優が灯す物語4話 夕陽が沈む刻を灯す
初めに言っときます。
2週間も投稿が遅れてしまって…申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁ!!!
ですのでぇぇぇぇ!!!今回は、大ボリューーーームの、私史上初の一万字越えを投稿致しましたぁぁぁぁぁぁぁ!!!
どうぞ、ご覧下さい!
この物語は、優の過去の真実について灯した物語の終わりと始まりだ。
気が付いたら、手首手足に冷たい金属の様な物がはめられていた。
それが、手錠だと理解するのにそうさしたる時間を要しなかった。
周りを見てみると、辺り一面はコンクリートで覆われていた。声を出そうとしても、猿轡か何かをはめられている為、声が出ない。
こんな状態じゃ、呑気な僕でもパニックになる。
「おはよう、優君。調子はどう?」
「………」
猿轡してるってのに話せる訳がない。
これは挑発のつもりなのか?
声の主は、僕が良く知っている人物。忘れる事なんて出来ない人。柳田美里さん。
彼女は奥にある扉からやって来た。でも、どうして!?彼女は既に飛行機に乗っている筈なのに…
「あら?驚いてる顔ね?そりゃそうか…何で私がここに居るかって?飛行機に乗ってる筈だとか思ってる?」
「………!?」
「『どうして分かった!?』って所かな?当然でしょ!私はずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅとっ!貴方だけを、貴方しか見えないんだから?声を聞かなくても、貴方の思考が…その表情や…目の動きや…何となくの雰囲気で分かっちゃうんだもの!」
その彼女の一言一言に、恐怖感じながらただ目を瞑るばかりだった。
「まぁ、私があしらったお姉さまでも見破れない影武者に代わりに飛行機に乗っていられるし。株とか…適当に買ったら凄く儲かっちゃってねぇ~それで私に入ってきたお金で秘密裏に私達のお屋敷に招いたのよ!」
「!?」
私達の…お屋敷!?
イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ!!!まっ、まさか…僕と美里さんがここでずっと…く、暮らすって事!?
「あら?もう気が付いたのかしら?物分りが良くて助かるわ!勿論、このお屋敷は私と優の愛の巣。近い将来、結婚した後にここで二人で永遠に暮らす為に作らせたの…………………でも!それなのにっ――」
彼女の今までの乾いた薄ら笑いがたった今、完全に消え去ってしまった。その異様な雰囲気の変化に僕は、心をビクつかせてしまう。
けれど、それも直ぐに終わり乾いた薄ら笑いに戻る。
それから、彼女は堰を切ったかの様に淡々と口を動かし続けた。
「貴方は、私を救ってくれたヒーローなの。こんな退屈で…窮屈な狭い鳥籠の様なしがらみから、私を救ってくれた。最初はただの憧れの様な存在だった。貴方の事が私にはまるでアニメとかで出てくる戦隊ヒーローのレッドの人の様な情熱とリーダーシップ溢れる、頼もしい存在だったの…覚えてる?私と初めて会った時の事?」
「……………」
あぁ、今でも鮮明に思い出せるよ。
「あの時、貴方がオドオドとして困っていた私を救ってくれた。皆と、私の仲を繋いでくれた。貴方が私の中で白馬の王子様になった…あの幼稚園の忘れられない思い出」
あぁ…僕は、そんな特撮モノの熱血担当や、どっかの国の王子様でもなんでも無い。
「小学生。貴方と私達がべったりくっついてるのを頭の悪い男子達に冷やかされ、私は満更でも無いなって気持ちと少しの苛立ちを覚えたけど、貴方があの時…『じゃあ、もっと見せ付けようよ!僕達の仲を!』その一言だけで、私の心は満たされた。あんな低能達の事なんて瞬時に忘れた」
あぁ…子供の頃って、なんて無邪気なんだろう。本当に、なんでなんだろうか…
「中学生の頃には、私に付きまとう陰湿な教師のセクハラから私を守ってくれた。その時に放った一言は、今でも脳裏に焼き付いてるの『僕の彼女に手を出さないで下さい!』って…その頃はまだだったけど、高校に入って早くも現実になるなんてね…」
あぁ…僕は、どうして…こうも愚かなのか。自分の頭の悪さには流石に嫌気が差すよ。
「高校に入って付き合った当初は大変だったわ。貴方に群がる雌豚の処理が大変過ぎて。でも、それも含めていい思い出に、なってたりします」
あぁ…あぁ………僕は、鈍感を貫き過ぎたのか。鈍感で居たかった。そうすれば、楽だったからかも。そう、受け止め切れない現実を無視出来るから。目を逸らせるから…
鈍感で有り続けようと決めていた。
そう、僕は…目を背けて来たのだ。
「はぁ~~~~~~♪優君との思い出は…フフっ優君と過ごす日々は、私に…私に生きる意味をくれたの!だから…」
そうさ、こんなの受け止め切れない!
「貴方を愛して良かった!」
彼女の大き過ぎる愛を…
彼女の目は既に光が宿っていらず、その目に写しているものは、最早僕だけだろう…
「それなのに…貴方からの突然の別れ話!?突然の海外への留学!?そんなのてっ…私、何かいけない事でもしたの?ねぇ優君?私の何が不満なの?教えて!どんな事でも絶対直してみせるから!」
彼女の必死さは十分過ぎる程伝わってくる。痛い位に…とてつもなく、胸が痛い位に…
「ねぇ、返事を聞かせて?」
そう言って、僕の猿轡を外した。
「……………」
「どうしたの?返事を聞かせて?」
僕は、何も喋りたくない訳じゃない。けれど…どう対応すればいいか頭が回らないんだ。
けど、やっぱり。僕から出てくる言葉は…
「これは、美里さんの為なんです…だから―」
「私の為ってなによっ!!!」
「―――!?」
初めて美里さんが素で怒った顔を見た。そして、初めて怒鳴られた。その瞳からは、一筋の涙が垂れてきている。
やっぱり…僕は、酷い奴なんだ。
優しくもない。何処の誰とも知れない人を救える、救えない以前に…
本当に救いたい人に対して、とても酷い事を…辛い事を強いているのだから…
こんな事になったのは、彼女のせいだけではない。僕が…彼女と恋に落ちたからなのだろうか…
そして、彼女は怒りのまま…悲しさのまま。
震えた声で僕に語りかける。
「優君が何言ってるのか、今何を考えてるのか…今の私には、分からない!私の為って何よ!?ねぇ、ねぇ!!どうして…私と別れるのが、私の為になるの!?意味分かんない!本当に…意味、分かんない…」
僕は、黙って聞くしかなかった。
胸に伝わる、痛みを我慢しながら。
僕は卑怯だよな。
廻には、及ばないけど…それでも最低だよな…
こんな臆病で、偽善者な僕には…これしか、こんな事しか言えないんだ。
「もう、止めよう。美里さん。こんな事をしても、貴女の為なりません。だから…だから…」
「いいえっ!止めません!もう、こうなったら…―」
そう言って、美里さんの顔が僕に迫った。
そりゃ、止めろと言われて止めてくれるとは思ってないさ。それでも、こんな事しか言えないんだ。思い付かなかったんだ。
ダメだよな…僕は。
『警報!警報!屋敷内に侵入者発見!屋敷内に侵入者発見!速やかに対処を!速やかに対処を!』
「なっ!?何ですって!!」
「えっ………!?」
突然の警報によって、直ぐに僕を顔から遠ざけ扉へと向かう美里さん。とても焦った様子で…
扉を開けた所で立ち止まって、美里さんは僕に振り返って暫く見つめた後に…
「ちょっと、待ってて。直ぐに迎えに行くから…」
明るくも暗くも取れる。声色で、そう一言だけ言って、扉を閉めていった。
「言えよ、僕。何で、言えなかったんだよ…」
―――待ってくれ!美里さん!―――
その一言を飲み込んで、僕は目を伏せた。
☆
(侵入者…ね)
彼女は、こんな緊急事態にも関わらず割と冷静に足を運んでいた。勿論、警備面は世界クラスを誇ると言っても過言ではないし、屋敷を中心とした半径1キロメートル圏内にも多数の警報装置や罠を数々を置き、万全の体制であったが…
「さっきの警報は…確かに、屋敷内への侵入時のモノ…ホントに、普通ならもっとオドオドしてる自分がいても可笑しくないのに…ハハッ。何だかホッとしてる自分も居るなんてね…」
淡々と独り言を放ちながら、彼女は武器保管庫へと歩みを早めた。
ここの全ての警備管理はコンピューターが行っている。その為、この屋敷に居るのは彼女と優の2人だけだったのだが、屋敷外の警報や罠を通り抜けてここまでやって来たとなると、それは普通なら冷静でいられない位に危険な事だ。
この屋敷は、優と彼女の愛の巣とも言える場所。その為、邪魔が入らぬ様に警備をコンピューターに任せ、現科学力の叡知とも言える警備ロボットも多数配備させている。
その上に…彼女がいる。
「さて…、侵入者が彼だとするなら、同行者もいる筈。ソイツらの方が厄介かもね…」
武器保管庫に付き、彼女は単機関銃“トンプソンM1921”を手に取り弾倉の要領と重さや手入れがなっているかを丁寧に確認しながら呟く。
この“トンプソンM1921”はトミーガンと知られ、世界中の兵士、将校、警官達などが使う非常にポプュラーな銃の1つである。大容量のフルオート射撃が強み。
そして、もう一丁“ベレッタCx4”もチェックする。
この“ベレッタCx4”は自動小銃で警察機構での使用を想定した銃であり、射った時の反動を本体が非常に吸収するので扱い易く、独特の形状ながら気に入っている。
そして最後には“コルト・パイソン”と“コルト・キングコブラ”だ。
この二丁のリボルバーは6発と、映画とかでよく出てくる奴の類いと思っていたら、概ね想像に難くない筈だ。
その4丁を携え、もしもの時のナイフや手榴弾、予備の弾倉もちゃんと持っていく。
私は“ベレッタCx4”に付属する紐を肩に掛けて“コルト・パイソン”と“コルト・キングコブラ”を腰のリボルバーホルダーに入れ“トンプソンM1921”を両手で構えながら、侵入者を捜索を始めた。
侵入者の所在地を見つけるのに困難を極めた。数百…数千台も用意した監視カメラや、小型カメラ等をことごとく破壊し、部屋に仕掛けてある侵入者用のトラップもまるで効いてない。それに、警備ロボットの妨害も無駄に終わってしまっている。
だが、遂に見つけた。
見つけた場所は、この屋敷内で最も広いであろう私のお気に入りの場所。
植物園にて、だ。
「遂に会えたわね?ネズミさん?」
そう、私の目の前にら…優君との2人きりの時間に…空間に割って入ってきた不届き者。
そして、私もよく知る人物。
と、同時に要注意人物でもある。
「お前を…お前らを見つけるのに、とぉ~~~~~っても!苦労したぜぇ~、お前らを見つける為にもあの人達の助力も貰うためにも苦労したしよぉ~~~罠やらカメラやらも多くてクタクタだっての…だから、さぁ」
その男の眼光は、この私ですら一瞬悪寒を催し怯んでしまう。見続けていると、冷や汗が止まらない。
そして、その男の眼光からその男が今秘めている感情すら分かりそうなのだ。そして、その男が宿す感情は―
「テメー、さっさと優を返しやがれ」
「断るわ…」
その男。仕恩廻が瞳に宿す感情は…
“怒り”でドス黒く染まっていた。
☆
彼、仕恩廻は皆に嘘を付いていた。
彼が、優の誘拐事件について一切の関与をしていない。何故、誘拐されていた筈の優が突然解放されたのか。
レクトールさん達に話す時は、そこだけをはしょって説明をした。
まずは、美里が中学の頃に家族が引っ越したと言ったが…!アレは嘘だ。大嘘だ。
美里が優に対する執着は元からあった。元から可笑しかった。元から…何かが、そう言葉では言い表せない何かが彼女に渦巻いていた。
そんな薄気味悪く、形容し難い彼女の…狂気の深淵は俺には説明が付かなかった。
だから、辻褄が合いそうな嘘を付いた。あの元からあった異常なまでの執着心は、それこそ1回離れ離れになってしまった恋人達が再び再開した様なモノに近しいのだと思い嘘付いた。
レクトールさん達の事をまだ完全に信頼していない訳じゃないが、自分ですら計り知れない彼女の闇を皆に理解出来る訳がない。だからこそ、少しでも理解出来る様に辻褄が合いそうな嘘を吐いた。
これは必要な嘘なんだ。
いや、本当はまだ信頼してないのかも知れない。さっきのにも他に様々なウソっぱちをレクトールさん達に話したからな。例えば先に告白したのが美里じゃなく優だった件とか…
光の中に闇が見え隠れし、知らずの内に真実を有耶無耶にしていた。やっぱり俺は、誰も信用なんてしてなかったのかもな…
優の心に踏み込んで欲しくなかったから、辻褄の合う嘘偽りを淡々と述べ、俺の中に疼く何を晴らしたかったのかも知れない。
自分勝手で酷い奴だろ?
そして、俺が優の誘拐事件の解決に関与した事に関して、伏せていた事だったな。
あれには幾つか理由がある。
優の傷をこれ以上広げない為にも、あの話をするのを俺は躊躇った。
ウソっぱちで誤魔化すのも考えたが、やっぱりダメだった。思い付くものがなかったんでな。
あの時から、地香にも…家族にも、例え信頼出来る人達にすらもこの事を、過去をねじ曲げてでも…
この事は、決して明かしたりはしないと誓ったんだ。
今俺は、俺の師匠達の協力を得て、美里が優を誘拐したと思われる日本圏外で何処の領地にも属さない離れ小島に来ていた。
そこは、美里が偶々上手く行った株の投資で成した財を使い、島を買い巨大な屋敷を建て、セキュリティも世界指折りと称しても過言ではない。
だからこそ、こんな無茶苦茶な場所だからこそ、俺は師匠達の協力を仰がなきゃならなかった。
朗色のエロジジイは、昔にモテたい一心で自動車免許やバイクの大・中・小型全てを取った事は勿論。大型トラックやクルーザーや飛行機の免許等を取得済みだと言う。
その為、朗色が所有するプライベートジェット(しかも迎撃機能ステルス機能搭載の!)を乗客し島に向かったのだ。
そして、その場所に優が誘拐されたと言う情報を掴んだのかと言うと…
俺の暗殺術の師匠であり、裏で世界観の腐った闇を影ながら抹殺する世界屈指の暗殺部隊《黒渦》の現リーダーであり《常闇の蜂》《現代のダース・ベイダーじゃね?》の異名を持つほど。
情報網の多さは多岐に渡る。それに実績もさながら、当時、不可能と呼ばれていた某大統領の暗殺。
小さな紛争地帯の紛争を、たった1人でそれも僅か1週間以内に終結。
大規模麻薬組織を壊滅などなど…
それら全てを成し遂げた男。
明久利来光さん。35歳バツイチ。
凛とした長い黒髪、三十路越えとは思えない若々しさ、経験豊富とは思えない雰囲気を醸し出し、そのシュッとして整って笑顔が輝く顔で何人もの人を殺してるとは思えない位だ。
だがその実、名前に反して性格は滅茶苦茶暗い。暗すぎて不気味にも思える位の…ネガティブさ。
そんな人でも俺に彼が師範を務めている《柊獄罪魔流》の真髄を教えてくれた師匠なのだ。
その世界に存在する彼の情報提供者のお陰で、彼女が何時この島を買ったのか?この島に何を建てたのか?その設計図から製作関係者まで、名前、顔、住所や…
好きな食べ物、性癖から、決定的な弱みまで1人残らず調査済みとの事。
勿論、何時優が誘拐されたのかも知っている。屋敷内にいることもだ。次いでに、周辺の罠の大まかな場所や種類も、ね。ただし、屋敷内に幽閉されているのは調べなくても分かる事だが、肝心の幽閉されている詳しい場所まではさっぱりらしい。
それも、そうだな。
それでも、元から屋敷内に潜入し設計図を元に優を幽閉しそうな場所を片っ端から探す手筈だ。
それらの事を出発する前に師匠達に話をした。
そして、最大の難点についても…
「この計画において、島の周辺のトラップやら屋敷内のトラップや警備に関しては何ら問題はないけど、最後に残ってる大きな敵。美里についてだが…美里の相手は俺が引き受けるから、師匠達は優の捜索に専念してくれ!」
「それは、前々から決めてた事。じゃな?」
「あぁ…そうさ」
鋭い眼光が、俺を捉えその意志の固さを計っていた。
「まぁ、灯火の小僧が何処に居るか分からぬ以上、最大の脅威柳田の小娘の引き付け役は誰かがやらねばならん事。こうも、早く決められて逆に良かったのではないな?老公」
「てかさぁ~~~、そのヤンS嬢ちゃんってぇ、かなりの美人さんなんだろぉ?朗色のジジイさては、その嬢ちゃんを引き付けるそのドサクサに体まさぐ―」
「ちゃっ!ちゃうわぁぁぁ!!!あんなお主みたいに危険な女、扱い方は弁えとるわ!!!」
「失礼な爺さんだなオイ!今ここで、寿命を迎えさせてやろうか?アァ!」
「いやじゃわい!儂を迎え来てくれるのは、天国のキャワイイピチピチのギャル天使って決まっておろぉ!」
「そんな天使あってたまるかよ!てか、テメーが落ちるのは地獄の間違いじゃねぇのか?自惚れるなよ?」
「んじゃとぉ?じゃあ仮に儂が地獄に落ちるとして……ムフフッ♪儂を迎えてくれるのはナイスボディの鬼っ娘がいいのぉ~~~グヘヘヘヘ……」
「まだ言うかぁ!この糞スケベ仙人!テメーなんざ、カメ仙人と兄弟の盃交わしてから、尻派か胸派かに別れて孤島で永遠に終わらない殺し合いでもしてろ!それを私はライブ中継で見といてやるからさ」
そんなこんな状況で沸点が低すぎる大人の喧嘩を見せられている俺の身にもなれよ…
「例えが、別のマンガと混ざり、混沌と化した。素晴らしい…クククッ!だが、最後のはセンスを疑うなぁ?」
アンタは何がそんなに楽しいんだよ。
あっ、紹介し忘れてた人がいたな。
俺のもう1人の師匠についてだ。
彼女の名は、楼成蘭火37歳。バツイチ。
ここだけの話。何と、明久利来斗と交際していたのだ。しかも、俺が3人の元で修行をしてから数年後辺りに…
電撃結婚しやがった!
確かそう…俺が10代入り立てのガキンチョの頃に結婚し夫婦になり一時期、性を変えて明久利蘭火と名乗る様になったっけ。
付き合って早々は、俺の修行中でもいちゃついて、正直朗色の奴と一緒に苛立ちと糞みたいな怒りが込み上げたもんだ。
だけど、時の流れとは早いものさ。
たった3年程度でスピード離婚さね。
離婚の原因は、長年引き摺っていた…
『常にアレの体位で上か下かでの口論!』
『常にアレのプレイの内容がSM一択!』
『映画の趣味が合わない!』
それらの点を引き摺り過ぎた結果、夫婦喧嘩が始まってしまい俺と朗色師匠でも止めるの5時間は費やした。
アレは、最強最悪の夫婦喧嘩だった。
そんな闇に生きる最強の暗殺者の妻でもあったし、現在《業禍断閃流》の全てを叩き込んでくれた師匠でもあるのさ。
彼女からは、武術を学んだ。
まぁ武術と言っても…ステゴロとかそういうのじゃなく、武器を用いた武術だ。
様々な武器の種類や扱い方に始まり、果てはその全ての武器を使いこなすまで修行は続いた。
剣に刀や槍に弓、防具も例外じゃなく盾に手甲やらも、だ。斧や槌や投擲機やそれに、かなり鞭類いに関しては指導に熱が入っていたのを記憶している。その為、鞭に関しては早々に手足の様に自由自在に動き回せる術を会得出来た。
まだまだ教えられてたな、例えば銃の類いも…ボトルアクションやら何やらと種類が多くて覚えて使いこなすのには時間外を費やしたな。
後は…、モーニングスターとか、トライデントも使わして貰ったな。それからシンプルに棍棒や鎌とかも、何か死神みたいな気分が出てきて楽しかったなぁ。
それにトンファーやら釵でしょぉヌンチャクも使ったなぁクロスボウでしょぉそれにハンマーもだ。あっ、そーいやチャクラムも使った使った。
まぁ、銃とかも多種類あるからそれを含めると30種類は固いな…下手すりゃそれ以上かもな…
「正直よぉ~アタシがそのヤンS嬢ちゃんの相手してみたかったのになぁ~」
「悪いけど、美里の相手は俺がする。これだけは譲る気は微塵もない!だから―」
俺は3人の師匠達に向かい深々と土下座をした。
「優を…必ず助けてくれ!この…通りだ!!!」
顔を下に向けようとした瞬間、肩に手を置かれた。
顔を上げると、朗色師匠達が俺の肩に手を置いて安心させるかの様な声色で話し掛けてきた。
「分かったわい。そんな直ぐに面ぁ下げるんじゃないわい!そりゃあ~お前さんが儂らに土下座なんかするもんじゃからビックリして寿命が縮んだっての!だがよ…生け簀かない無愛想な弟子が頭下げるまで儂らに頼んだんじゃからよ…」
「こりゃあ~流石のドS女帝のアタシですら、断り辛くもなるねぇ~」
「まぁ最初は、何故我らよりも実力の低きお主がそんな事を買って出るのか一瞬だが…理解出来ずに悩んだが…が!」
すると来光師匠は、俺の肩に置いていた手を放し彼の背をバックに夕陽が落ち始めていた。それに釣られるが如く、2人も俺に背を向けた。
夕陽をバックに彼は俺にこう言ってくれた。
「大体分かった。後は口出し厳禁…だよな?」
「んじゃやるつったからにゃ~テメーのケツはテメーで拭けよな?」
「相変わらず、お前さんは可愛げのない弟子よのぉ~そんなに心配しなさんな!」
「「「俺達が助ける。だから、安心しな!」」」
その一言を受け。
俺は、決意を固めた。
☆
遭遇し始まった2人の攻防。
廻の培った3種類の流派の技を巧み使い分け美里を翻弄していた。対して美里は、そんな廻の予想を凌駕する動きに動揺せずに、ただひたすらに銃の引き金を引き続けた。
美里は、兎に角相手の十八番であろう接近戦を封じる為に一定の距離を作りながら熟知している屋敷内の植物園の木々を盾に引き金を引いて、空になったら銃弾を補充させ相手を近づかせないようにしていた。そして、体力を消耗させ確実に討ち取るつもりでいた。
それに対する廻も、相手の考えは予想はしていても近づく事が出来なかった。
廻は美里の戦闘能力を少々侮っていた様だ。
美里も小学生過ぎた辺りに親から、柔道やら剣道や弓道など…様々なスポーツをやらされその上、どれも世界レベルの実力を誇り…持ち前の運動神経の良さと要領の良さを生かし…
有名な拳法や武術を極めたとか…それに銃の腕は超一流、平成のビリー・ザ・キッドとも呼ばれる程だ。
所謂、天才肌って奴だ。
俺みたいな惜しみ無い努力と時間と頭を使い、全てを費やして今の形を完成させ、そして色褪せない様に日夜自ら修行の日々を過ごして高みと現状維持をしている努力家とは違うレベルの存在。
だから、正攻法では無駄だと知っている。
その為、俺は戦いながら植物園の周りにある仕込みをし続けていた。
銃声が俺の耳に響き渡り、辺りを硝煙の煙で曇らせている。銃の空薬莢が幾つも足元に転がり、穏やかな植物園の雰囲気を一瞬でぶち壊している。
「ねぇ…そろそろ貴方のお遊びに付き合うのも飽きてきたからさっさと消えてくれない?」
再び銃弾の補充をしながら美里は、木の物陰に隠れている俺に退屈そうに話し掛けてきた。
(んだよ。やっぱバレてるのか…)
これが、単なる時間稼ぎだってのに。
それを知った上で俺と戦っていやがるのかよ…つくづく趣味の悪い女だこった。昔からホントにこの女とは馬が合った試しがない。衝突の毎日ではあったが…まさか、こんな形で殺り合うとはなぁ~
「余裕咬ましてられんのも今のうちだぞ!ヒステリック女。それに、俺は三度の飯より人の恋路の邪魔をするのが結構好きなんだよ!自覚はねぇ~が、な?」
「ホント…貴方と昔から方向性が合わなくて衝突してた記憶しかなかったわね?その上、私達の愛の巣にまでちょっかいかけてくる何て…これだからデリカシーの欠片もないモテない男って…嫌いなのよねっ!!」
怒りをぶつけると同時にまた銃を乱射してきやがった。それじゃあまともに動く事も困難だ。とても面倒臭い。
「悪いが、テメーにデリカシー云々問われる筋合いはミジンコ程も存在しねぇ!人にデリカシー云々唱えるつもりならテメーはまずモラルと一般常識について考え直せ!脳みそからそこら辺、スッポリと…抜け落ちてんじゃねぇ~のか?犯罪者!!!」
隙を伺い、木々に身を潜め色々な所に仕込みをしておく。これがもし失敗すれば…別プランで行くが、そんな余裕はないと考えている。だから、この方法で美里の暴走を止めてみせる!
「テメーがやってるのは立派な犯罪行為なんだよ!未成年だからって調子コイてんじゃねぇ~ぞ!」
「黙れ…」
「あぁ?何だよ?聞こえねぇよ恋愛異常者!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレェェェェェ!!!!!」
とうとう正気を失ったか、無造作に狙いを定めず銃を乱射しまくってきた。
こうなるともう誰も美里を止められないだろう。
ただし…俺以外の凡人なら…な。
仕込みは完了。
ターゲットは、そろそろ目標地点まで…後ちょっと…
さぁ最後の仕上げだ。
「ウォラァァァァ!!!!!」
「キャッ―!!??」
俺はタイミングを見計らって、銃弾の嵐の中美里の中に突っ込んだ。
途中何度か鉛玉太ももやら腕に食らったり、頬やそこかしこに掠ったりしたが、美里の懐に入り込めた。幸いにも、致命傷を負わなかった。
「なっ!?何をして―」
「なぁに?ちょっと、俺と付き合えよ…」
そう言って、俺は周りが木々に囲まれた植物園の広間に美里を無理矢理誘導させた。
例え美里がどんだけ技術や戦闘経験の多さと、卓越されたセンスが在ろうとも…俺の薄汚くても日々の地獄の様な特訓と努力の積み重ねによって生れた俺の力には抗う事は…出来やしない。
才能と言うダイヤの原石を幾ら持とうが、磨かなければ輝きを見せる事なんて出来ない。
俺の持っている物が、例えダイヤ何かよりも安っぽくても磨き続ける事を諦めなければ…例えその行為が泥臭くて醜い行為だとしても…その先に見える輝きは、ダイヤ何かに負けない程の輝きを見せるはずだ。
まぁ、未だに俺は泥臭くて卑劣極まりないままみたいだがな。それでも、救えるモノがあるんなら…
体を張る価値は、ちょびっとだけある………かも、な?
そこは皆の勝手だがな?
やっと…やっと、誘導出来た。
さてさて、最後の仕上げに…
美里の顔を絶望一色に染めてやる!
「なぁ…最後に言い残す事があるなら聞いてやるぞ!」
「はぁ!何を言っ―」
「なぁに?直ぐに分かる」
その意味が分からず、直ぐ様この俺の拘束から逃れようと銃の柄で俺を殴り出した。
その一撃一撃が重くとても痛く、一瞬でも気を抜いたら気絶だけじゃあ済まないのは火を見るよう明らかだ。何とか食らい付いているが、一向にこの暴走が収まる気配が見えない。所々が痣だらけになっている事だろう。多分、どっか骨を折った所もあるだろう…
それでも…構わない!
俺は隙を付いて美里の背中に回り込み羽交い締めを掛け、更に拘束を強めた。
「ちょっと!何抱きついてんのよ!この変態!痴漢!私を抱いていいのは優君だけよ!」
「黙れ妄想癖!」
そして、俺は一度大きく息を吐いてから…大声で叫んだ。有らん限りの声量を腹から出して。
「パスワァード認証ぅぅぅぅぅ!!パスワードは…『絶望がお前の終着点だ』ぁぁぁぁ!!!」
『ピィィィーーーーーーーーーーー!!!パスワード認証。ロックを解除。爆破プログラム
《RINNE-ⅩⅥ》起動します』
その瞬間。広間よ周りを取り囲んでいた木々の根元付近から爆発音が聞こえてきた。
あまり激しいものではないが、樹齢百年近い大きさの木を破壊するには十分な火力だった。
支える重心を失った、木々は徐々に俺達の所に倒れ始めて来たのだ。それも、多少の誤差はあるかも知れないがほぼ全てこの広間の俺達が居る地点に…
「まっ!?まさか―」
「あぁ、大体想像してる通りの解釈で間違いないと思うぜぇ?これは…全て俺の仕業さ。今までのは、二つの意味での時間稼ぎってとこだ」
「そっ…そんな!?でも、そんな事したら貴方だっ―」
「それは愚問と言うやつだ。まぁ…俺とお前がこの程度死ぬ様なタマじゃないって事は、分かっているからやってるんだがな?」
倒れてくる木々を尻目に、俺は苦笑しながら美里と話をしている。自分でも、どんな神経してんだかな…
それにしても試作品にしては上々の出来だ。
《声帯認証型爆破プログラム試作機・G-S:121番》
別名《RINNE-ⅩⅥ》
この特別製の声帯認証システム搭載型の爆破プログラム…余り需要がなかった為、裏の取り引きでは結構安値と買い取る事が出来た。しかも試作品だから通常よりも安し!
これは、製作者にお礼を言わなきゃな!
「じゃ…お互い暫く埋まってろ!」
「くっ―」
そして、無数の木々が俺らの眼前に倒れてしまった。
☆
「おい。起きんか馬鹿弟子!」
「―――ん?あぁ…エ朗色匠」
「人の名前を端折るな!てか、上手くないし」
「おい…それより優は―」
「しぃーーーっ!コイツ…見つけた時には呑気に寝てやがったんだよ!何されたか分かんねぇ~が安静にさせろよ!」
「ソイツはただ、寝惚けてるだけだと思うから叩き起こせ。寝顔がムカつく!」
「承知!ウラァァァ!!!」
「ウゴファァァ!!!???」
「………ふっ」
俺が目を覚ました頃には、取り戻したかった風景の一片がそこにはあった。その風景は、とてもありふれているが俺にとっては心が何故だか幾分か穏やかになる。そんな風景さ…
俺はちゃんと、ありふれた日常と言うパズルの最後のピースを見つけられたみたいだ。
俺が目を覚ました時には夕陽は沈み、もうすぐ日が昇る頃になっていた。どうやら、ちょっとばかしオネンネを堪能していた様だ。
優を探す時間が大幅に得られた事によって、師匠達は屋敷内の設計図上には記されていない隠し通路を見つける事が出来、そこから更に奥へ…地下の方へ進み、地下の個室に優を発見したとの事。
目立った外傷は存在しないが、優の心には恐らく俺達の想像もよらない傷痕が残ったに違いない。
それから俺の事を救助してくれたのだ。
だが、師匠達の話によると…
美里は、俺の救助の次いでに探してはみたが全く影形すらも見えなかったと言う。
恐らく、俺よりも先に目覚めてトンズラしたのかも知れない。退くところは退く様だが、美里は執念深い。
だか、結果オーライ!
こんな結末になったんだ!素晴らしいっ!!!
少しは喜んでもバチは当たらないだろう。
だけど、そんな事を優の前で言えなくて…
心の中に閉じ込めていた。
この物語の終幕はあれから数週間過ぎたあの日に起こった。
夕陽が全てを紅く染め上げようとした時…
優の前には美里が居た。
彼女の執念と狂い切った愛の異常さは、他でもない優自身が良く知っていた。
彼は、抵抗出来なかった。
驚きはしたが、すぐ悟った。
―これは“罰”なのかい?―
美里さんの心を裏切る様な真似をした罰なのかい?
そんな問いを心の中で押し殺し優は…
涙を流しながら、光輝く銀色のナイフを握り締めた美里さんの愛に食い殺された。
これは、隠された真実を灯し出した物語。
それでも、夕陽は無慈悲にも沈み行く。
優の魂を連れて…
次回予告ぅぅぅぅぅ!!!
遂に決着!!!
優よ!目覚めろぉぉぉぉぉぉ!!!
そんなに待たせる気はないからね。




