21話 大地が笑う。常闇払う天拳
始めに言っときます。
エピローグは12月に持ち越しますっ!
でもこれで一応3章の完結っ!
何故、何故だ。
ガサツで女っ毛の欠片もない戦闘バカみたいな脳ミソしている奴は、オレサマの秘策である鉄壁の守り《結合魔装》を前に、何故だっ!
何故まだ笑っていられる。
不可解だ!理解不能!分からんぞ!
何故だこの糞女はぁぁぁぁぁぁ!!!
☆
(マダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダマダッ!!)
彼女はその手を止めない。未だにほぼ無敵と化した相手にその拳の雨を降らせ続ける。これを倒さなければ後に絶望が待ち受ける。それ故の焦りか?否っ!そんな事は考えてなどいない!何故なら、彼女はこんな時に限ってもいつも皆に見せている明るい笑顔を絶やさないからだ。
『主殿。今、差し支えなければ質問を宜しいかな?』
(何よっ?今そんな余裕はないと思うんだけど…まぁ聞くだけ聞くからホラ!)
『何故主殿は笑ってらっしゃるのだ?』
(………………………)
そう、彼女の中に宿る龍の魂にも不思議でならなかった。長い事、彼女の中で八重坂地香と言う少女についてある程度は知っているつもりだったが、そんな彼でも彼女の笑みの理由は皆目検討が付かない。
それは狂気、又は狂喜によりものではない。そわな禍禍しいものは彼女にはそんなモノは感じない。現れた事すらなかった。
それは余裕からなる笑みでもなかった。今の彼女の力量ではどう足掻こうと時間内に敵を仕留め切れないと彼女め彼も一番良く理解していると言うのにだ。
ならばなんだ!?
そしてそれは、唐突に帰ってきた。
(イヤ~~~~♪こうでもしなきゃ、挫けちゃうでしょ?私ってさ、負けず嫌いだしっ!こんなにもデカイ壁があったらぶち壊さなきゃっ!?なんて物騒な考えが出てきちゃう訳よ…)
『は、はぁ…』
(それもそれも廻のせいね。だって…自分の力で何とかしなくちゃいけないんだもの…ホントッ!やってらんないわよっ!!)
『そうか…やはり主殿は我が思っている以上に面白い御仁だ。話していても飽きる事がないのぉ』
彼は悟った。彼女は自分が思っている以上に人間らしかった。怖い時に怖がり、言いたい事を素直に言う。それでも、困難には前を向いて傷だらけになりながらも進んでいく、そんな真っ直ぐな人間で…自分には輝いて見える生き方をしている。
彼は心の中でほくそ笑んだ。こんなまるで意思がどんな岩石よりも固そうな彼女だからこそ、自分は…この魂は彼女に惹かれたんだと思ってしまったからだ。
『やれやれ、少しいいか主殿?』
(何々?今度は?)
『この状況を打破する切り札が、一つだけございまする』
(それって、優みたいな?)
『大方彼の行ったモノとは同類ですが正確にはちょっとだけ違いますかな。彼が行った神を纏う術《神装》と違う。人が龍と成りし術《竜化》なら或いは…』
(へぇ、カッコ良さそう…)
『ただし、今の我が力では体の一部を竜の体として変容させるのが精一杯。しかも《竜化》にはそれ相応のリスクも伴う。我は少しこれを躊躇うのだが…』
(教えてっ!早くっ!)
『いや、だかしかし―』
(今やんなきゃ意味ないのっ!リスクなんて覚悟の上っ!ど~せぇリスクとか言っても《竜化》って言うからには体が竜に変化するって所じゃないの?そして体力を馬鹿みたいに消費しちゃったりですかぁ?だったら大丈夫っ!私は体力は底無しなの。ヨユーで耐えきってみせるから)
『………私が言おうとした事を殆ど言われてしまったな。次いでに後一つ。《竜化》は文字通り己の体をその身に宿す龍の魂から力を借りてその龍の魂に刻まれている生前の姿に変容する術の事だ。《神装》は人が神の権能を纏いて地上で代行者としてその力を奮い、神の代弁者として君臨する為のもの。対して《竜化》はそう大層なものじゃない。人が龍に生まれ変わる様なものだ』
そう、龍の力を人の身で使用するのだ。当然、人の身体に変化が生じる。只、変化するだけならまだいい。彼の力が半端なモノの為か《竜化》しても身体の1~2しか変化しないだろう。
ただし、その変化の過程は人々が想像するよりより悲痛で過酷な苦痛以外の何物でもないのだ。
例えゴリラみたいな力の持ち主の地香であろうとも、所詮は人の子。硝子容器にマグマを淹れる様なもの。身体は必ず悲鳴を上げる。そして最悪の場合、彼女は自身の身体の変化に耐えきれずに細胞を崩壊させる恐れだってなくもない。
それを彼が言う前に、彼女の決意はもう固まってしまったのだ。
(さっさとやって!早くっ!)
ウム。とても頑固だ。あの童たちもさぞかし苦労した事だろうな。と、彼は一瞬心の中で呟いた。これ以上は彼女を説得するのは時間の無駄だと分かってしまったからだ。彼女の言う通り、彼が悠長に話していられる時間などそんなにない。
それに、彼も何だか地香の一連の反応を見て何故だか愉快な気分になっていた。
『こんな主だからこそ、我はこの者を…八重坂地香と言う数多の名の知れた豪傑よりも肝の座ってる娘を眷属にしたのかもな。ハハッ…佳かろう!我と合わせよ主殿っ!!』
その返答を聞いた刹那、未だに手の甲の骨にひびが入ろうとも殴り続けていた地香はクスッと微笑を漏らしたのだった。
そして、2人は詠唱を開始した。
『「“其の拳は砕けぬ龍の爪の如し。其の口は龍の顋の如し。其の足は龍の踵の如し。其は人の身で龍が如く咆哮する者。我が魂に刻まれた力を呼び起こさんっ!!!”」』
『「転生!!《大地の覇王》!!!」』
その刹那、彼女の身体は変容した。
左腕はまるで龍の鱗の様に石みたいな色合いを醸し出し見て分かる程の雄々しさ、そして龍の鋭き爪。彼女の顔の左半分は龍の鱗が現れ、背中には未だに小さいが右肩に翼を片方だけ現した。
今の彼女は半人半龍。人の身で龍に為った女だ。
『は、ハァァァァァー!?』
「ハイっ!ドラゴンラリアットォォォォ!!!」
そして間髪入れずに左腕でイグラムの首もとに文字通りラリアットをお見舞いした。それも、只のラリアットではない。地香の左腕は今龍の腕も同等。その龍の鱗はどんな金属でも一度触れれば原子分解を促す起源を持つ力を帯びている。
これが地香の中に眠る龍の魂が生前に用いた力。あらゆる物質を壊す事の出来る“原始の理”だ。
「ウオリャァァァァァ!!!」
それは勿論、魔力で作った魔力の鎧とも呼べる《魔装》でも話は同じだ。この地香のラリアットに当たったのだ。もうアレは只の魔力の塊となって鎧は砕ける。呆気なくな…
『ガッ―!?アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?俺様が、オレサマが…こんなっ!こんな女、如きにぃぃぃぃぃ!!!―グガッ!?』
「さようなら。イグラム。アンタみたいな自己チューな奴には、ニエンティちゃんは勿体ない」
最後の守りの要が破られ、そのせいでちった大量の魔力は無駄になり、その反動がイグラムの体を幾度なく襲った。奴の身体は傷付き倒れ自らの原形を保てなくなり、やがて塵となって消えてしまった。
それて同時にもう…後数秒遅ければ起動していた術式も発動される前に瓦解し術式は跡形めなく消えていった。
「ふぅ~~~やっ―グッ!?」
「チカさんっ!」
役目を終えた地香は、危なげもなく元の人の姿に戻っていた。龍の鱗はみるみるなくなり元の人のキメ細やかな肌に。
地香はホッとはしていたが、やはり身体に溜まった疲労と苦痛が人の姿になり解放されその場で倒れ混みそのまま眠りに墜ちた。
2人の姉妹の運命を狂わせた最低な悪魔から世界を救ったのは、世の女性達の憧れでもある白馬の王子様ではなく、俺TUEEE脳で構成された異世界転移系の顔だけ良い糞ハーレム男でも無かった。
ただの、姐御肌気質のお人好しのゴリラ。通称姉ゴリラがお節介にも皆を救ったってオチな訳よ。
皆的に、こう言う結末。どう思う?
エピローグがこれの後始末的な…
次の章の予告的な奴ですから、ここは何卒何卒…




