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魔装変身 レビルオン  作者: 川端 大夢


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大都会ハーゲン (1)

「繰り出す前に詠唱をしながら集中力を高めてね。顕現するタイミングを見計らって拳を繰り出すの。口で言うと簡単に聞こえるんだけど、タイミング命みたいなところがあって、結構、難しいんだよ。」


 リアに体術と法術を組み合わせることはできないのかと、ベレントールで野営しているときに問われて、そんなことを今まで考えもしなかったレオンは、早速、試し始めたのだそうだ。できると自信が持てるようになったのは、つい最近のことらしい。


「プロテクション・ハンマーなんて勝手に言ってるけど、要はただのプロテクト・ウォール(聖壁)なんだけどね。」


 最初のうちはうまくプロテクト・ウォールが発現しなかったり、繰り出す攻撃がへっぴり腰になったりと苦労したそうなのだが、こぶし大とはいえ正拳を繰り出すと同時にプロテクト・ウォールが張れるようになると、拳を痛めることなく攻撃対象物にダメージを伝えるようになり、訓練を重ねることで次第に張れるプロテクト・ウォールの大きさも拡大するようになった。


「術者の僕にとって、プロテクト・ウォールの重さはゼロだから、僕の正拳の威力を力一杯相手にぶつけられる。ただ相手がぶつかるのは僕の拳ではなくて、もっと大きくて硬いプロテクト・ウォールだからね。痛いと思うよ。」


 おそらく、痛いどころの話ではない。実際、ゴブリン程度なら一撃で虫の息になった。


「俺でもできるかな?」


「コツさえつかめば難しくはないから、エイムでもできると思うけど、そもそも魔術なら、そのものが攻撃力を持って飛んでいく術があるんだから必要ないんじゃない?ファイヤー・ボール(火球)とかで試したら、やけどしちゃうよ。」


 そりゃそうだ。エイムは納得した。


「私のこれは空圧銃といって、私のいた世界ではありふれた護身用の武器です。出力は目一杯にしてありますが……」


 リアの使っていたブーメランのような形をした魔道具のようなものは、中で高圧縮した空気を撃ち出すものらしい。撃ち出すのは圧縮された空気なので、そんなに射程は長くないそうで、かつ至近距離であたっても、当たり所によって昏倒させるくらいで、それほどの殺傷能力はないらしい。


「ただこの弾丸を込めて撃てば十分な射程と殺傷能力を得られます。」


 そう言ってリアは金属でできた豆のようなものを見せてくれた。そもそもこの「銃」とは、リアのいた世界では一般的な武器で、本来は色んな大きさや素材でできたこの「弾丸」というものを撃ち出して攻撃する武器らしい。


「この弾丸は特殊な金属ではありませんが、それでもこの空圧銃に使えるように精密に、この形の大きさで揃えて製造することは、この世界の技術でできるかどうか……よく見ると細かい文様も刻まれていて、これも実は重要で……数に限りがあるので基本、この弾丸は使わないでおこうと思ってます。」


「ちょっとそれ見せて。」


 リアが見せた弾丸をナディが手に取って眺めた。


「ふーん。尖ってるところと平らのところで材質が違うんだね。」


「ええ。平らなところは圧縮した空気で弾かれる部分なので硬く、尖っているところは弾芯といって、この弾丸の場合は当たったものを簡単に貫通してしまわないように柔らかめの金属でできています。」


「ふーん。でも、これくらいだったら、うちのママなら作っちゃうかも。」


「え?」


「うちのママは世界一の錬金術師だよ!一度、時間ができたらママに相談してみようよ。」


 小さい頃から普通に飲ませてもらっていたので気付かなかったが、確かにミネルバ印以上に効くポーションやエリクシールを飲んだことがない。実際、マルタやリオキリルでもミネルバ印のものは他のものより高価で販売されていた。

 また薬品専門というわけでもなく、ミネルバの部屋には得体の知れない魔道具が多々あった。それらはどれもこれも効能は定かではないが、昔、頼まれたといって、剣に魔法を付加しているところも、エイムは見たことがあった。

 世界一かどうかは同意しかねるが、ミネルバが並の錬金術師ではないというなら、それには同意できる。


「人のことより、ナディもちゃんと魔術の練習しろよ。」


「ちゃんとやるよ!新しい魔術覚えようと思ってるもん!」


「いや、新しいの覚える前にだな。レイ・ボウ(光の矢)くらいはちゃんと前に撃てるようになってくれ。」


「レイ・ボウはもう出るじゃん!」


 出りゃいいってもんじゃない。

 そもそもナディのレイ・ボウは発現しても、矢になって飛んで行かない。スリープ(誘眠)もナディの場合は、一人にしか効果を示さない。その代わりかかれば朝まで目を覚まさないくらい超強力だったりするのだが、なぜそうなるのかさっぱり分からない。


「今度はさ、チャーム(魅了)を覚えようかと思ってるの。できそうになったら、お兄ちゃんにかけてあげるね。」


 どんな効果を示すのか分かったものではないので、縛ったゴブリン相手にでも実験して、絶対、最初に自分やレオンたちには試すんじゃないぞと言いたかったが、折角のやる気を削いでもいけないので口にはしなかった。


「あら、皆さん、お早いですね。おはようございます。」


「おはようございます。」


 声をかけられたレオンが率先して、ナディとリアがそれに合わせて、アンナ司教に挨拶を返した。


「良かったですわ。皆さんに元気が戻っていて。」


「そりゃもう、お兄ちゃんにおも…」


 レオンがナディが何を口にするかを察して、その口を塞ぐと、リアが代ってアンナ司教の前に立って返答するという見事な連係プレイを見せた。


「こちらこそ、ご鞭撻いただきありがとうございました。ハーゲンまで気を抜かずにお供させていただきますので、今日も何卒よろしくお願いします。」


 さすがリア、気を遣ったアンナ司教に対して、ナディやレオンなら舌を噛みかねない完璧な返答であった。

 おまけに、アンナ司教もここ八日の旅で、多少の挙動不審にはすでに動じなくなっていた。


「こちらこそ。では今日も気を付けて参りましょう。」

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