第2話 平穏の中の闇 2
その日の放課後も授業が終わりしだい寄り道せずに家に戻った。
村尾さんとはたまに一緒に帰ることもあったが、例のオリエンテーション以降その回数も減っている。
なんでもいろんな部活の見学に言っているらしい。
物好きなものだ。
人との関わりを求めて動き回る彼女と、それを避けるように帰路を急ぐ私。
対照的なものだなと思う。
自宅に帰って荷物を置くと、さっそく勉強を始める。
まずは今日の授業の復習から。
といってもただ今日の授業を振り返るだけでは駄目なようだ。
当然のように解説なしですまされている知識にいくつもわからないところがあった。
どうにも中学生レベルからやり直さないといけないところが多そうだ。
中学の教科書を引っ張り出し、今日の授業の内容と見比べながら二時間ほど勉強したところだろうか。
村尾さんが部屋に入ってくる気配がした。
同室とはいえ私たちはそんなに関わり合う方ではない。
ああ帰ったなくらいに思いながら気にせず勉強を続けていた。
ついたてがノックされ、村尾さんが珍しく話しかけてきたのはそんな時だった。
「今日ボードゲーム同好会の体験に行ったんだけど、先輩と二人だけであまりやれることがなくってね。
もしよかったらなんだけど今度一緒に体験に行かないかな?」
思わず顔をしかめてしまった。
ついたてがあって助かったというべきか、衝立があるせいで油断してしまったというべきか。
見られていたら喧嘩を売っているとられても仕方がない。
気を付けよう。
ボードゲーム同好会と聞いて思い出したのは生沼先輩のことだ。
一人の部活動をやり続けるのはどんな気持ちなのか、どんな状況と人間性がそうさせたのかそれは気になる。
ただ部活動というものに気乗りはしなかった。
とりあえず訊く。
「ずいぶん急ですね。
そんなにボードゲームに興味があるんですか?」
「いや今のところ特には。
体験していく中で興味が持てたらいいなとは思っているよ」
「興味がないのならなんでわざわざそんな人がいない同好会なんかに体験に……。
もっと人が多い部活に行けばいいじゃないですか。
それならわざわざ私なんかを誘わなくてすみますし」
「大した理由じゃないんだけどね。
どの部活に入れば自分を有効活用できるか考えたとき、人数が多い部活より一人きりの部活のほうが入ることによる影響が大きいかと思っただけ。
人が多い部活は僕がいなくても普通に成立しているわけだし。
面白そうかどうかは眺めて判断すればいいからね」
よくわからない理由だ。
この人については本当によくわからないことが多い。
まあ健全な人間関係とはそういうものだろう。
さて、どうしようか。もちろん普段なら即答で断るところだ。
部活動なんて関わりたくもない。
ただ……、村尾さんには結構借りがあると言わざるを得ない。
体験にくらいなら付き合うべきか、そう思って考え込んだところで村尾さんの言葉に思考をさえぎられた。
「あ、僕に借りがあるから仕方なくいく、とかそういうのはやめてね。
だいたいあんなのを借りに思う必要なんてないし」
再度顔をしかめるはめになった。
この前の一件で聡い人だとは思っていたが、心まで読まないでほしい。
言い訳もなくなった私は長考の末「行きます」とだけ答えた。
今思ってもなぜ行くことにしたのか自分でも上手く説明できない。




