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龍宮院道場の一番奥の客間に通される客は殆どいない。
一番奥の客間、通称"龍之都”と名付けられた客間には龍宮院道場としてというよりも龍宮院家の者にとって大切な客を迎え入れる為の客間に他ならない。
”龍之都”には各業界の重鎮や国内外の政府のトップでさえ龍宮院家の者にとって大切な客と思われていなかったら通される事は一生ない。
「さぁ〜、海君ソファーに座って頂戴。
色々とお話聞きたいはー、特に刻星さんとはどんな関係なのかを根掘り葉掘り聞きた言わねー」
俺はソファーに座りながら苦笑いしか浮かばなかった。
「お母様がその様な事を言って僕から聞き出そうとするのは立場的に大丈夫なんですか?」
言外に言いたくないという気持ちを乗せて聞いた所「こんなに面白そうな話題を聞けないなんてそっちが問題だわ」と返されてしまった。
そんなやり取りを行っていると琥珀さんが扉をノックして入ってきた。
先に俺の前へ焼き菓子とクッキーが盛り付けられたお皿が置かれ、アイス珈琲が淹れられたグラスが置かれた。
ミルクと砂糖は使わないと伝えると琥珀さんは静かにお辞儀してから珠夜さんの元にも同様に置き最後に扉の前でお辞儀して去っていった。
「鈴鬼 琥珀ちゃんというの彼女」
扉の方へ視線を向けたまま言葉は続けた。
「琥珀ちゃんは晴龍の彼女なの」
力に開花したからわかるが晴龍の魔力が微かに感じ取れるからか、彼女と言われても驚きはなかった。
「あら、驚かないのね。知っていたのかしらん?」
「晴龍から彼女が出来たのは聞いていましたが鈴鬼さんだとは聞いていませんでしたよ」
肩をすくめて答えたところ「そお」とだけ言い珈琲を口にする珠夜さんのその声はどこか鋭さがあった。
「それでその力と刻星さんとはどんな関係かしらん?」
昔から接してくれている様な口調で質問されたがやはりその声自体に隠す気がない鋭さが含まれていた。
俺は珠夜さんに刻星が特別変異体のゴブリンだった事、刻星との出会いの話し。刻星と名付けた時に起こった出来事を伝えた。
俺が話している時に珠夜さんは静かに相槌を打ち静かに聞いてくれた。
勿論俺達のスキルや称号については話す気がないため話さずに今までの事を話すにとどめた。
「そうだったのね。海君と刻星さんの出会いやこれまでの事は分かったわ。」
一度言葉を切り今一度座り直した珠夜さんは俺に向き直った。
「海君、貴方が隠し事をしているのは今の話から分かるわ。でもね何を隠しているかまでは分からないの。
けれども貴方の親友の母親として、龍宮院家の当主の妻として助言よ。
あなた達の力は今は何も言われないけども、これから先はそうはいかなくなるわよ。気をつけなさい」
その言葉には確かな圧と思いやりが混ざっていた。
「ありがとうございます、お母様」俺は頭を下げた。
頭を上げると微笑む珠夜さんが居た。
その微笑みを見て俺自身の母であるあの人が俺に笑いかけてくれたのは何時だったかと少し寂しくなっていたりした。
2人して焼き菓子とクッキーを食べてから昨日の晴龍とのやり取りと、刻星が泣かされた事を話しだした。




