18話 姉として…友として…妹として…その他諸々の知り合った仲として…
約2週間ぶりの更新です。
そしてっ!累計PV数が5万を越えましたっ!
皆様、御愛読誠にありがとうございます。モチベが上がりますよ!これからもどうぞ宜しくお願いします!
それではどうぞ!
「なんですって?チカさんが…」ヒソッ…
「あぁ、やってくれたよ」ヒソッ…
僕はパニックに乗じてアルトと合流、これからの行動について話し合うことにした。その前に…地香の奴。ナイスタイミングだな!
僕の仮説は恐らく概ね当たっているだろう。地香の奴が柄にもなす何か隠し玉を潜ませておいてそれを今になって使ったって所だな。
まぁアイツは黙って鎖に繋がれている程、お利口なワンちゃんじゃない。獰猛な猛獣も尻尾巻いて逃げ出す正真正銘の馬鹿な獣畜生だからな。
「僕の魔力もやっと半分辺りまて回復出来た。後は隙を伺ってここを出てから僕らの装備を取り戻して地香達と合流!」ヒソッ…
「そして敵本拠地にカチコミですね!」ヒソッ…
僕らは段々と高ぶる感情を抑えながら話を続ける。
だが、問題はここから如何に誰にも気付かれず無駄な戦闘を避けて脱出するかだ。相手は多数の女性の監視役に、後々から分かったのだが、使い魔が僕達の事を四六時中監視していたのだ。この地下採掘場の出口に近ければ近い程警備は当然厳重だろうし、そもそもその出口すら近づく事はおろかその出口がどうなっているのかさえ確認出来ていない状態。
しかもこっちは魔力だけで丸腰。まぁ採掘用のツルハシとかはあるにはあるが…僕ならまぁ女性相手でも強化を掛ければ何人かと応戦出来るがただそれだけ。大多数…それも数十人を魔法を使わずに強化を施してのステゴロは、生粋の格闘家じゃない僕には無理な話しだ。そしてアルトは一端にも勇者だが、こんな最悪過ぎる状況と装備不十分な状態ではロクに戦えないだろう。
僕ならアルトに強化を掛けられるだけの魔力は足りるがどの道、数の利で押さえ込まれてからのとてつもないキツイ刑罰からのバットエンドが関の山かな。
うん。これはもうダメだね☆
諦めてこっからは全部地香に丸投げしよぉー!!
(とは…言って、何も出来そうもないから諦める振りを心の中で何度もやってはいるが…僕はどうしようもない馬鹿だな。だって…何か奇跡の一つや二つ起きてもいいでしょって、ご都合主義を期待しちゃってるんだからさ…)
僕だって足りない頭で、廻みたく色々考えたよ。けど…ここで僕らがやれる事なんて限られている。それも、選択の余地すらない程に…さっきの騒ぎでどこもかしこもパニックだろうがその後に備えて警備をより強固にするだろう。
そしたら尚更脱出の可能性が薄まる。でも…僕達はここを出て行かなくちゃいけない。
「彼女を、これ以上悲しませる訳には…」
ニエンティさんを、これ以上不幸な目に合わせようとする奴を黙ってそのまま地香達に任せておける訳がない。一発派手に殴らないとっ!
奇跡にすがるしかないなんてな~
まだまだ僕の頭は幼稚なようだ。
「おいっ!そこの二人」
「「えっ?…は、はいっ!?」」
僕達は、未だに現状の把握を仕切れていないからなのか複雑な心境を抱えているであろう女の監視員に唐突に呼び止められた。
マズイ!?さっきの話を聞かれ―
「奥の事情聴衆室へ来い。あるお方がお前らに話しがあるんだそうだ。呉々も…失礼のないように?いいなっ!」
「了解です」「分かり…ました」
僕達は内心ビクつきながらも彼女の案内の元、事情聴衆室とやらへ足を運ぶ事となった。
まさか…何か処罰下るの?
イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!?!?
マズイ…額から脂汗が!?もう歩く度にドンドン止まらなくなってきている!そしてアルトもすでに涙目に…
一体…誰なんだ?
☆
「ここだ。それではサラバだ」
彼女は敬礼をした後、直ぐ様僕達を残して持ち場へと戻っていった。
僕達は今事情聴衆室内に居る。
室内は床から壁や天井まで魔術で特殊な細工を施し強度を最大限にまで高めた金属で覆われている。そしてその中には至って普通の木製の机と3脚ある木製の椅子。しかも木製の机の上には何やら布で覆われているが何かを置いているらしい。
そして3脚ある椅子の1脚にはもう既に先に座っていたフードの人物が居た。
「えっ?あの…どちら様?」
「お前達と直接顔を合わせるのは初めてだったな…」
そう言って、彼女は…エイリュフォンの女帝であるナーフェルが優達に素顔をさらした。
「私こそが、この国エイリュフォンを治める者。ナーフェル・エイリュフォンである!」
「えぇ?!この国の女帝様っ!?」
「まさか…僕らを処罰しに?」
女帝自ら僕らの元に足を運ぶなんて、それにこんなタイミングに。もしかしなくても僕らに処罰を下して早々に敵対勢力を減らそうとしているのか?
僕らは警戒体制に入る。武器はないが、拳一つでも抵抗はしてやる。ニエンティちゃんの為にも…僕は静かに女帝を睨み付けた。
「そう睨むな、処罰など下さんさ」
「なっ?―」
「ただし…お前らが私の期待を裏切らなければの話しだがな?」
そう言い、ナーフェルは机の敷かれていた布を片手を引っ張った。そして机の上にある物が顕となる。それはなんと…
「僕の、装備?」
「僕のマントだっ!これ全部纏めて僕らが捕まった時に押収されててたヤツじゃないっすか!?」
「グチグチ喚く男は嫌いなの。口に詰めて欲しい物があったら今の内に言いなさい?そのナニを目の前で取られて哀れな叫び声を聞かないであげる為の私なりの優しさよ。さぁ?何を口に詰めて猿轡の代わりにしようかしら?」
「ヒィッ!?」
「女帝ジョークよ。忘れなさい」
貴女の場合それがジョークで済まないんですよ。…なんて言える訳がないので大人しくアルトは口を塞いでいる事にした。
「それで、どういう事なんですか?」
「簡単よ。私の大事な大事な…世界一!!否っ!宇宙一可愛く儚く美しく芯が通った正しくっ!愛らしさの塊である私の妹を、あんっなっ女にだらしなさそうで女たらしのクソ野郎なんかのフィアンセにさせる訳がないでしょ?アイツとは契約関係上、私じゃあアイツに手出しも邪魔も妨害行為も行えない。更にアイツに敵対する者が現れたら私はソイツらて相手をしなきゃいけないなんておまけ付き。私一人じゃどうする事も出来ないし、協力も仰げない。まぁ普通ならね?」
何だかナーフェルさんのあの口角を歪ませたあの表情、確か何処かで見たことある。多分あれは…廻が、何かまた巧妙な悪巧みを仕組んだ時の表情にソックリだ。
「まぁ普通ならこんな事も出来ないし、貴方達にこんな話すら出来ない伝える術も可能性すら排除されるんだけど…コレをはめてたから多少は無理が効いたわ」
そしてナーフェルさんは僕達に右手を見せた。綺麗な手だ…と感心してる場合じゃない。僕らが注目したのは彼女は右手の中指にはめている指輪の存在だった。何故だか、神々しいオーラを感じる。それも、似たようなモノを前にも?
「これは《八大神器》の一つ。貴方のマント“泡沫の聖衣”その神器は“見えざる光の女神”様が自らの長く美しいシルクの様な髪から編んで作られた物。その聖衣にはその女神の光の恩寵を受けており、その聖衣を覆った者の姿を光の屈折作用によって隠す透明マントです。しかも、人の気配に敏感な魔族ですら察知出来ない様な気配遮断機能付き。ハッキリ言ってお抱えの魔道具制作のエキスパートと一緒になってジックリと調べたい所ですが…おっと、話がずれてしまった」
(このマントに名前あったんだ?てか!コレを女神様が自分の髪で作ったって…どんだけ長い髪してんのその女神?)
「そして私が所有する《八大神器》名を“戦乙女の婚約指輪”神々の盾とも言える鉄壁の戦乙女ウェイル・リアスが一生に一度だけ愛し合った男性神と永遠の愛を誓い合った時に交換されたとされる伝承をもった指輪。コレをはめているとある程度は魔族から受ける縛りを無視出来るの。でもそれは、ただのこの指輪の能力の一部。伝承によればこの指輪を勇者がはめていればその周囲に漂う毒素、果ては闇の瘴気すら清浄されると言われているわっ!」
そう言い終えると、彼女は右手の中指からその指輪を外してアルトにイキナリひょいっと投げた。
「―っえ?うわっと!?」
アルトは一瞬反応が無かったが、反射的に手を伸ばして上手く指輪をキャッチした。だが、情けない事に…キャッチした直後に足が縺れて転倒したのだ。もう一度言おう。何とも情けないっ!
「イテテテッ…」
「…情けない。私が態々男なぞに私の所有物をくれてやったのだ。ちゃんと有効活用をしなければ…分かるな?」
「―うぅっ!?いっ、イエッサーーー!」
恐怖からか右手を頭の上で敬礼を、左手を又に当てて何とも何とも…何度も言うようだが情けない姿を晒している。
ちょっと涙目だ。
「そして、この包みにはお前らの仲間の装備一式が収納されている。持っていけ」
「でも…いいんですか?こんな事して…」
「あの指輪のお陰で多少は無理が通った。だが、その反動もまた大きい。この指輪を外したせいか少し意識が揺れているんだ。はぁ…私が…勇者であれば、その資格さえあれば…そもそもそれ以前にっ!私にもっと力があれば良かったのだがな。そうでなければ、こんな男などに惨めったらしく助けを乞う事などありえないっ!はぁ…無理をし過ぎた。手の感覚が…しなくなってきたなぁ…まぁ少し眠れば、大丈夫…だろう」
目をパチパチさせながら、ナーフェルさんは苦笑していた。彼女はあの指輪のお陰で魔族との契約を奇跡的に無視し僕らに協力してくれた。しかも、男である僕らにだ。彼女の事だから、いくら妹の為とは言え大嫌いな男に助けを乞うのは屈辱以外の何者でもないだろう。
そしてそんな精神の中でも、契約を無視し続けた反動とやらが指輪をしていた時も外した後も連続してあったんだろう。コレは彼女にとって、相当キツく辛い苦行だろう。
だが、そこまでしても…僕と勇者であるアルト。そして地香達に手を貸したのは、間違いなく“女帝”としてのプライドより“姉”としてのプライドが勝ったからなんだろう。
それ程までに、妹への愛情が深いんだと僕は解釈している。だったら…
「なぁ…頼…めるか?妹の、事…を」
「ハイ。僕も彼女に助けを乞われた物です。僕の信条では、助けを乞われたら僕が納得するまで…お節介なまでに面倒を見ますっ!だから…安心して下さい」
「ふふっ…今更ながら、私も、ヤキが…回ったモノだ。奴らは、奈落の…底…だ」
ふらつく彼女の手を僕は握り締めた。そして彼女から地香達の装備が入っている魔法の包みを受け取った。
「ユウ君。扉が開いています!さぁ早く」
「…うん。分かったよ」
僕は彼女の手をそっと放し立ち上がる。体に付いた埃を払い装備を確認し、この地下の採掘場から一歩…また一歩と遠ざかった。
その言葉 一度だけ信頼してやるとするよ
「―?」
ふと耳に過ったこの声は…
ふふっ…
恐縮です
僕は振り替える事なく前だけを向いた。
姉てしての信念。プライドを貫いたナーフェルの姐御。よきっ!




