134、出没
三月二十五日、夕方。
牙途国口女市。
住宅街を北に少し行ったところにある商業エリア。その中の食料品店に買い物に来ていた。
店の中で夕飯の材料の買い物を済ませ、外に出ると西の空から夕日が差していた。
早く帰ろう。茜が待っている――。
通りに出て家に帰ろうとすると少し離れたところから人の話し声が聞こえてきた。
店の前の物陰に若い男が三人、屯していた。ガラの悪い男たちだ。少し太った長袖シャツにジャージのズボンを履く男。取り巻きと思われる他の二人はヨットパーカーにジーパン、トレーナーに綿のズボンという格好だった。太った男は髪が短く、他の二人はぼさぼさの頭だ。
「この前の女はどうだった」
太った男が尋ねる。
「駄目っすね。やる寸前で目を覚まして暴れました」
顔をさする男の目の下が赤く腫れている。
「灰皿でぶん殴られましたよ」
「やっぱりあれにしませんか? あの女、上玉だし」
「田村茜か。あれは気持ちよかったな」
「まだ家にいるみたいっすよ。昔の裸の写真がまだあるのでそいつで脅して攫えばやりたい放題っすよ」
何を言っているのかまでは聞こえなかった。店で買った刺身をつついている。缶ビールが地面に置いてあった。
「そうだな。あれは滅多にありつけるもんじゃねえ。どれ、やるか」
太った男が下品な笑みを浮かべながら立ち上がる。
すると――。
「ю∃≠∃∠∪∃〇⊥〇∠〇∩∀≠∀」
目の前に大男が立っていた。
夕日を背に立ち、顔がよく見えない。
「あ? 何だお前。今なんつった?」
覆い被さるような威圧感だ。
いつの間にか現れていた。
「何だ? 乞食か?」
まだ座っていた二人も立ち上がりながら言う。
大男はボロ切れのような破れかけの服を着ていた。
ボンッ!
そのとき、何かが爆ぜる音と共に太った男の頭が空中に飛んだ。
「!?」
他の二人が仰天する。
目の前の現象に言葉が出ない。
さらに爆発音が鳴り、太った男の胴体が上半身と下半身に分かれていた。崩れるように地面に落ち、頭が離れた場所に転がる。首と腹から血が垂れ流れている。腸が飛び出てアスファルトを赤く染める。
「ひっ」
太った男の首と腹に爆弾が放たれた。
同じようにそれはそばにいたもう一人のヨットパーカーの男の頭を吹き飛ばした。
首から上を失った体が前のめりに倒れる。
それを見て最後の一人が思わず駆け出した。
ボッ
今度は逃げるその男の足を吹き飛ばした。だるま落としのように地面に転げ、絶叫する男の腹部を爆発させとどめを刺した。内臓が辺りに散る。
三つの遺体が転がる。あっという間の出来事だった。それを今度は小さな爆発で粉微塵にしていった。
まるで精肉売り場のように店の前に赤い肉片が散らばっていた。
「♯∀∠∪∩∀N(爆弾。これが俺の能力だ)」
誰かに向かって伝えるように大男が言う。
背後に一人の男が立って一部始終を見ていた。
黒い影が存在しない右腕を形取っていく。
「〇∝∈⊃∀∂〇〒⊥∪⊃〇(俺はゴッホ。少しは骨がありそうだ)」
深山 VS ゴッホ。
どうやらこれがギルドが探していた悪魔のようだ。
はぐれていた悪魔が見つかった。
即時殲滅。
ギルドからの通達内容を、深山は心の中で確認していた。




