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第6話 罪を犯す 5

 教室に戻ると、窓際で待っていた小船井さんが飛び上がるように立ち上がった。

 その目は不安と期待に満ちていた。

 私たちが手にしたぬいぐるみを見た瞬間、彼女の表情が一変した。


「見つかったの?」


 その声は震え、目には涙が光っていた。

 彼女は両手を胸の前で合わせ、まるで祈るような仕草をしていた。

 村尾さんがぬいぐるみを差し出すと、小船井さんは両手で受け取り、まるで宝物のように抱きしめた。


「実のところ××先生に嫌われているなというのは少し前から感じていたんです。

 ちょっと厳しく当たられたりとか、用事をやたらと言いつけられたりとか……。

 でもこんなことまでされると思いませんでした」


 そこで彼女は再びぬいぐるみを見つめ、優しく撫でるように触れた。

 その仕草には深い愛着が表れていた。


「このぬいぐるみはすごく大事なものなので、本当に、本当にありがとうございました」


 彼女の笑顔は純粋で、その感謝の言葉には嘘がなかった。


 正直言って気まずい。

 私は村尾さんについていっただけで、ぬいぐるみを取り返すことに関してなんの貢献もしていなかった。

 結果的にはうまく運んだものの、頭に血が上って村尾さんの作戦を台無しにするところだったくらいだ。

 それでも小船井さんにとっては私も感謝の対象のようだった。


 生沼先輩が作ったゲームのことを思い出す。「ハラスメント」のカードは人生を台無しにしてしまうほど重いペナルティを課すものだった。

 私はそのペナルティから小船井さんを守る助けになることができたのだろうか。

 生沼先輩や転校してしまったという先輩にとっては手遅れだっただろうけれど、少しでもその無念を晴らすことができただろうか。


 わからない。

 わからないけれど、今はただ小船井さんが受けそうだった不幸を一つ防げたことで良しとしておくとしよう。


 相変わらず小船井さんのような不幸な目にあったことのなさそうな裏表のない人は苦手ではあるのだけれど。




 追記。

 ××先生は今回の件で停職処分となった。

 ただし、今回の件に加えて生沼先輩や転校したという先輩に対してしたことなどの余罪も追及されているらしい。

 私が把握していない他の被害者もいたようだ。

 保護者からの反発も強く、噂では遠からず退職するのではないかということだ。

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