本当の気持ち (3)
エイムは、マルタで頼まれたお使いの報告と、リオキリルまで借りてきた馬二頭をそのまま買い取るために、日が昇る前にマルタに向かった。
ナディは教会に司教一行が帰路のために用意していた食材を確認し、レオンとリアに足りない食材と調味料などを買い込みをお願いしてから、自分は今日の夕食の準備と、明日以降に備えて、事前に仕込んでおける料理の準備を始めた。
お使いの終わったレオンとリアは、全員分の装備の確認をしてから荷造りと、そんなドタバタした一日が終わって日も沈み、アンナ司教との夕食も済んで、ギルドの宿泊施設の部屋に帰って、しばらくしてからやっとエイムも帰ってきた。
「お疲れ様、お兄ちゃん。」
そう言ってねぎらってくれたナディが、取っておいたエイムの分の夕食を出してくれた。
「ナムルとレムルを引き取っても大丈夫だった?」
「あぁ、大事に乗ってやってくれと言われたよ。」
「そっか。」
エイムたちのようにちゃんと買い取りを断りに来る客の方がめずらしく、貸し馬がそのまま帰ってこないなんてことはままあって、そのために借りるときに保証金も取られる。だがたとえそうだとしても、濁さなくてもいいものは濁さずに立ちたいと言うことで、わざわざ断りに行ってきたもので、だめだと言われるとも思っていなかった。
そんな何でもない会話をしているうちに、ナディの用意してくれた夕食をエイムはあっという間に平らげた。
「ごちそうさん。うまかったよ。」
「こちらこそお粗末様。」
ナディは上機嫌だった。なにせ、初めてアンナ司教に夕食を振る舞って以来、ナディは褒められっぱなしで、アンナ司教はもちろん、そのお供の助祭たちにも手ほどきを請われるほどで、今日は噂を聞いてきたギルド併設の食堂の従業員にもまかないを振る舞って大好評だったらしい。
確かに村には、師匠であるマイアもいるし、ナディだけがその腕を褒められることはあまりなかったといえばなかった。
さらにこれから、行ったこともない遠くの町に行けることもナディは楽しみでならないらしい。
「お兄ちゃんのお嫁さんになって、付いてきてほんと良かったぁ。」
エイムとしても、まだ安定した収入もなく、今ある資金を切り崩しながらの新婚生活なので、ナディやレオンが笑顔でいてくれると言うことは、何よりもエイムを安心させることだったし、この笑顔を守るために頑張ろうという活力にもなっていた。
「さて、明日の出発に備えて……」
そうエイムが言って目配せをすると、レオンが椅子をリアの横に移動させて座った。そして、リアの手を取って、自分の方を向かせた。
「リア、まだ何か言えてないことがあるなら、僕たちに教えてくれないかな?」
「え?」
「リアがね。僕たちのために前を向いてくれたとき、ほんとに嬉しかった。でもね、その後、リアの本当に嬉しそうな顔を、僕はまだ見ていない気がして。」
じっと目を見て話すレオンの視線からリアは目を離さなかった。心なしかその頬は紅潮したようにエイムには思えたが、ランタンの明かりの下では確信にはなり得なかった。
「リアもエイムのことが好きなの?」
「な、に?!」
何か口にしようとしたエイムの口を、ナディが後ろから抱きついてそっと塞いだ。
「僕やナディに、それで後ろめたさを感じているの?」
ランタンの明かりの下でも今度は間違いなくリアが動揺していることが確信できた。
「あのね、リア……」
そんなリアを見て、優しく手を握って、微笑みながら言葉を続けようとするレオン。
「いえ。私、あの……私は……」
今度は間違いなくリアは顔を赤くしていた。
「私、私はレオン様のことが……レオン様のことを愛しています。」
目を見開いたレオンは次に言おうと思っていた言葉を完全に見失ってフリーズした。
「な、なんですと?!」




