一本外
白のスクエアに赤と青が離れて配置された
首の痛いイザヤ
「ああ、あんにゅいだ」
「なにがあったんですか」
「何もないんだ」
「…よきことでは」
「そんなことはない。いいこともまた なにもないのだ」
なにもない白い棟の校舎で 会話をする ホソミとイザヤ
「なんで だめですか」
「ぼくと君は出会ってしまった」
「よきことじゃないか」
「よかない。君は何でここにいるんだ。中学生なのに…」
「それは わたしが先輩と付き合ってるからです」
「それは間違いない。ぼくもホソミを恋人だと信じている」
「…なら 問題ないじゃん」
「んなわけあるか。卒業できんのかよ…」
呆れているイザヤ
「ははは。いいですよ。くびになったって」
イザヤはホソミのおでこに手を当てる。
「おまえ 変なこと言うなよ。熱でもあるのか」
「ないっす、でも 今はあつい」
「あっそ」
イザヤはホソミの唇に自分の唇をかさねた。
そう 愛しかない邪な皮膚。
「あたしは 幽霊なんです…」
「それは魅惑的だな」
目を細めて呆れるイザヤ。
「…比喩だけど真実ですよ」
「どういうこと」
「あたしを信じる人はいない。あたしは自信がない。」
「いやなことが過去に会ったとして、それが
まわりのせいだとして…いや そうだとしても」
「先輩、多分それは違うの…」「あたしは 誰も恨まない…」
「そうだろうな…」
「あたしはね 一人で死ぬのがいやだったの」「美しいものがわかる。なのに
それがわかる個体はあたしのほうを見なかった」
「じゃあ その代替がおれってことか。そうだとして光栄だ」
「代替なんて…卑下しないで…」
「いや 候補に挙がってるだけでおれは善戦してるんだな…」
ホソミは この白い棟のベランダで 青いスカイを背中にして
おれと 会っている。足と足の距離は一メートル以内。
「ねえ 先輩 ぼくのこと 愛してる?」
「馬鹿いうなよ」 イザヤは言う
「おれは愛とかわかんないから…」「でも」
イザヤは簡単にホソミを抱きしめる。
「お前が死ぬなら、おれも死ぬよ」といった
「……だめですよ。長生きしましょうよ。200歳くらいまで」
「…いいけど。維持費がすごいな。」
「ふふ…そうですよ。あたしは すごいいい男じゃから… 月100ぐらいかかりますう…」
「ばか 初めの出だしで破産だわ…」
Δ
ホソミは空を見る
なぜイザヤは嘘を言ったのか
ホソミが死ぬとして、イザヤが死んでは人工が余分に減るだけである。
しかも 頭がいいイザヤが死んで困る人も、ゼロではない。
なら ホソミの後を追わない。それに…
「死ぬのが一番怖いじゃん… 愛もすべて、なくなる。美しいものも
動物のあたたかさも 何一つ消えて 永遠に真っ黒…」
なぜイザヤは自分にうそをつくのか…
ホソミは趣味の嗜好品として所持している、宝石のようなナイフを手にとり
見つめる。
Δ
イリヤが文芸部の部室で パズルをしている。およそパソコンで文章など打たない、非常にまじめな文芸部。
「あーあ。空から アイス最中でも おちてこんかなー」
イリヤが 変なことを言う。
「いやですよ…衛生管理がやばすぎる…」
イザヤが言う。
「大切なものがあったらどうします」
「えー。てきとーだよ。でも大事にしたってなくすからな」
とイリヤが言う
「好きな男が実は中学生なんですが、高校受験のはずが そんなことも視野にないんです」
「とりあえず 全部アウトだからコメントしづらいが…」
「おまえよりしっかりしてんだろ パターン的に…」と笑うイリヤ
「そりゃあ もう
筋金入りですが … それとこれは別ですね」
イザヤは心に月を灯す
ベッドで隣で寝ているホソミを見る。
「ホソミ。おまえがいないと何も手につかない。だからお前が死ぬなら
おれも死んでもいい。意味はないな。まったく
理論的ではない。わかっている。
そう おれは 嘘をついている。
事実はストレートだ。おまえがおれに依存してるんじゃないんだ
おまえはおれにとって 酸素だから
お前が死んだら
おれは自動的に死ぬ。それだけだ。 つまり
おれが善人だからお前のために死ぬんじゃない
お前が消えたら
俺は生きる権利がない
つまり
まあ おまえの従者みたいな もんだな…」
寝ているホソミのとなりで消え入りそうな声でつぶやくイザヤ。
Δ
イザヤがいなくなった部屋で
青い目をして、青い部屋にいるホソミ。
イザヤがいない今のこの部屋はイザヤを失った部屋だ、一時的にせよ…。
そうだ スープでもつくってあげよう
彼が部屋に帰ってきて 石鹸で手を洗うから…
ぼくが 器用に お料理をして…
彼の頬に頬をこすりつけて…そう 愛してると 言葉にせずに伝えて…
細い涙がいつのまにかこぼれるホソミ
気づけばPM5時50分の月は光を ホソミが佇む部屋へ流し込んでいた…
公園で美しい男の手を優しく握る




