一軒家紹介して! (1)
「ちょっと待て!どう言うことだ?」
「ギルド長に直接、スカウトされて、なにか不満かい?」
左右のソファに、それぞれ自分とナディ、レオンとリアが前のめりで座って問いかけている状況で、上座の一人座りのソファに悠然ともたれかかって、話をするその態度がまずは不満なのだが、エイムはひとまずそこには触れなかった。
「どういう魂胆だ?ってことだ。」
「なに、このハーゲンでまだ顔が割れてない冒険者を探していてね。偶然、目をつけたのが、あんたらってことだけなんだけどねぇ……」
その目をみて、四人ともまったく納得していないことを見て取ったシィルは、観念したようなそぶりを見せ、少しだけ表情を引き締めて、背もたれに体を預けることを止めた。
「このハーゲンで顔が割れてない、なおかつ、リオキリル方面から、やって来た冒険者を探してたんだよ。」
「いくら何でも話ができすぎなように聞こえますが……確かに私たちは昨日、ここにたどり着いたばかりですが。」
少し熱くなっていたエイムには、リアの質問には、事務的なまでの冷静さを感じた。
「いいねぇ……たとえ相手が誰であろうが、その言葉を鵜呑みにしないその姿勢。これでも半月ほど、向こうのギルドに正体隠して張り付いてたんだけどね。ここには見知った冒険者しか来ないしね。結構、苦労したんだよ。」
リアにそう答えたシィルの態度に動じた様子はまったくない。
「この人、まだ嘘は言ってないよ。」
いつの間にかレオンがシィルに鋭い目を向けて、センス・ライ(看破)で、その言葉を吟味していた。
「こっちのお嬢さんは法術使い(聖職者)かい?いいねぇ。こりゃ、想像以上の拾いもんだ。」
「満足いただけたなら、そろそろそちらのご用件を教えてくださらない?」
畳みかけるようなナディの追求にもまったく隙を見せる様子もない。それどころか、笑顔のナディの、まったく笑っていない目線を真っ向から受け止めて、まだ笑みすら浮かべていた。
度胸というのか、度量というのか、さすがにギルド長と名乗るだけはある。たとえ、ブロンズ以下の冒険者相手とはいえ、四対一のこの状況にあって、それだけ肝の据わり方が見て取れる応対だった。
「想像はつくんじゃないのかい?あたし直の密命で動いてくれる冒険者を探していたのさ。」
「小間使いならご遠慮させてもらうが……」
そう聞いて向けたエイムの視線を、シィルは真っ向から受けて返した。
「一応、キリル国内の冒険者ギルド組合では、こっちがハーゲンのギルドの本部でね。あっちは新館。書類上はね。そういうわけだから、おかげさまで事務員程度なら困ってないよ。」
エイムたちの追求の手はここで尽きてしまった。
「そうさね。うちで依頼を三つくらい受けてくれないかい?あんたたちの実力をまず知りたい。あたしからの依頼はそのでき次第。」
「試験てことか?」
「そう受け取ってもらってかまわないよ。」
「試される俺たちに何の得がある?」
そのエイムの問いに、シィルの笑みにさらなる満足感が加わった。
「ますますいいねぇ。ちゃんと皮算用もできる。あんたたちの登録証、見せてもらっていいかい?」
エイムはブロンズの登録証を差し出した。それにならって、ナディたちも自分たちの登録証を出した。
「ブロンズ?驚いた。お嬢ちゃんたちに至ってはまだノービスかい?」
「もしここがギルドとして機能しているなら、これも評定してほしい。」
そう言って、エイムが出した礼状を見て、初めてシィルの表情に、初めてそれと分かる変化らしい変化が見て取れた。
「ピレスノアの聖女様の礼状?」
「鑑定してもらってもかまわない。ここがギルドならできるだろ?」
そんなエイムの言葉をそっちのけで、シィルは真剣に礼状に目を通していた。
「驚いたね。こりゃ。いいよ、これを依頼の一つとして、あとはあんたらハーゲンに着いたばかりだって言ってたね。残り二件の依頼料、前払いしてもいい。何か入り用なら、金以外でもいいよ。どうだい?」
そのシィルのセリフを聞いた瞬間、ナディの、レオンとリアの目の色が同時に、しかも同じ色に一変した。エイムがそれに気付いた次の瞬間には、三人揃って立ち上がり、シィルの前まで行って異口同音にまったく同じ要求を口にした。
『一軒家紹介して!』
「は?」
さすがのシィルも、この三人の勢いと要求には虚をつかれたらしく、初めて動揺の色をみせた。エイムはその後ろで一人、頭を抱えてしまった。




