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サンタクロースを騙して財政破綻した貧乏自治体を再建します、腹黒美人官僚活躍記  作者: 林和志(林雄介)
2章 サンタクロースのレンタル・サービスはじめました
18/21

18.日系人、クリス北見 

 太田の帰国で、サンタクロース振興課は本格的に始動することとなった。

 サンタクロースのマニュアルは何冊か送られてきた。

 細田が首をかしげる。

 「このマニュアル、日本語ですね。サンタクロース協会が日本語訳を作成したんでしょうか?」

 「認定サンタクロースは、滞在費しか支払っていないのよね。サンタクロース協会が赤字になると思うんだけどね」

 「サンタ基金でしょうか?」

 「細田さん、考えてもわからないことを考えるのはやめよう」

 山口は、マニュアルから、申路市ができることを列挙していく。

 「サンタクロースができること、1、クリスマス以外の日にプレゼントを配ること。ただし、イベント等に参加して不特定多数の人に姿を見られてはいけない。2、サンタクロースのイメージを壊すような写真を撮影されないように気をつけること。2ショットで写真に写ることも禁止」

 「要するに、子供にプレゼントを渡しにいくのはOKなんですよね。大人も写真撮影に応じなければ、プレゼントを渡しても大丈夫。あとは、パーティー等に出席する時は、サンタクロースを守れる屈強なボディーガードを同行させること。ボディーガードはどうしますか?」

 「ボディーガードは向こうからやってくると思うから大丈夫よ」

 山口は涼しい顔で断言した。

 「向こうからですか?」

 山口の電話が鳴った。こうした電話が増えるから、サンタクロース振興課を別部屋にして貰ったのだ。

 「もしもし、山口です」

 「クリス北見です。旭川さんからご連絡が行っていると思いますが」

 電話相手は、流暢な日本語で答えた。電話番号は、旭川から事前に知らされていた。

 「サンタクロースのボディーガードをしてくださる、元海兵隊の日系アメリカ人の方ですよね?」

 「はい」

 「サンタクロース事業はスタートしていません。昨日、認定サンタクロースが帰国したばかりですから。ですから、最低賃金ギリギリの非正規雇用の形になりますが、よろしいですか?」

 「お任せします」

 「住宅はどうされますか?こちらで探しても構いませんが、保証人は市長がやりますので、そちらで安全な物件を探してもらえますか?」

 「とてもクレバーな対応で助かります」

 「それでは」

 山口もクリスも最低限の会話で電話を切る。

 「今の電話、どなたからですか?」

 「細田さんは、知らない方がいいと思う」

 この部屋もすでに盗聴されているかもしれない。秘密を知れば、一生、米国の監視リストに名前が載るかもしれない。細田さんには教えない方がいいと山口は判断した。

 

 昨日、太田が日本に帰国すると旭川次官から山口に電話がかかってきた。

 「米国政府からサンタクロースのSPを派遣したいと要請が首相にあった。クリス北見さん、元海兵隊の少佐で27歳、どうせ偽名だ。諜報機関の人間だろう。明日、山口さんの電話に直接連絡が来る。申路市に住むらしいが、部屋は米国側が探すだろう。保証人は泉田市長にお願いするように河田大臣から連絡が入ることになっている」

 「次官、サンタクロース事業そのものが米国の監視下にあることを市長に教えるんですか?」

 「教えても理解できないだろう。河田大臣のコネで米国人が手伝いに来たと伝えるぐらいで構わないよ」

 「この電話、盗聴されていますよね?」

 「次官室に盗聴器を仕掛けられていると思う。外してもまた取り付けられるから、オープンに聞かせておいた方が米国も安心するだろう」

 「サンタクロース事業では、次官にご迷惑をおかけして申し訳ありません」

 「そうでもないよ。米国系ゼネコンは日本国内の公共事業の入札辞退を申し入れてきた。ホワイトハウスからの大きなお土産だね」

 「次官室に盗聴器を仕掛けていますから、公共事業の情報を抜き放題ですものね」

 旭川は苦笑いしているであろう。

 「だから、国土交通省の情報を抜くかわりに、うちの所管事業を米国系企業が参入しないように、ホワイトハウスが圧力をかけてくれる。利害の一致だね。結果オーライだから、山口さんは気にせずやりなさい。あとな、本省に戻ってからのあなたの海外勤務。米国大使館でも留学でも喜んで受け入れるそうだ」

 山口が顔をしかめる。

 「米国の監視は、一生続くのですか?」

 「そんなことはない。あなたが退官して、数年で監視対象から外れるはずだよ。あちらも公務員だから、日本と同じだ。予算と戦っているからね」

 そんな生臭いやり取りがあった。だから、山口だけが知っていた方がいいのだ。

 細田も山口の口調から、何かを察したようである。

 「山口さんがそういうのなら、質問しない方がいいことなんでしょうね」

 「そうね、それよりもふるさと納税の事業参加の申請をしましょう」

 

 サンタクロース事業は、サービス内容がわからない。総務省には、内々にふるさと納税制度を利用して返礼品にサンタクロース関連の事業を行うと伝えてある。

 「今、10月だから申請しても実現できるのは、来年度からですよね?」 

 「親切な人達が助けてくれたので、申請すれば即日、総務大臣の許可がおりると思う」

 「なんだか、怖いですけど、さすがです」

 旭川や河田の根回しもあり、総務省は申路市のふるさと納税返礼品は、すでに申請済みとして取り扱ってくれていた。

 山口は、太田にサービス内容の確認をするために守衛室に見せに行った。

 太田を守衛と兼務にすることや、申路市内の顔バレ対策をどうするか泉田に相談をした。

 「守衛さんは、事業が軌道に乗れば交替も考えましょう。顔バレはしません。田舎の人は口が堅いですから」

 市役所に所要で来訪していた浅野市議会議長も、「それは心配する必要はないよ。市長の給料をカットしてまではじめたサンタクロース事業の邪魔をする市民はいない」

山口は、村社会の閉鎖性に若干、恐怖感を持ったが、自分はよそ者である。

 「この内容で問題ない」



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