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81、筆跡

 十一月に入り、それも終わりに近づいた頃、ギルドの五の部屋に五人が集まっていた。露九戊に召集された。何か大事な話があるらしい。


「本部に冒険者登録の志願をして来た男がいるのだが」


 そう言って一枚の用紙を差し出した。今日の夕方頃のことだという。今は夜だ。

 本部の話ではスキルが使えない男らしい。

 用紙には特徴的な文字で個人情報が書き込んである。書家のような筆跡だ。積極的で力強い。決して丁寧な字ではない。そして不思議な懐かしさを感じる。源力だ。


 源力はスキルをLキャストに変える。

 それ以外に、纏うことによって常時、場力と身体強化を車の摺り足現象のように一定量発揮できる。アクセルペダルを踏むのがLキャストや自由技能(ディスオーダー)という感じだ。

 纏うと消費状態に入る。纏っている間は一挙手一投足に源力が乗る。筆跡にも出る。纏っている状態で同じ源力持ちに懐かしさが伝わる。纏うのは簡単だ。体の奥の暗闇から湧いてくるものを感じればいい。そこにあるのはおそらく古代庭園なのだろう。


 任務を共にする由瑞たちにあるものを渡しておく。

 そのために芽留を呼んだ。


「芽留、頼む」


 そう言って小さな手鏡を机に置いた。

 芽留がそれを取る。

 針で人差し指を刺し、血を一滴、手鏡に滴らせた。


 どんな男か知っておく必要がある。由瑞からの報告だけではわからない場合もある。直接、見た方が早い。芽留の【明鏡(ピリオド)】ならそれが可能だ。

 名前は吾妻慶一。仕事での立ち回りは由瑞に任せてある。スキル次第では大きな戦力になるはずだ。

 この後、手鏡は由瑞が取りにくることになっている。仕事は明日だ。


 炎属性。身体強化。内界発動。

 【六度(ろくど)】と呼ばれるこの三つを揃える自由技能が最強スキルといわれている。厳密にいうと炎属性、身体強化、体術、内界発動、巡行スキル、自由型の六つだ。自由型とはクールタイムなどのペナルティが発生しないスキルだ。これを満たすのは現在、こちら側に空丸しかいない。井黒の朱水武は何年も前に死んでしまった。もし慶一が持っていた場合、非常に有用な人材になる。

 猿田の雨天決行(ディザスターコール)は布陣スキルだ。


「スキルなし。空箱(ブランク)さえなしだ。何かわけがありそうだ」


「スキルはないのにここまでの源力がある。珍しいな」


 俺は道楽に行く途中にすれ違った男を思い出していた。志願書にある写真がまさにその男だった。生まれは月乃村。聞いたことのない場所だ。あの異様な雰囲気は源力を持っていたせいもあったのか。


 とりあえずできることはした。あとは結果待ちだ。由瑞たちに任せるしかない。

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