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白い宵闇の路地  作者: まこた


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群衆の中の静けさ

ホラーが好きでない、苦労人

「被害者がコントロールしていたら、ふせげない」

「なんですか いったいそれは」

「一般論だ」

「相対性理論ですか」

「たぶんちがう」


二人は居間でテレビを見ている。イズヤはホソミにわりと密着して

ときどきこっそりとホソミを見つめた。・そのいやらしさをホソミは把握しているが

ほうっておいていた。


被害者の子供は〇歳で事故で亡くなったらしい。

加害者は19歳の男性で金髪で、狂暴そうな外見だった。

ホラー好きのホソミがしょうもないことをいう

「これ 実は加害者と被害者の子供の親がグルで 保険金目的とかあるかな」

「警察が調べたらばれそうだろ、それ。っていうか警察が疑ったら、だいたいばれるはず」




「そういえば このあいだ ストーカーの男性がモトカノを殺してましたよね」

「ああ、たしかに」

「あれは かわいそうですね 被害者が」

「…たしかに。あるいは 思ってるよりもね」 とイズヤは述べる

「思ってる より、とは」

「つまり加害者は愛してたから モトカノを殺したんじゃないってことだよ、推理小説的には、そういうシナリオもある」

「…となると お金目的、ですか」

「…かりに依頼殺人だったとして殺人の前科持ちにふさわしいギャラなんてあるかな…一億でもわりにあわない」

「じゃあ かりに加害者が意図的にモトカノを殺したとして、どういう動機になるの」

「つまり 彼女じゃなかったってこと   かな。 あくまで ひとつの 可能性だ」


「じゃ 二人の関係は」

「被害者の女性が邪魔だったんだよ… たとえば妊娠したとか。」

「それは加害者より前に付き合ってた人ですか」

「表に知らせてない、関係の、不明瞭な人間だろうと思う」

「…じゃあ そのひとがすごくえらくて 加害者に依頼して殺させたってことですか」


「それな、 なくはないけど… なんか不自然だな」

「もしかして 今かんがえながらしゃべってますか」

「うん。じつは。まとまってない、おちがつかないまま 離してるんだ」

「だめですねえ」

「うん」


イズヤはそうめんの麺つゆを冷蔵庫から出して、何かと混ぜて、少し飲んだ。

ホソミは見て見ぬふりをした。

「ふむ。じゃ 一個前にもどろう。被害者が コントロールしてたら

よけれない。子供の親が依頼していたら、ふせげない。リークしてるんだから。通信しあっていて、そこに犯罪の意図があるのだから。また利害があるのだろう」

「でも 加害者の若い人は関係ないっていったじゃん」

「うん、そこじゃないんだ」

「たとえば 亡くなった子供の母親がホストに通っていて首が回らなくて子供の保険金が欲しいなら、   ある時間、ある場所で 子供が事件にあってほしい」

「…ホラーとかサスペンス好きですけど、なんか いやですね」

「だろ… 安心しろ。俺はホラーもサスペンスも好みじゃない。でも君は喜ぶだろ」

「まあ」

「加害者は酒を飲んでいた。しかも 大量に。それは 一人で飲んだと思うかい」

「…まあ キャバクラとか、そうじゃなくても 言い方は悪いが派手な女性と飲んでたとか」

「まあ 机上では そうだよね おれもそう仮定した」

「なら キャバクラの女性は加害者がどのルートで帰宅するか知ってるってことだろう、しかも実は飲んで運転することも」

「キャバ嬢と内通してたら、コントロール可能だと…」

「もちろん こんなのは推理ゲームだ。現実はそんなことは起きてないからね。」

「まあ、そうっすね…」

ホソミはくちをすぼめて くびをかしげる。かわいいポーズらしい。


ホソミは麺つゆのことを思い出して むかむかしてきたので 冷凍庫からアイスを取り出して食べ始める。

「じゃあ  ストーカーに戻りましょうよ」

「うーん。あてずっぽう おもいつくかな」



「ひとは前科持ちになるのに 殺人をするか、ですね」

「そうだね… 出所後にお金をもらえるとしてもなあ やはり しないだろうと」


「戦争は国のために殺しをしますが」

「言い方が…怒られるぞ」

「はい」

「つまり 正義や秩序のためなら するってことかい」

「ええ、たぶん」

「ひとつは そうだな 女性が依頼した場合か 女性が死ぬと女性の親しい人に利益が生じるから女性が自己犠牲で元カレに依頼した」

「ああ ありそうですね それは」

「うん」

「…たとえば 優先順位ですよね… 人を殺したかったとか。つかまっても」

「…それなら 付き合う前から恋愛感情じゃなくて 意図的にこうさいをはじめた

という話とつながるな」

「でも その女性じゃないとだめだったんだから ロマンチックですよね…」


時間が止まった、気がした、イズヤ。

「ああ、不思議だ。君はすごく下品な話をしてるのに、なんか 好きになりそうだよ」

「先輩は悪趣味だから 男の趣味も悪いのね」と ふふっとわらう ホソミ。


「ずっと 殺したかったんだね。 つきあうまえから そんなことあるわけないし

最高に趣味悪いけど まあまあ美しいな。いやすぎるけども。」

「はい、そうですね」

とホソミが笑った。


テレビを消すと、虫の鳴き声が聞こえた。

「ちょっと外に出ようよ」 ホソミが妖艶にしかし無邪気にほほ笑む。

イズヤの腕を取る。

ホソミに連れられて家の外に出たイズヤは

夜空を見上げた

「ああ なにもない。星も無いな。」

「見つめてたら、みつかりますよ。ステアするとスターが」

「ダジャレかよ」

「あながち 嘘じゃないかもしれませんよ」

「目を凝らしても漆黒の空だが」

「夜空を見ているあなたの私の心に星が輝いてるの」

ホソミは泣き出しそうな眼をして、口角をあげて

イズヤにやさしくだきつく。そして 力なく イズヤのほほにキスをする

「…ありがとう」

イズヤは とりあえずホソミに唇を重ねる。

チャンスがあれば、のがさない。本当にしたいことは、ちゅうちょなくする性格だった。

「ん… あ… あの」

ホソミがなにかを言おうとしている。

「わかった。好きにして、いいんだね」

と さわやかにほほ笑むイズヤは やはり 心に星など映ってないけど

ホソミと言う月には十分支配されていた。

狂った星に支配されるのが彼のさだめのようだった。そしてそれは

彼にとっては不幸とは違うエフェクト のようだった。


Δ

「んにゃはあ ああ おもろかった」

「なにみてんすか」

「恋愛小説だお」

「それはそれは いい趣味ですね」

「馬鹿にしてんのか おい」

イリヤはイズヤに喧嘩腰に、つっかかる。

「はは そんなもの 見なくていいから僕とえっちいことをしたらいいじゃないですか」

軽口をたたく イズヤ。

「は…? あほか、きみは。 」

「あ 嘘です 引きましたか ごめんなさい」

「…そうじゃない。あたしが お前を自由にしていいなら、お前は後悔するぞってこと」

「…むちで叩かれるんですか」

「ちがうわ。死ぬほど、甘やかして、君を逃がさない」

「幸せ者じゃないですか、それ」

「…ためしてみるか?」

笑うイリヤ

「冗談はやめてください。」

イズヤは、結局は拒む

Δ

イズヤは白い女といる。白い女は薄着でタバコを吸っている。

「からだにわるいよ」

「いいんですよ。」

「ああ、そう」

「ああ、 イズヤ先輩は絵とかかきますか」

「は うん 書いてもいいな。かかないけども」

「書いてみて…」

白い女はたばこをふかしながら 瞳を伏せる。

「…おまえが言うなら書く」

イズヤは言う。

「それがいいです」

白い女は 真心が地上を真っ白にするほどの そんな笑顔で

音もなくイズヤを見つめた。

「好きだったですよ、あなたが」

白い女は言う

「過去形なんだね。それが聞けた段階では」

「…はい  それが うちらの関係じゃないですか」

本気で言っている彼女は本気で泣いて

本気で笑う

「うん。そうだな。そんな関係だな」

イズヤは とても優しく笑う。

ああ、 なんだか 言葉にならない。

消えたい、消したい、でも この手が どうしても離せない。

しょせん 女の白い女をなぜか 離せない


Δ

「いってらっしゃい」

「おまえも中学いけよ」

「うん」

イズヤを見送るホソミ。イズヤをつかんでキスをする

唇を重ね続ける二人。




挿絵(By みてみん)








夜空が好きなロマンチスト

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