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「坊っちゃん?」そお声を掛けてきたのは俺の実家が経営していた旅館 旅ノ倉 の仲居頭をされていた鈴さんという女性だった。
「こちらで働かれていたん、ですね…」
旅ノ倉で働いていた人達にはある程度の退職金と専属だった弁護士の方にお願いして再就職先を斡旋してもらっていた。
俺は斡旋先に関して何も知ろうとしなかったので此処で鈴さんと会えるとは思っていなかった。
「!」鈴さんは慌てて後ろを向き調理場の奥に消えていってしまった。
「……」固まってしまった。
従業員の方たちにはあまり良いように思いはされていないだろうと思っていた。
家族が死んだとはいえ急に職を奪ったと言われても仕方ないからだ。
俺が珠夜さんに違う方に渡すことを提案しようとした時に調理場の奥から鈴さんが戻ってきた。
その後ろに初老の男性を連れていた。その男性にも見覚えがあった。
鈴さんの旦那さんで番頭だった九太さんだった。
「坊」九太さんが殆ど聞こえないだろ声で俺の名前を口にした途端…ダン!
鈴さんと九太は俺にぶつかるように向かって来て、抱きしめられた。
「坊っちゃん!」「坊!」
「「会えて良かった!」」
強く強く抱きしめながら2人は目に涙を溜めていた。
それを見て強く抱きしめらたことでこの2人が俺にどれだけ会いたかったか、でも俺を思い会いにこなかった事が何故か伝わって来るようだった。
「ちょ、ちょっとお2人共分かりましたから!」
それでもなかなか離れてくれなかったが、それからしばらくして渋々と離れてくれた鈴さんと九太さんの目元は少しだけ赤くなっているのを見つけてしまった。俺は見なかった事にしようと振る舞ったが2人は隠しもせずにぎこちなかったが笑ってくれた。
「こんなに痩せられて、しっかりとご飯は食べているのですか坊っちゃん?」
鈴さんにから心配の言葉を掛けられて少し苦笑いをしてしまったが「食べてますよ。鈴さん 九太さん、俺も会えて嬉しいです」
積もる話もあるが今回は珠夜に会いに来たのだと伝えるとなんだか不機嫌になってしまったが焼き菓子やクッキーを持ってきたので食べて欲しいと伝えると頬を緩ませていた。
「鈴さん 九太さん話したいと思いますが今日は私が話させてもらってもいいかしらん?」と質問したが拒否できない事は分かっていながら聞いている所晴龍と親子だと分かってしまう。
「海くん?」俺の方へ音もなく首を向けてきた。その動作はさながらホラー「僕は何も思っていませんし、考えていません!」想像にふけるのをやめて即答で答えた。
ニコリと微笑みなが「ダメよ」とだけ言ってまた2人に向き直った。
「鈴さん、海君が持ってきたくれた焼き菓子とクッキーを食べながら海とお話したいから用意してくれるかしらん?」
言われた鈴さんは「かしこまりました奥様」とお辞儀した。
俺は無言で異空間とのゲートを開けて中からクーラーボックスを30個程取り出した。
その時珠夜さんの目が一瞬鋭くなったが皆には気付かれないまま、元に戻った。
「琥珀ちゃん用意してもらった物を一番奥の客間に持ってきてくれるかしらん?勿論分からなかったら鈴さんに聞いてちょうだい」
「はい、分かりました!」
要件を伝えた珠夜さんは俺に付いてくるように言い歩き出した。
俺も3人に一度、別れを告げて後を追った。




