114、スキル改定
ギルドの一階。玄関から入って左手の階段をニ三段下りた少し低いところにロビーがある。黒と茶色を基調とした落ち着いた空間だ。喫茶店みたいに椅子とテーブルが並んでいる。猿田とノエルとそこに座っていた。壁際には自動販売機がある。俺たちはコーヒーを飲みながらそれを待っていた。少しして芽留が一枚の紙を持って受付からこちらにやってきた。四人でその紙を見る。
「新スキルとスキルの一部属性変更」。
どうやら何か新しい定型技能が開拓されたようだ。それに伴って既存のスキルの属性が変わる。用紙にはそう書かれていた。
新スキル【治癒】。
地属性魔法スキル。大地の力を使い、対象を治癒する。使用者の熟練度が低いとき、あるいは重病や大怪我のときは大地を伝い周囲の人間の生命エネルギーも消費して治癒する。
治癒の発見によって大地のエネルギーを用いた地属性スキルは治癒だけであることがわかった。目に見えるほど治癒は大地の力を感じる。他の今までの地属性と思われていたスキルは他属性であることがわかった。治癒によってようやく地属性が開拓されたことになる。
治癒はこれまで水属性だと思われてきたがそれは誤りであった。同時に氷属性も存在しないことがわかった。今までの地属性と氷属性はよく精査すると水属性、風属性、闇属性などに振り分けられるようだ。
「随分変わったな」
「治癒を開拓したのは永崎だ。二日前のことらしい。報奨金で病院を退院できると言っていた」
「回復系自由技能の価値が下がったな」
「いや、そうでもない。治癒は周りの人間の生命エネルギーを大分使うようだ。結局呪泉とそんなに大差ない。治すという行為にはかなりのエネルギーを使うようだ。回復系自由技能には源力が使われるからな。自由技能の方が効果も燃費もいい」
「【土裏流】や【木偶】は闇属性か」
新しくなったスキル一覧を眺めていた。
治癒は空箱同様、地面の上でないとできないようだ。生命エネルギーを消費すると免疫力が主に下がり、ほぼ確実に風邪をひいて熱を出すらしい。
「病院の庭で落ち葉をさらっていたときに目に見えない気の流れのようなものがあるような気がした。そしてその気が集中している場所を探し出した。病院の桜の木の下だった。最初は思い込みかと思ったが、その場所に立ったとき地面を伝って自然の力が体に溢れてきて体力が回復した。もしかして今のが治癒なのではないかと思い、病棟の患者を何人か連れてきて同じことをした。すると皆、体調がよくなったという。気のせいではなかった。それが治癒の覚醒だったそうだ。地面には地脈があってエネルギーの強い場所と弱い場所があるらしい。強い場所に立って治癒を放つと人間のエネルギーはほとんど使わないそうだ」
「なるほどな。報奨金はいくら出たんだ?」
「一千万だそうだ」
「すごいな」
「ギルド関係者がずっと気になっていたスキルだからな。規定外の破格の報酬だ。内容がまだ呪泉に似ているから慎重に扱わないといけないらしいが」
治癒が開拓された。
冒険者の扱いがこれでまた少し変わることになるだろう。近い将来、専門の窓口ができて町の人々も何かあったときは病院ではなく冒険者ギルドに駆け込むようになるかもしれない。




