㊶
再び2人があったのはあれから1週間後の事だった。
今回も宴会場の確認の為、大人たちはまたいなくなり海と晴龍の2人だけが部屋で喧嘩せずに待っているようにと残された。
部屋に残された海と晴龍は1週間前の事が尾を引きなかなか話し出そうとしなかった。
仲居さんや他の者達の声や足音は聞こえるがこの部屋だけが静まりかえり双方とも此処だけが違う場所になったように感じられた。
勿論そんな事はないと分かって良いながらどうしても思わずにはいられない海と晴龍。静まり返った空間に小さな腹の虫が鳴り響いた。
腹の虫はどちらだったろうか、不意に鳴り響いた腹の虫に⋯
「「プッ」」「あははははは」「フフフフフフフ」
2人共吹き出し笑っていた。
「お前、意外と面白ぇ〜な」
「以外は余計だよ。それにお前はやめてくれないかい。君だけは特別に晴龍って呼び捨てにして良いから」
偉そうな事を平然と言ってのけた晴龍に海は同じ様に偉そうに言い返した。
「なら晴龍も俺の事は海と呼び捨てにしろよ」
海の言葉に晴龍は「呼び捨ては僕のイメージに合わないから【君】呼びにするさ」と言い放った。
晴龍の回答に海は「わかった。でもいつか呼び捨てにさせてやる!」と満開の子供の笑顔で拳を晴龍に突き出した。
晴龍も拳を海に突き出し「うん!」と満開の子供の笑顔が初めて愛想笑いしかしていなかった顔に咲き誇った。
その後も海と晴龍の交友は続いた。
それも家族内では海を腫れ物を扱うかの様に接してきた家族が死んでしまい 旅ノ倉 が廃業した時も、段々と病み狂っていった時も頻繁に交流していたのは晴龍だった。
そんな中、晴龍が東京に行くと話した日の事である。
その日は海の自宅に晴龍が遊びに来てリビングで東京に行くことを聞いていた。
「晴龍、お前は東京に行くんだな」
「行くよ」
その日は上手く話が続かなかった。
10分して不意に海が小学生の時した呼び方についたの話をしだした。
「なぁー、昔俺とあったばかりの時にお前は俺を呼び捨てにしないって言って俺がいつか呼び捨てにさせるって言ったの覚えてるか?」
「⋯」
なんで今その話をされたか分からなかったが晴龍は覚えていると返答した。
その後、晴龍も予想だにしていなかった言葉が全身を震わす。
「…いつか、全力のお前を打ち負かせてお前の隣に立った時は俺を【海と呼び捨てにしろ】」
言われた言葉は現実味がなかった。海は武芸に携わった事もなければ膨大な魔力があるのにも魔法を上手く扱えない、極めつけはその体だ。肥満体型なその体でどうしたら【龍帝】と言われる自分の隣に立つと自分を打ち負かせると言えるだろうか。
だが晴龍はやりたい事はやり、やると言った事はとことんやり通すそれが【本倉 海】という人間だと知っていたからこそ拳を突き出し「待ってる!」と言った。
海も拳を突き出し「待ってろ!」と返した。
この時海は久しぶりに心の底から笑っていた。その笑顔は小学生の時とはまったく別の笑顔で笑い合う親友2人のモノだった。




