アンナ出陣 (3)
エイムたちの部屋にやって来たアンナ司教からの話は、村人からのゴブリン退治の依頼だった。
何でも、街道近くのこの村までやってくることはないゴブリンが、二、三日前から村の近くに巣くったのか、彷徨いていて、村の住人たちで、どうしようかと相談していたところに、アンナ司教がやって来たというのである。
無論、教会の人間だけでゴブリン退治という話にはならないのだが、さらに都合のいいことにエイムたち冒険者を護衛につけており、村の人間は、これこそ神のお導きだとばかりに、馬車を無償で修理する代わりに、ゴブリン退治を引き受けてくれないかと相談してきたのだ。
「断ってもかまいません。もともと護衛を依頼したのですから、これは契約外の仕事です。」
見込まれて嘆願されては、アンナ司教としても無碍に断るわけに行かず、まずは相談という形で、エイムたちの部屋をノックしたのだ。
「ただ引き受けていただければ、別途、ギルドへの礼状も私の名でしたためましょう。」
アンナ司教は気遣いながらそう言ってくれたものの、エイムたちとしても、ここまで護衛らしい仕事はしておらず、先払いでもらった銀貨五十枚は、ほぼナディの食事を用意する稼働費と、ごく僅かではあるが追加食材の購入費にしかなっておらず、いささか申し訳ない気持ちもないわけではなかった。
「分かりました。引き受けさせてもらいます。」
村人の話だと十匹はいないという話だったので、それならレビルオンで瞬殺という算段もエイムにはあった。
「それでは、私も同行させていただきます。私も元冒険者ですから、戦力として期待していただいてかまいませんよ。」
アンナ司教が自分からそういうと言うことは、お供の者はすでに説得済みだろう。それとも、アンナ司教の強さを知っていて信頼しているか、どちらかであろう。
「では、明日、早速、朝からかたづけてしまいましょう。」
そう言って、笑顔でアンナ司教が部屋を出て行くところを見送って、振り返るとナディは、明日万全を期するためにも今夜は何もできないことがまだ不服で、そんな表情を浮かべたまま、隠しきれないでいた。
いざとなればレビルオンの力でねじ伏せようと考えていたエイムとしては、変身するところや、その戦闘力を見せてしまうと、また説明やら口止めやらをしなくてはならなくなることを思うと、正直、完全に任せてほしかったところではあった。
さてどうしたものとかと思っていると、エイムとナディそっちのけで何やらレオンとリアが話し込んでいた。
「あのね、エイム。絶対無茶はしないから、僕とリアに任せてもらえないかな?」
明らかに驚きの表情を浮かべたエイムに、レオンに自信ありげな笑みを見せた。
「大丈夫。エイムがそばにいてくれれば、僕だって強くなれる。ゴブリンにリベンジもしたいしね。エイムの力になりたいんだ。だから、僕を信じて。」
二つ返事はできずにいるエイムに、レオンはさらにその笑顔を明るくして、こう言った。
「僕の必殺技を見せてあげる。」




