㊺
玄関の敷居を跨いだ時に珠夜さんに声を掛けた。
「お母様すみません。焼き菓子やクッキーなど作って持ってきたのですが食べてくれませんか?」
手土産に作って来た焼き菓子とクッキーを空間魔法で創った異空間にクーラーボックスに収納して入れている事を伝えると珠夜さんは振り返った。
「あら、食べたいわ!でも海君、魔法を使うの不得意じゃなかったかしらん?」
確かに魔法を扱うという前提よりも魔力操作すら上手く出来なかった事は事実なので驚き、不思議がられるのは当然である。
「その事についてもお話したいのですが、結論から言うと【スキル】を獲得しましたので鍛錬に勤しんでいます!」
キリッとした顔で答えると珠夜さんではなく琥珀色の髪の毛の少女が吹いた。
「し、失礼しました!」慌てて謝罪したが、珠夜さん⋯も少し吹いた。
「お二人共酷いですよ〜」と俺の抗議を珠夜は「ごめんなさいね〜」と謝罪されていると言うよりからかわれている様な謝罪だった。
「琥珀ちゃん彼はお客様よ笑ったら駄目よ」と自分は良いかのように注意する。
「も、申し訳有りません!」俺に頭をもう一度下げる琥珀さん。
「構いませんよ、それとお母様も笑ったのに一人だけ悪くないと言うかの様に振る舞わないでください」
クスクスと笑いながら前を歩いていく珠夜さん。
俺と琥珀さんは珠夜さんに付いていき道場の大調理場に足を踏み入れた。
日本屈指の大道場の龍宮院道場その本家本元の大調理場は清潔・広い・明るい・何よりも大勢の人がいる。
「奥様!どうされたのですか!?」入ってすぐに声を掛けられたので珠夜さんが「侍女頭を呼んで来てもらえる」と言葉短く告げた。
「お母様、その侍女頭さんにお渡しすればよろしいですか?」何となく聞いてみると「海君は会うのは久し振りかしらね。思い出してしまうかもだけど会ってあげて」とだけ言い黙ってしまった。
「奥様お連れしました。」そうしていると先程の方と後ろに女性が立っていた。
「ありがとう、作業に戻ってもらってかまわないわ」その声が俺は聞こえていたが連れられた侍女頭の女性から目を離せずにいた。
侍女頭の女性も俺と同様に俺から目を離せづにいた。
「鈴、さん?」俺の口から出た名前は昔、実家の旅館 旅ノ倉にて仲居頭をされていた女性の名前だった。
侍女頭の女性は口を少し開いて掠れた声で「坊っちゃん?」とだけ口付さんだ。




