」
「そうですよ。あたしは個性的ですから、いい意味でね。」
「その自信が僕にもあればね」
笑うイズヤ
「甘ったれてるんじゃないですよ、先輩。自信が欲しいんなら、あるふりでもしなさいよ」
「うん。君の言うとおりだ」
イズヤは諦めることのほうが 多い生活だった。
ホソミと言う彼氏こそいるが、それ以外は
平均的な同年代と比べて禁欲的と言えた。ただし、イズヤ本人はそれを禁欲とは思っていない。
「まあ、ごりっぱなことで…。あたしは 東方のトランスでも聞いて、わさび入りのクレープでも食べるとしましょう…」
「今?」
「別にいつでも。今でも可能ですよ。」
なにごともないように イズヤの眼をのぞき込み、冷静に笑った白い女は少し
くるっているかもしれないが、とてもまっとうにも見える。
「もっと 近くに来て 顔をもっとよく見せて…」
白い女の頬にそっと手を添えるイズヤ。
「ふふ…フェミニストなんやね…先輩は…」
リズムの続いた、セリフの先の科目を描いて、つないだ言葉…
「あ…キスしたければいいですよ。今がチャンスです」
イズヤは照れる。しかしあっさり女に口づける。
むしろしつこいくらいにむさぼった。
「ふふ…がっつくんですね」笑う 白い女
Δ
「おい なに ぼーっとしとる」
イリヤが新聞を丸めたものでイズヤの後頭部をはったたく。
「ん 手に入らないもんばっかりっすよね…」
「えらい自信がないな… そのうち死ぬんやから自信あるふりでもせえよ」
「いえいえ そのとおりだとおもいます」
「ふむ。素直で良いぞ」
イリヤは満面の笑みでにやつく
「ええ ぼくはほんとのところは単純なんです」
「そうかもな。でも素直になれないだろ、最終的に」
「うーん。どうでしょう。むらむらしてるのかな」
「仕方ないだろ。君は男性だし…」
「不自由なものですね」
「ああ…旅に出ようかな」
「ふふ…インドでも行くのかい」
「うーん。そうだな…どこでもいい 国内でも
この心の宵闇が少し 変化するのなら…」
「大丈夫さ、君は別に今のままで…だって あたしがいるから。」
イリヤは静かにイズヤの手に手を重ねる。
「なんですか。いきなり。」
「べつに あたしは 君に比べると随分素直なほうなんだよ」
眼鏡を軽やかに外し、イズヤの額に口づけをそっとするイリヤ。
「こんなこともあるさ。その程度に思ってくれ」
掠れた笑顔のイリヤは 乾いた世界を象徴している。やはりそれは 宵闇…その一部だった。
黑すぎた微笑の裏の苦笑★!




