アンナ出陣 (1)
「オフィーリア・キルレイン、あなたはエイム・アービンを愛し続けることをここに誓い、愛され続けるよう努めることを誓いますか?」
「はい。この身命にかけて。」
「エイム・アービン、妻となるオフィーリア・キルレインを愛し、守り続けることを神の前で誓う接吻を彼女に捧げなさい。」
そうして、アンナ司教の祝福を受けて、エイムはリアにキスをした。そんな早朝の礼拝堂での祝福を見守るナディとレオンの目は、二人を祝福する喜びで満ちあふれていた。
「まったく、出発の朝に何事かと思ったら、いきなり婚姻の祝福を授けてくれって。びっくりしましたわ。」
「すみません。僕たちではリアに花嫁衣装も用意してあげられないので、せめて祝福だけでもと……それがアンナ様の祝福ならこの上ないリアへのプレゼントになると思って……その……」
「違うのよ。レオンさん。怒っているのでは決してなくって……ただびっくりはするわよ。あれだけ落ち込んでいたリアさんが、いきなり次の日に結婚しますだもの。しかも、もうこんなにかわいいお嫁さんを二人ももつエイムさんと。びっくりしてはいけない要素はある?」
ないな。言葉もなく花婿たるエイムは恐縮するしかなかった。
「ま、めでたいことならいつ、いくつあってもいいわ。それでは出発の前に、こちらパフスまでの護衛のお代、前払いしておきます。」
そう言ってエイムに渡された麻袋には、あとで数えると五十枚もの銀貨が入っていた。
「アンナ司教、たかだか十日ほどの護衛に多すぎます。こんなに必要ありませんよ。」
「エイムさん、これはリアさんとの結婚祝い。それと、私の知り合いであるマイアさんの娘 レオンさんとのお祝いも含めて。加えて、ギルドの職員さんから、ナディさんがまかない作ってくれたお礼も入ってるわ。もちろん、私の食事の分も。それと冒険者が嫌になったら、ナディさんには是非、ここのギルドの食堂で雇いたいってスカウト付きよ。」
「え?ほんとですか?」
「私は聖職者よ。嘘は言いません。ナディさん、ここじゃなくても、本当にピレスノアまで来たら、お店を出さない?私、毎日、通うわ。」
「いいですね!ピレスノアに着いたら、お兄ちゃん、冒険者やめてそうしない?」
エイムにはナディの目を見れば分かった。これはかなり本気で言っている。
「お世辞にすぐ乗りやがって。だいたい俺はそこで何すんだよ。」
「お姉ちゃん二人にはウェイトレスしてもらえば、それだけで店は繁盛間違いなしだし……お兄ちゃんは私たちに変な虫が付かないようにお店の用心棒かな?」
ほぼ即答だった。これ以上やりとりするとどんどん深みにはまっていきそうなので、エイムは切り上げようとした。
「これはいよいよ、エイムさんたちがピレスノアまでやってこられるのが楽しみになりました。では、出発しましょう。」
そのエイムの意図を汲んでか、それとも本当にこれ以上、ゆっくりしていられないのか、アンナ司教がうまく切り上げて出発を宣言してくれた。
馬に跨がったエイムの後ろにナディが乗って、いよいよその歩を進め始めて、すぐにナディはエイムにこんな相談をした。
「あのさ、アンナ司教様と話してると、ときどき他人と話している気がしなくなってくるだけど、私、変なのかな?」
それはお前を生んだ美魔女以外に、心当たりがある人間が他にいるのか?とエイムがナディに聞きたかった。
「人柄だろ?」
そうエイムは誤魔化した。




