㉗
突然刻星がこの場に現れ、俺の名前を呼んだ事で周りは騒がしかったのが風と木々の葉が擦れる音しか聞こえない程に突如として静まり返った。
そして突如として「鬼貴子様がもっちゃんの名前を!」 「それよりも僕たちの家って言わなかったか?!」「僕たちのって何だ?」
そしてまた静まりかえったかと思ったら男性も女性も生徒も教師も俺を睨みつけてきた。
俺の横に居た風木先生も眠たげな目を見開き先生の口が開いた。
「本倉詳しく事情を吐け!そして俺達に呪われろ!この羨まスケベ野郎!」
完全に私情としか思えない事を言ってのけた先生に「それでも教師か!」と言い返すと「お前よりまだマシだー!」と理由のわからない事を抜かしてきた。
「風木先生、頭が痛くなってきたので帰りますね。
それに迎えも来たのでこれで失礼します。また明日さようなら」
それだけ言い残し刻星の手を掴み町の方向へ歩き出した。
後ろから何か声がというより怒声と呪詛めいた声が聞こえるが迷わず進んみ学校の皆から見えなくなり城壁が見えてきたあたりで俺は刻星の方へ振り返った。
振り返った先には頬を赤らめている刻星を目にした。
そこで俺はハッと刻星の手を掴んでいる事に今になって気づき手を離した。
咄嗟にとはいえ手を掴んで無理やりあの場から逃げて来たのだから俺の心は恥ずかしさでいっぱいになっていた。
だというのに刻星は掴まれていた手を見て残念そうにうなだれているのだからイラっとしたからなのかいつもの様に口が動いた。
「迎えに来てくれたのはうれしいけど、なんであんな登場の仕方をしたんだ?
刻星なら俺があそこから離れた時に出てくることも出来たはずなのに何故しなかった?」
「海に早く会いたかったのとこそこそするのにも疲れてきていたからちょうどいいと思ってさ」
俺の問いに即答で後の事を考えていないと思える回答をしてきた。
「それに風木先生と話していた海は何だか動揺しているみたいだったからというのもあるかな。
僕からも質問するよ、海演習で何かあったのかい?」
刻星の質問に答えることが出来ず一言口から出たのは「帰ってから話す」というそっけない一言だった。
情けない返答にこのまま有耶無耶には出来ないのだろうと心の中で沈み込んでいた。逃げて来た事もありさらに心が沈み帰り道これ以上刻星と話さなかった。




