俺だけにしろ! (2)
「闇に迷える私どもに光を分け与えたまえ……ホーリー・ライト(聖光)!」
地下室から漏れる明かりしかなかった暗闇に慣れた目には、レオンが灯したホーリー・ライトの光は眩しいくらいだった。
厨房の中が光に照らされると、リアがホッとしたような表情をしてレオンにくっついていて、そのレオンの脚元には卒倒させられた、いかにも盗賊風の中年男が床に倒れていた。
「お兄ちゃん、すっごかったよ♡」
テーブルの上でネグリジェ姿でぐったり横たわっていたのはナディで、その側でエイムは立って黙々と衣服を整えていた。
「こっちは虫に刺されながら外で待機してたって言うのに!ナディばっかり!」
レオンにのされた男はこれで三人目。
エイムと暗闇でイチャつくところを見せつけて、入ってきた男の注意がそがれたところを叩きのめす作戦で、ナディたちが順番にエイムの相手をしようと話をしていた。
「えー、だってぇ、恥ずかしいからイヤだって言ったの、お姉ちゃんじゃない?ねぇ、リアさん。」
横たわっていたテーブルの上で、ゆっくりと上体を起こして乱れた髪を整えながら、少しけだるそうにナディはレオンの苦情にやんわりと対応し、リアに同意を求めた。
順番にエイムの相手役をする予定だったのだが、三人目でいざレオンの番になったときに他人の前で恥ずかしいと言い出したので、急遽、ナディが二度目を買って出たのだ。
「わ、私は、あんな音が響くほど激しくは……」
「えー、ちゅっ♡ちゅっ♡て結構、何度も……それにおねだりしてるような声も聞こえたよぉ……」
顔を赤くしたリアはうつむいてしまって、これ以上この話題を続けることが困難になってきたのか、顔をなんと上げると話題を強引に変えてきた。
「し、しかし、よくわかりましたね?ここが盗賊の隠れ家になっているってこと。」
「盗賊の…とまで確信してたわけではないんだけどね。ただこの勝手口と、地下室はしょっちゅう誰かが使ってるなとわかったから。」
「地下室には、明らかに日用品や食料じゃない封印された真新しい木箱がいくつもあったしな。」
「なぜ勝手口は頻繁に使われてると?」
ナディの種明かしに興味を持ったリアがさらに質問を重ねた。
「ドアの蝶番って、あまり使われないと錆びたりして、悪くなるのが早いのよ。お兄ちゃんの実家のエレノア ママの部屋もそろそろ修理しなくちゃって、お兄ちゃんとも言ってたんだけど、ここも勝手口と地下室のドアだけでは、開けたときに音、あんまりしなかったんだよね。」
「正面玄関もそうだが、使う前か、さもなければ半年に一度しか掃除ないと言ってたし、他のドアは等しく音を立てるのにだ。ま、もともと話がうますぎると疑ってたのもあるがな。」
リアは納得したと同時に、二人の洞察力に感心したようだった。
「それよりリアさんの最後のとどめもすごかったじゃない?魔法みたいな電撃だったけど?」
「ああ、これは私の世界では護身用に使われている電撃銃です。至近距離でないと使えませんが、その代わり強力な電流が流れますので、普通の人間なら一発で筋肉が麻痺して行動不能になります。」
「へぇ、それなら私でも使えるかな?」
「ええ。私には空圧銃もありますので、よろしければ、この電撃銃は護身用にナディ様にお貸ししておきます。」
そんなナディとリアのやりとりを黙って聞いていたレオンが、一呼吸置いてから話題を切り替えた。
「で、どうすんの?このオヤジ含めて、のした三人と地下室で寝てるスケベな盗賊ども。」
足下に転がってるオッサンが一人、すでに同じ手に引っかかってのされたオッサンが二人と、さらに、その前に、地下室に集まっていた五人は、レビルオンを纏ったエイムが、あの閉鎖空間で放った手加減なしのスリープ(誘眠)で眠らせた後に縛って、そのまま地下室に閉じ込めてある。まだ当分、夢の中だろう。
シィルの話をはなっから疑っていたエイムは、すぐにここに居を移さず、近くの宿を探して待機。その間に、ユダに夜の間、ここを見張らせていたのだ。案の定、三日後に不審な輩が集まってきたので、一網打尽にする今回の策を弄したのだ。
「今すぐギルドに突き出して、あの女狐も締め上げる!」
女狐とは無論、シィルのことである。
「ちょ、ちょっと待って、今、真夜中だよ?ギルドに行ってももうシィルさんはいないよ、きっと。明日、朝一番でいいじゃない?今日は宿に戻ろうよ?」
エイムとナディの策が見事にはまって、大きな騒ぎになることもなかった安心感で剥き出しなったエイムの怒りに、レオンたちが戸惑ったところで、夜の静けさが思い出したように舞い戻ってきたようにしんとした。
「あ、あはん♡」
そこに響いたナディのとびきり艶めいた声に、びっくりしたようにレオンとリアが振り向いた。
「ど、どうなさったんですか?」
「お兄ちゃんのが、いっぱいあふれてきちゃって……♡とにかく一度、宿に戻らない?私、お風呂に入りたいな……」
……
『ほんとにヤッてたの?!』
口をそろえたレオンとリアに、夜中とは言え『ヤッてた』とかそんな大声で婦女子が口にするな!とエイムは言いたかったが、あまりにも激しいナディとリアの連続おねだりで、ついに理性を失ってしまいヤッてしまった本人が、そんな上からものを言うのも憚れるので、目を合わせられずに、怒りも一瞬、どこかに行ってしまった。




