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17、商業の街

 その後、露九戊から一冊の本をもらい俺は寮へと戻った。本には「冒険者の心得」と書かれてある。何でも今は配られていないが大昔に冒険者になると配られた冊子らしい。


 最初のページに路是法、次のページにはドメイン法と書かれてあった。路是は知っているがドメインとは何だろう。俺はページを開きその内容を確かめてみた。


 ドメイン法。

 一、各国は専門機関を設置し主要戦力の育成と発展に努めなければならない。


 二、各国間で争いが起きた際、自衛の場合を除き、当該機関は一切の力の行使をしてはならない。


 三、各国主要戦力は対外的有事の際、国の隔てなく、その指揮監督権を大本部へ委ねる。大本部とは牙途の冒険者ギルド長である。


 軍隊に関する法律みたいだ。おそらく冒険者のことについて書かれているのだろう。ドメインが何を意味するのかはわからなかった。


 俺は寮に戻る前に少し街に出てみた。紫苑は外交と商業の街だ。他所の国から届いた特産品が店に並んでいる。また、白井は四国で唯一、海に面した国である。正確に言うと遥か東に海岸があり、その周辺に領土を持っているのだ。海産物を得るために、年に一度の領土会議で人口が増えた分の領土を海の側に設けた。離れたところに領土を持ったわけだ。おかげで遠い海岸に港町ができている。砂川にもらった地理の本にそう書いてあった。

 俺は骨董屋で火鉢と炭とやかんを買った。自炊はできないけど、餅を焼くくらいならできるだろう。あとついでに火属性魔法(ファイア)も覚えられるかもしれないからだ。それの練習のためにも丁度いい。あとは食料品店でパンとコーヒーを買った。これで朝飯くらいなら部屋で作れる。俺はそれらを持って部屋に戻った。


 寮の中では何人かとすれ違ったがあまり冒険者には見えなかった。小綺麗な格好をして眼鏡をかけている。ギルドの職員も入っているらしいからきっとそれなのだろう。後で知ったことだが、以前に寮内で源力持ちと普通の冒険者がいさかいを起こして源力を持たない方は別の長屋に追いやられたらしい。つまり今ここにいる冒険者は全員が源力持ちとなるわけだ。俺はそれを意識して辺りを見回しながら歩いたがそれらしい人には出会わなかった。休憩所ではこれまた細身の男が一人、座卓で新聞を読んでいたが冒険者には見えない。挨拶をした方がいいのか迷ったが、こちらを向かなかったのでそのまま通り過ぎた。


 外はすっかり日が暮れて夜になっていたので、俺は風呂に入った後、食堂へ行った。

 風呂は本館の中にある。大浴場だ。本当に旅館のようだ。宿泊費無料でいいのか不安になるくらいだ。食堂もかなりの広さだ。俺はかけ蕎麦を注文して席に座って待った。しばらくして給仕のおばちゃんが運んできてくれた。ほとんど大衆食堂だ。それが本館の中にある。

 周りではだいたいが一人で食事をしていた。特に俺を気にする者もいない。一組だけ向かい合って座っている女の子が二人いたがあとは黙々と一人で食事をしたり、本を読んでいる。挨拶は特に必要ないみたいだ。そしてどれも冒険者には見えない。


 飯を食った後は部屋に戻ってぼーっとしていた。窓の外は真っ暗だ。門灯が見える。部屋の居心地は悪くない。布団も新しいものだ。

 明日からはギルドに通うわけだが何をするかは知らされていない。まあ何でもやるしかない。俺は携帯端末でメッセージを送った。


“長屋よりいい部屋だよ”


“そうなんだ、よかった”


 返事はすぐに来た。果歩からだ。

 それ以外は何もやることがなかったので部屋を暗くして障子窓から外を眺めていた。二階に住むのは初めてだ。景色を見下ろしているだけで飽きなかった。

 そのうち眠くなったので俺は布団に入って眠った。

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