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14、初スキル

 翌日。朝目覚めると、早速ギルドに向かった。

 珍しく、砂川はまだ来ていないようだった。二日酔いだろうか。受付には小豆が立っていた。


「あ、おはようございます。相葉さん、昨日はありがとうございました」


「いえ」


 宴会の費用は砂川が持ったはずだ。俺の金は減っていない。

 昨日の夜、砂川に紫苑に行くまで俺と一緒に仕事しろと言われていた。まだ何か教えたいことがあるのかもしれない。任務は受けずに砂川を待つことにした。


「紫苑市から連絡が入り、相葉さんは着の身着のままで来てくれていいそうですよ。部屋も全て用意してあるそうです」


「わかりました」


 足りないものは街で買い揃えるようにと言われた。荷物を長屋に残しておいていいのは、こっちに戻ってくることも考えてのことかもしれない。長屋の家賃はあのおばちゃんがいる限りタダだ。後でわかったがその辺も調べられたみたいだ。随分念が入っている。下手なことはできないからやっぱりスキルは覚えておきたい。そう思っていると砂川が入り口からやってきた。


「早いな。ちゃんと寝たか」


「おはようございます」


 そう言ってそのまま受付へ向かう。小豆と何やら話をして仕事を受けたようだ。


「一週間はこっちの所属だ。餞別代りに俺の知ってる事なら何でも教えてやる」


 そう言って外に出た。どうやら死兵討伐の任務らしい。郊外で目撃情報があった。そんなには強くないとのことだった。

 死兵には強さが色々あって、強い個体もいればそうでもないものなど何故かバラつきがある。赤短で指示されるのはどれも強い部類だが、ただの人形が彷徨っているだけのような場合もある。今度の任務はきっとそれだろう。目的地まで向かう途中で俺は紫苑で言われたことを砂川に聞いてみた。


「ディスオーダーというのを知っていますか?」


「ああ、名前だけは知っているが俺は実際に見たことはない。源力の使い手だけが覚えるスキルだ。知っている冒険者も少ないしあまりその言葉は口外しない方がいい」


「何故ですか?」


「獲得手段が危険だからだ。スキルは金になる。我が子や奴隷に覚えさせて金を稼ぐなんてことも起こりかねない」


「じゃあ、場力というのは」


「それも学校じゃ教わらんが冒険者ならだいたいは知っている。肚に意識を集め、周囲を自分のものにするように力む。場に展開する覇気のようなものだ。銃で狙われても場力を広げていれば必ず狙いは逸れる。目に見えないオーラのせめぎ合いだ。威圧の場合の他に範囲内の仲間を労るような場力もある」


 なるほど。砂川の歩き方がまた勢いのついたものになっている。これも場力を展開しているからかもしれない。覚えろということだろうか。少しだけ真似をして歩いてみるが勝手がわからない。場力というのはどうやって出すんだろう。それとも俺ももう出しているのか?

 そんなことを考えながら歩くと、前方にフラフラしている人影が見えた。


「あれだな」


 少し離れたところで立ち止まった。


「冬介。スキルの原理は知っているか」


「はい、学校で習いましたので」


 目を閉じて集中することで閃きのように感覚がある軌道に乗るのがわかる。火気(ファイア)なら体の深部に熱が湧くイメージだ。寒いところにいるとその感覚も顕著になる。

 もう一つが物理スキルだ。必要なのは内功だ。破壊衝動を高め、殴りや蹴りに繋げる。


 かかしを相手に数え切れないほど試したが成果はなかった。魔法スキルも感覚がわからなかった。スキルは向いていないと思ってあきらめていた。


「学校じゃ実戦はできない。本番、一度切りというプレッシャーが覚醒(クラッシュ)に繋がるかもしれない」


 そう言うと砂川は俺の後ろに下がった。


「引きつけて、殴殺だ。一度切りだ。そういう緊張感がスキルを生む」


 俺は少しずつ死兵ににじりよった。

 死兵がこちらに気づき、近づいてきた。

 ガコンガコンと音を無らしながら歩いてくる。本当に大した強さじゃないよな。わからないから余計に怖い。肝が冷えてきた。しかし弱腰になっては駄目だ。緊張感が半端じゃない。俺は腰を落とし、右手を引いて構えた。

 一度切りだ。相手の威圧に負けないように肚に力を入れた。これが場力か、意識が少しだけ風景を包んだのがわかった。体の力が少し抜けた。


「そうだ、それでいい」


 場力で上回ったようだ。同時に体の奥で高揚を感じた。これが内功だ。そのまま射程距離に入った目標に向けて内功を乗せ渾身の右ストレートを叩き込んだ。


 ドガゴン


 死兵がバラバラになって吹き飛んだ。


「よくできた。それが殴殺の解脱(ヒット)だ。何もない場所でできるようになれば覚醒(クラッシュ)だ」


 なるほど。緊張感がここまで高まって初めて湧いたのがわかった。これがスキルか。

 できるだけ今の感覚を忘れないようにと言われた。場力も学習できた。

 砂川は死兵の破片を拾って来た道を戻っていった。今日の仕事は終わりだ。

 とても有意義な一日だった。


 その後、一週間は砂川と一緒にあちこちで死兵退治の仕事をした。探しても見つからない日もあり、結局倒せた死兵は三体だった。砂川が見守る中、全部俺が倒した。おかげでスキルのこつが掴めてきた。もうほとんど案山子でも放てるだろうと言われた。

 最後の一日。ギルドの訓練場で案山子相手に殴殺を試した。


 ドバッ


 すると見事に案山子は激しく散った。何とか殴殺をマスターできたようだ。

 よかった――。

 これでスキルを最低一つは覚えたことになる。

 内功がわかれば応用でいくつかの物理スキルも使えるはずだと言われた。

 場力もそれだけ出せれば布陣スキルもいけるかもしれないと言われた。少しずつ勉強していこう。


 そうして一週間が過ぎた。ギルドで小豆と砂川、それとこの日まで外泊していた果歩に挨拶をして道楽を後にした。

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