一軒家紹介して! (2)
「ほら、内見に行くだけだから。」
「そうだよ。見てから気に入らなければ、依頼の話ごと、断ればいいわけだし。」
「そ、それにまだ今日、明日、すぐに行動しなければならないこともないわけですから。」
ナディ、レオン、リアが、移動中の馬車の中で黙ったままでいるエイムに、それぞれ順番に釈明を始め、エイムが目を合わせると、同じようにそう長くは目を合わせられずに、ばつが悪そうに目をそらした。
「ま、リアの言うとおり、すぐにやることもないしな。レオンの言うとおり、気に入らなければ断ればいい。」
「そ、そうよ。お兄ちゃん、重く考えすぎ。」
「相手がギルド長でなければな。」
シィルの言葉を信じれば、書類上は本部だというあのギルドと、新館と言っていた中央ギルドとの関係も、実際はどういう関係であるのか、まだわからない。なにせ、ギルド長たるシィルが、身分を隠して、ただの新館に出入りする理由が謎だ。
だが、ここで一方のギルド長相手にもめ事になって、もう一方のギルドでも、冒険者として活動に支障を来す可能性も完全には否定はできない以上、慎重に慎重を重ねて行動してしかりだ。
「それに……止めなかった俺にも責任はあるしな。」
そう言ったエイムの言葉に、さすがに諸手の同意の言葉を返しはしなかったが、三人揃って安堵の表情を浮かべた。
さすがに、三人とも罪悪感はあったらしい。
ただ正直、エイムもシィルの提案に、前払いはなくとも乗ってみるのも悪くはないと思ってはいた。
まだ右も左もわからないこのハーゲンで、冒険者として生計を立てることは、そんな生やさしいことではないだろう。なら多少、怪しかろうが、相手はギルド長を名乗っていて、すがるならこの上なく太い伝手である。
そのお眼鏡にかなわなければ、もめ事になろうがならまいが、登録証の色以上の依頼は受けられないだけの話である。
ただそれでは、ハーゲンのような大都市で、ブロンズ程度の冒険者が、一朝一夕に、その日暮らし以上の生活をするなど至難の業だろう。
だったら、面白そうな賭けには乗ってみるのが冒険者だろう。以前に自分が口にしたそんな言葉を、エイムは思い出したところで馬車が止まった。
「着いたみたいですね。」
リアとエイムが降りる前に、出口に近い位置に座っていて先に馬車を降りたナディとレオンの感嘆の声が響き渡った。
「すごーい!」
「ほんと、立派だよ。こんな所、ただで貸してくれるの?」
そこはナディとレオンが、なるほど驚嘆の声を上げたことに納得する豪邸とは言わずとも、立派な邸宅だった。




