↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/18

第四話 王宮の困りごと

 セオが去ってから、ひと月ほどが経った。


「隊長、モコが、いなくなったって……!」


 国境を越えてやってきた麻衣が、青い顔で駆け込んできたのは、そんな折だった。


「いなくなった? 迷子ってことか?」


「いえ、それが……。セオさんが発った日から、姿が見えないんです。まさか、とは思うんですけど」


 嫌な予感が、俺の中で像を結んでいく。あの日の、慌ただしい見送り。荷馬車。人懐っこいモコの好奇心。


「もしかして、あの荷馬車に乗っていったんじゃ……」


「そんな、まさか……!」


 麻衣の顔が、さらに青ざめた。


 同じ頃、スピンドル王国からも、奇妙な噂が漏れ聞こえてきていた。


「隊長、スピンドルの王宮で、幼い王様が、変わった生き物を可愛がってるって噂です」


 カイルが仕入れてきた話に、俺と麻衣は思わず顔を見合わせた。


「その生き物、まさか」


「大きくて、もふもふしていて、懐きやすい……らしいです」


 嫌な予感が、確信に変わった。


「討伐ギルド長バロウズ様も、幼君のたっての願いとあって、まだ本格的な調査には乗り出していないとか。ただ、噂では、バロウズ様は魔物にあまり良い印象をお持ちでないとも聞きます。もし、あの生き物の正体が魔物だと分かれば……」


 その先を、カイルは言い淀んだ。俺の中で、嫌な想像が膨らんでいく。良い印象を持っていない相手に、モコの正体が知られたら――穏便には済まないかもしれない。


「バロウズって人、若い頃に仲間を魔物に殺されてる、とか聞いたことがあります」


 カイルが付け加えた噂に、俺は少し合点がいった。過去の経験があるからこそ、魔物を怖がる幼君の言葉に、疑うことなく寄り添ってしまう。それは、悪意というより、痛みに寄り添いすぎた結果なのかもしれなかった。


「そういえば、バロウズ様には、亡くなった戦友の忘れ形見を引き取って育てている、という話も聞きました。以前から、魔物とも分かり合えると、バロウズ様に訴え続けているそうです」


「あ……もしかして、それ」


 麻衣が、はっとしたように顔を上げた。


「その人、わたしも知ってるかもしれません。ほら、前に手紙でお伝えした、スピンドル国境まで調べに行ったときです。そこで仲良くなった青年が、確か似たような身の上を話していました」


「知り合いだったのか……」


「はい。魔物のことも、真剣に考えてくれる、優しい人です」


 その一言に、俺の中で、小さな期待が芽生えた。


「とにかく、モコを迎えに行かないと……!」


 麻衣が、いても立ってもいられない様子で言った。


「よし、俺たちも同行する。セオにも、事情を聞かなきゃならないしな」


 出発前に、セオ宛てに一報だけ入れておくことにした。行商人見習いの彼なら、王都の様子にも詳しいかもしれない――そんな軽い気持ちからだった。


 こうして俺たちは、隣国スピンドル王国へと向かうことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。