↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い宵闇の路地  作者: まこた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/23

水中花

炎よりきれいな学生

挿絵(By みてみん)


不遜症候群

ホソミにくだされた診断の名前…

たいそうな文字列に嘆息してみた


「しょーもな…」

最新の科学は自分をかろやかに切り裂いて分析してくれる

だけど…

このこころを 指す あらわす言葉がわからない…

それって 誰かがくれるのか


あの人のことを思い出してみる

自分より勉強ができて 静かで優しい

そこがかっこいい一応男性のあのひと…


「だいすきだ」それを言うのは 彼?

いや 自分か……


中空を 細い眼で見つめたホソミ…。

天に十字は無い。

地面に着地している足裏にそれはある。

ああ、 痛いな…


中学生の自分はそれでも もうそこらへんの女性よりも筋肉がある

あるいは その準備が整いつつある


いずれ背も伸びて…

そうしたら イズヤ君は 僕を抱きしめてくれる…?

知らない解答を静かに つめたい 少しひんやりした夜に求めてみた。


■経常的に続くもの それはない

プロンプトに支配された脳髄

あなたの手には何が残ったの…■


「はー… 」 イズヤはため息をつく。 机の上の置時計を手に掴んで

うつろな目で 椅子の背もたれに体重をまかせていた。

どうすれば    ホソミと手をつなげるだろう…

だれかが聞いたらなんと幼稚なことで悩んでいるのだと言われるのはわかっている。


テレビをつけると 美しいドラマが放送されている。

若くてきれいな男女が恋愛をするのが大筋である。

自分はどのくらいのルックスに位置するだろうか。

特に小顔でもない。特に背が低くもない。特に筋肉も無い。

俺は ホソミに 美しいと思われる個体 存在であるか

その資格が はたしてあるのか…


勉強はあまり得意ではない。しかし妙なこだわりがあるため

自分では自分のことを知的だと評価していた…。

それが浅はかだとは頭では理解しているが

自分しか自分を慰めるものがない状況において

そのあたりは 許してもらいたいところだった。


「ゲームセンターにでもいこうかな…」

イズヤは 呆れた声で 言葉をアウトプットする。

なにをやってもうまくいかない…

でも 自分は恵まれている。

なぜなら


自分と言うつまらない人間は本当に ホソミと言う年下の男の子を

抱きしめる衝動をもちあわせているからである。

なんと不埒なことだろう…

それを肯定している自分を誇りに思う。

歪んだ愛 おおいに結構だった…。


近所のゲームセンターで なんとなく太鼓の達人をしていると

背の高い女性がイズヤに声をかけてきた

「うわー キミ かっちょいいね いや どうでもいいか」

イズヤは面食らう

「えっと だれですか あんた…」

「うむ あたしは キミの学校の先輩と言うお方である…」

そんなの知らない…

何年生か知らないが…先輩の顔と名前などほとんどストックが無い…

イリヤという女性は先輩らしい。なんとなく自分と名前を形成する文字列の母音とか子音が似ていてちょっとばつが悪い。


「そのイリヤさんが なにか入用ですか」

「うむ キミはラッパーか」

「ちがいます」


あほなやりとりをするイズヤとイリヤ…。


「ちょっと 部員が足りなくてな。ゆえに部費が足りない

ゆえにだ キミ 幽霊な君でいいから ちょうどいいので…

幽霊な部員にならないか。」

イリヤは適当な表情で辛らつな文字列を放つ。

「そもそも 先輩は何部なんですか」

「何を隠そうあたしは弱小文芸部の主将だ」

主将…

それは柔道部とかでは……

「はあ、つぶれるんですか…」

「うむ はやとちりも びっくり 電光石火の先読み そしてそれは誤解だ

誤解でしかない。」


「はあ いいですよ…」

「ほう この数分でわたしの美貌にメロメロかい…」

「んなわけあるか」

丁寧なイズヤは 皮肉を込めて うそぶく。

「ラブレターを書くには…ちょうどいいでしょ。文芸部ってのは…」

にやりとしたイリヤ。

「ほう…恋をしているのか 少年」

「そうっすよ… 手の届かないやつに … … どうでもいいですか」

「ん。どうでもいいな」

満面の笑みのイリヤ。


「あしたは月曜日。ちょうど文芸日和だ。レッドブルでも片手においで…」

不気味な美少女はやる気のない足取りでイズヤの目前から鮮やかにフェードアウトしていく。途中でつまずいたので そのへんがとても変だった…。



ゲームセンターからの帰り道で

雲を眺めるために上空に視線を向けたイズヤ。

「あんなに雲は美しくてかわいらしいのに…

雷も あそこから落ちるんだな」


美女から怒号がとびかうなど日常茶飯事だと

イズヤは思う。女性に対する幻想が比較的少ない。

それは女性が強い土地柄もあったかもしれない…。

その反動がひどい暴力性になる…

若者たちを見ていて あるいは 地元の悪い不良たちのうわさを聞いて

そんなことを思った。

イズヤにとって不良とは 面倒くさく 道も踏み外した

どうしようもない「怖い存在」だった…。


ピアニストが弾いて作ったわりと有名なメロウなうたを

くちずさみながら イズヤは 灰色の十字架を静かに空に明け渡す。

聖書など要らない。

この色が 永遠に こころに働き続けるように…。

そうしたらまた ホソミに会える。千年以内には思いを彼のメールボックスに送信できる… そんな気がしていた……。


挿絵(By みてみん)

文字列に思いを込めた文学

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。