俺だけにしろ! (1)
その男が扉を開けると、月夜の闇より濃厚な闇が、その向こうに広がっていった。中に入った男が目を向けた方向には、床からほんの僅かに光が漏れていて、それ見て男は口角を上げたのだが、気付く者は誰もいない……はずだった。
くちょくちょ……
「ン、あん♡そんなに……激し……」
暗闇のなからねっちょりと湿った音と、ときどき漏れるように塞がれた口から漏れる女の甘くくぐもった嬌声。
ここに女を連れ込みやがった馬鹿がいるのか?今度は明らかに不快感を露わにした。
ぐちょぐちょ……ギシギシ……
さらに激しさ増すその淫猥な音のする暗闇に向かって男が目を凝らした。
「お前たち、そこで何してやがる!?」
「あんたこそ、人んちに何、勝手に入って来てんのよ?」
いきなり背中から聞こえた女の声に驚いて振り返った瞬間、男は勢いよく壁にぶつかった。
ガン!ぐしゃ
強く頭をぶつけた音と、明らかに鼻が潰れた音、耳にするだけで痛みを感じるような破壊的な和音が真っ暗な厨房に響き渡った。ただ壁にぶつかったと思ったのは男の錯覚で、実際にはプロテクト・ウォール(聖壁)という壁が飛んできたのだ。
勢いよく後ろに倒れ込んだ男は、床に後頭部もぶつけた。それでもなんとか男は卒倒することだけは免れた。
「これ、とどめです。」
別の女の声がした。次の瞬間、男の目の前に火花が散って、あえなく意識を失った。




