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「それで海君、母上から何を許可されたのかな?」
口調も声色も表情に至るまでも何もかも普段の晴龍なのだろう。だが、かなりキレているのだと俺には分かった。
「そお、カッカするなよ」ケラケラと笑いながら俺は「今日はこれで終わりなんだわ」その声に「「「え!」」」」と周りからの驚いた声が聞こえたが俺に顔面を殴られた晴龍は俺を無言のまま睨みつけてくる。
「今日、俺が許してもらったのは一発だけ殴ることだ。それ以外は許してもらってねぇ〜よ」あっけらかんと言い放った言葉に刻星以外の者達の顔が段々と怒りを露わにしだした。
「用事は終わったから帰るとでも言うつもりだったりするのかい?」
「言うつもりも何も実際そうだからな〜」
「帰らすとも?」
周りの者達というか生徒達の気配に殺気が混じりだしたその時、「ハァァァーー」とトコトン疲れたため息が晴龍の口から出た。
「皆、落ちついて」その言葉で一時的に生徒達から殺気が薄れていく。
「とやかく言う気はないが付き合い続けるならお前の本性は知らせておけよ」
その言葉は想定していたのか「参考にする」とだけ返してきた。
「だけど海君、殴られ損というのは立場的に悪いし気持ちが良いものでもない」
その言葉を他人から言われたら知るかと一蹴するところだが、晴龍だからこそ次の言葉を待った。
「という事で勝負をしようか」その言葉が当たり前だと生徒達が頷く中「コイントスで」勝負内容が告げられた。
「んなら投げるのは公平に鈴鬼さんで」「私!?」俺は投げる者を「受け取るのは刻星さんかな」「僕!?」晴龍は受け取る者を指名した。
「ここは一番重い500円硬貨にしようか」異空間から取り出した硬貨を一度晴龍に投げ渡した。
晴龍は鈴鬼さんを呼びある程度の高さまで投げるように伝え硬貨を渡した。
俺も刻星を呼んで投げられた硬貨をキャッチして掌が上に来るように握ったまま突き出してくれと伝えた。
「僕が勝てば本気で一発殴るからね」晴龍は勝利した際の報酬を提示した。
「俺は〜、俺の屋敷の後ろにデカい空き地があるだろ。そこをお前が買う、更にトイレ・風呂・広い工房そして地下には格納庫も完備した建物を建てるように手配しろ。勿論耐震性なども最高品質な建物だ。費用はお前持ちで所有権は俺な」
俺の報酬を聞き、俺と晴龍以外の皆は驚愕していた。
確かに俺の報酬は無理難題で無茶苦茶だった。一般的な相手とコイントスをするならの話になるが…
「ちょ、ちょっと待ってください!」
大きな声で割って入ったのは鈴鬼さんだった。
「勝利した時の見返りが釣り合っていません!晴龍君は一発だけ殴るに対して貴方の要求は大き過ぎます!!!」
「確かに琥珀の言う通り」 「鈴鬼さんの言うとおりですね」
俺と晴龍の意見が一致した。だからこそ結論も一致していた。
「鈴鬼さんの言われている事は正しいですし、間違っているのは俺の方です」その言葉を聞きて更に食い下がろうとした彼女よりも先に口を開いた。
「一般的な方々とした場合によりますが」 「ど、どお言うことですか…」
曲りなりにも【龍帝】の彼女なのだ分かりだしているのだろう。または分かっていながらか…
「晴龍はただ殴ると言ったんじゃないですよ。本気で一発殴ると言ったんですよ。【龍帝】の本気、つまり殺すと言われているのと同義です。」
そこで言葉を切り、補足を付け足した。
「晴龍の報酬が小さく・俺の報酬が大きいのではないんです。
晴龍の報酬が大きく・俺の報酬が小さいんです。」
その言葉があまりにも衝撃だったのか口を開いたり閉じたりとして数瞬した後「⋯わ、かりました」と、気持ち的に分かっていなのが丸わかりの声で俯きながら言った。
4者共に配置に着いた。
「では投げます」短な言葉の後に硬貨は投げられて夏晴れの空に上がっていった。
回りながら落ちてくる硬貨を刻星は難無くキャッチし握られたまま掌を上に向け突き出した。
「どっち?」
「先に選べよ」俺は晴龍を促した。
「じゃあ、表にするよ」間髪入れづに「裏」と宣言した。
「開くよ」握られていた掌は解かれ硬貨が現れた。
「「「「!」」」」
掌の硬貨は『裏向き』だった。
「俺の勝ちだぁ〜」 「はぁ〜」
2者の纏う雰囲気は正反対と言っても良い程だった。
「よろしくな 親友 !」「分かったよ」
俺と晴龍はもお普段のような振る舞いに戻っていた。
「ご、ごめんなさい…晴龍君」
今にも泣き出してしまいそうな鈴鬼さんに晴龍は、頭にポンっと掌を乗せて優しく撫でていった。
「謝らなくっても良いんだよ琥珀。かなりの出費となるだろうけど僕の貯蓄を甘く見ないでよ」なんてことないと言いながら撫でる掌は優しさの塊だったろう。
「それに今日と同じ事は昔っから彼としているからさ、気に留めなくていいよ。勝った彼が悪いから」「うん!」
あんまりな言い草で目の前でイチャつかれて胸焼けしそうなので帰ることにした俺はなんだか羨ましそうな目で見ている刻星に話しかけた。
「俺は帰るな⋯」何か言いたかったが恥ずかしくって言えなかった。だから背を向けて歩き出したが十数歩で唐突に止まり「帰ってきたら飯、一緒に食べようか」それだけ言い残し歩き出した。
恥ずかしくって返答も聞けなかったのは我ながら情けない。
しかし此処にいたのは4名だけではなかった。生徒や教員または講師達だ。
その皆が思ったのは[他所でやれ!!!]だったのは言うまでもない。




