沈黙した遺産
ヴィラメントで迎えた最初の朝、ヴェルデリカは研究室の扉の前で懐中時計を出した。
「妹さんは向こうの部屋へ。イルザさんがついていく。渡り廊下の真ん中に、あんたが立つ」
レトは渡り廊下の真ん中に立った。右手の扉の奥に研究室があり、左手の扉の奥に学寮の部屋があった。どちらの扉も開けたままにしてある。廊下の窓の下は、雪の積もった小さな中庭だった。
「四半刻。何かあれば、すぐ言いなさい」
エナは学寮の部屋の寝台に腰かけて、帳面を膝に置いた。イルザがその横の椅子に座った。
レトは廊下の真ん中から、研究室のほうへ一歩ずつ下がった。十歩下がったところで、研究室の戸口に背中がついた。
「エナ」
「なに」
声はすぐに返ってきた。遠くなかった。
四半刻のあいだ、レトは戸口に立っていた。ときどき妹の名を呼び、そのたびに返事があった。イルザが時計を見て、ヴェルデリカが三本針の計器を読んだ。
四半刻が過ぎて、エナが言った。
「平気。村の台所と工房くらい」
ヴェルデリカは紙に書いた。
「研究室の戸口と学寮の部屋。この距離で四半刻なら、今のところは保つ。今のところは、だ。長くするなら、少しずつ確かめる」
*
それから四日、ヴェルデリカは測った。
朝と昼と夕方に、三本針の計器を兄妹の前に置いた。並んで座らせたとき。レトだけ研究室に残し、エナを学寮の部屋へ移したとき。エナが横になって休んでいるとき。イルザの魔力計と並べて読み、数字を表にした。父の手紙が届いた三日目の朝も、それは変わらなかった。
離れる時間も、少しずつ延ばした。レトは研究室の奥の作業台に、エナは学寮の部屋の寝台に。二日目は一刻、三日目は半日近く。イルザがエナのそばにいて、声だけでなく、手首や肩の縁の輪郭を見ていた。何かあれば、扉を開けたままの渡り廊下を通って、すぐどちらかが相手のところへ行く。そう決めてあった。そのあいだ、エナの輪郭も声も変わらなかった。
エナは測られるのに飽きなかった。数字を自分の帳面にも写し、自分の分と兄の分を色の違う線で分けた。ヴェルデリカはそれを見て、何も言わずに自分の表の書式をエナの帳面に合わせた。
数字は日によって少しずつ違った。けれど何日たっても、それ以上のことは出てこなかった。
「治し方は」
三日目の夕方、レトは聞いた。
「分からん」
ヴェルデリカは即座に答えた。
「分かったのは、この配置で、ここまで試した時間なら、妹さんは安定しているということだけだ。どういう仕組みでそうなっているのかは、見当もつかん。仕組みの見えんものを、治すとは言えん」
レトは表を見た。自分の線と妹の線が、並んで上下していた。
*
昼のあいだ、ヴェルデリカは書庫に通った。
回収施設観測記録の綴りの、ほかの号を読んだ。書庫の古い目録を繰った。帰ってくるたびに、机の紙の山が少しずつ高くなった。
レトはそのあいだ研究室にいた。
ヴェルデリカは研究室の中のものに勝手に触るなとは言わなかった。そのかわり、触るなら、何に触ったかを書いておけ、と言った。
二日目の夕方、ヴェルデリカは書庫の帰りに学寮の事務へ寄ってきた。部屋の礼を言いに寄っただけだと言いながら、外套を脱ぐ手つきが荒かった。
「事務の机に、照会が来ていた。国境の調達局からだ。古い観測装置で、今も動くものはあるか。動かした記録はあるか。事務の者の話では、ほかの学院にも同じ文面が行っているらしい」
ヴェルデリカは外套を椅子の背に掛けた。
「答えさせなかった。調達局が古い器械で何をする気かは知らん。知りたければ自分で掘ればいい。この学院の棚の中身を、国境に教えてやる義理はない」
レトは作業台の上を見た。円盤の観測器は、三十年動いたことのない器械だった。
翌日、レトは円盤の観測器の前に座った。
外から見ても、やはり壊れたところは見当たらなかった。三枚の円盤、真鍮の枠、細かい目盛り。レトは円盤には触らず、枠の下を見た。
枠は台座の上に載っていた。台座は黒ずんだ木で、四本の脚がある。レトは作業台の縁に目の高さを合わせて、台座を横から見た。
傾いていた。
ほんのわずかだった。指の爪の厚みほど。右奥の脚が、ほかの三本より浮いていた。浮いたところに、誰かが紙を折って挟んでいた。紙は潰れて、湿気で柔らかくなっていた。
台座の天板と枠のあいだにも、隙間があった。枠を台座に留めるねじが四本あり、そのうち二本の頭が錆びて、ねじ山が潰れかけていた。枠は台座の上で、わずかに一方へ寄っていた。
今見つかった狂いは、器械そのものではなく、器械を載せている台のほうにあった。器械の中がどうなっているのかは、分からないままだった。
レトは帳面を開いた。
右奥の脚、爪の厚みほど浮く。折った紙が挟まる。枠のねじ、四本のうち二本が錆。枠、手前左へ寄る。
日付を書き、時刻を書いた。
夕方、ヴェルデリカが書庫から戻ってきた。レトは帳面を見せた。
「台を直してもいいですか。器械には触りません。台と、ねじだけ」
ヴェルデリカは帳面を読み、台座の前にしゃがんで、自分でも横から見た。それから立ち上がった。
「……三十年、この上に載せてあった。誰も台なんぞ見なかった」
「直してもいいですか」
「外したものは、全部残しておきなさい」
*
四日目の午後だった。
エナは学寮の部屋で昼寝をしていた。四日続けて測られて疲れたのだろう、とイルザが付き添って向こうへ連れていった。昨日、半日近く離れても変わらなかった部屋だった。扉は両方とも開けてあった。
レトは台座の脚の下から、潰れた紙を抜いた。紙を広げると、何かの講義の予告の刷り物だった。日付は二十年以上前だった。レトはそれを平らにして、帳面に挟んだ。
脚の下に、父の道具袋から出した薄い木の板を削って噛ませた。台座を揺すり、もう一度削り、噛ませ直した。がたつきがなくなり、横から見ても傾きは見えなくなった。
それから、錆びた二本のねじを抜いた。
一本は、ねじ山がほとんど潰れていた。レトはヴェルデリカに許しを得て、研究室の棚の引き出しから同じ太さの古いねじを探し出した。台座の木の穴は、錆で縁が崩れていた。錐で穴の縁を整えてから、新しいねじを通した。
外したねじは、紙の上に並べた。どれがどの位置のものか、帳面に図を描いて番号を振った。
枠を台座の真ん中へ戻し、四本のねじを少しずつ順に締めた。一本を一気に締めず、四本を回りながら、同じだけ。
最後の一本を締め終えたとき、レトは枠に手を添えたままだった。
円盤の縁が、光った。
ほんの一瞬だった。三枚の円盤の目盛りの溝に、細い光が走った。蝋燭の火を刃に映したような、淡い白い光。光は円盤の縁を一周しかけて、そのまま消えた。
レトは手を離さなかった。動けなかった。
研究室の奥で、紙をめくる音が止まっていた。
「……今の」
ヴェルデリカの声だった。机の紙の山の向こうで、ヴェルデリカが立ち上がっていた。
「見ましたか」
「見た」
ヴェルデリカは紙の山のあいだを抜けて、作業台の前に来た。円盤を覗きこんだ。光はもうなかった。目盛りの溝は、ただの溝だった。
「何をした」
「最後のねじを締めました。それだけです」
「そのとき、手は」
「枠に、添えてました」
ヴェルデリカは黙った。
レトも黙っていた。
台を直したからなのか。ねじを締め終えて、枠が元の位置に戻ったからなのか。それとも、自分が手を添えていたからなのか。
分からなかった。
レトは帳面を開いた。自分の懐中時計を出して、時刻を書いた。最後のねじ。締め終えた直後。右手を枠に添えていた。円盤の溝に光、一周しかけて消える。ヴェルデリカ先生、目撃。
その下に、外した部品を書いた。潰れた紙、一枚。錆びたねじ、二本。その番号と、元の位置の図。
ヴェルデリカが自分の懐中時計を出し、レトの帳面の時刻と見比べた。
「同じだ。もう一度、やってみるか」
レトは枠に手を添えた。何も起きなかった。手を離して、また添えた。何も起きなかった。ねじを一本緩めて、締め直した。何も起きなかった。
ヴェルデリカは三本針の計器を持ってきて、円盤の観測器の横に置いた。レトが枠に手を添えると、一本の針が浮いた。レトが離れると、針は下がった。円盤は、光らなかった。
「台を直したからか。あんたが近くにいたからか。その両方か。ほかに何かあったのか。一度きりでは、何も言えん」
レトはうなずいた。
渡り廊下の向こうから、足音がした。イルザが戸口に立っていた。
「エナさん、起きました。変わりはありません」
イルザは研究室の空気に気づいたのか、レトとヴェルデリカの顔を順に見た。
「何か、ありましたか」
「光った」
ヴェルデリカが言った。
「一度だけ。……三十年、うんともすんとも言わなかった器械がだ」
*
その夜、学寮の部屋で、レトは外した部品を紙に包んだ。
潰れた刷り物と、錆びたねじが二本。夕方、ヴェルデリカが、研究の資料として預けるから持っていけ、と言ったものだった。帳面の図と番号を照らし合わせて、包みの表に同じ番号を書いた。
エナが寝台から覗きこんだ。
「捨てないの」
「捨てない」
「拾ったんじゃなくて、外したんでしょ」
エナは笑った。村の工房で、誕生日の朝に言ったのと同じ言い方だった。
「元の形が分からなくなったら、何が変わったのか分からなくなる」
レトは包みを道具袋にしまった。
「光ったのが、直したせいなのか、俺がいたせいなのか。いつか分かるときに、元の部品がなかったら困る」
エナは自分の帳面を開いた。
四日目、午後。円盤、光る。一度だけ。私は向こうの部屋で寝てた。
その下に、エナは書き足した。見たかった。
*
翌朝、ヴェルデリカ宛ての封筒が二通届いた。
一通は、リュッセン支部の書記からだった。ヴェルデリカは封を切り、レトに渡した。
イルザがリュッセンを発つ前に、書記へ知らせておいた宛先だった。
倉庫通り七番の件。
荷揚げ場で働いていた者のうち、二人の所在が確かめられた。どちらも倉庫通りではなく、駅の反対側の下宿に寝泊まりしていた。届けに書かれていた、荷揚げ機の歯止めが噛んだことと手回しの把手のことを尋ねたところ、一人の年かさの男が、若い修繕屋と把手を回したことを覚えていると話した。ただ、それがどこの倉庫だったかは言えなかった。
倉庫の持ち主については、所在が分からない。台帳の住所のほかに、住まいの記録が見つからない。親方と呼ばれていた者が持ち主と同じ人物かどうかも、まだ確かめられていない。
ほかの作業員については、名前が分からず、調べを続ける。
レトは手紙を二度読んだ。
把手を回した男は、いた。
息を吐いた。吐いてから、持ち主の行をもう一度読んだ。所在が分からない。親方と同じ人かどうかも、分からない。紙からはみ出しそうな字を書く人だった。
レトは自分の帳面を開き、倉庫通り七番の持ち主の名の横に、所在不明、と書いた。親方と同じか、未確認、とも書いた。
把手の人、無事。その一行も書いた。
それから、書記への返事を書いた。これからクルムという村へ移ること。続報があれば、そちらへ回してほしいこと。持ち主の人の名をもう一度書き添えた。
*
もう一通は、学術院の書庫からだった。ヴェルデリカが請求していた古い目録の写しだった。
ヴェルデリカは机の上で写しを広げ、しばらく指でたどっていた。それから兄妹とイルザを呼んだ。
「見つけた」
目録の一行に、ヴェルデリカの指があった。
回収施設観測記録、第一号から第六十号。作成、旧回収塔。
「旧回収塔」
レトが繰り返した。
「何を回収してたんですか」
「それは、書いていない」
ヴェルデリカは首を振った。
「回収、とだけある。何を、どこから集めたのかは、この目録には一言もない。それに、学術院にあるのは第四十一号から第五十号だけだ。ほかの号がどこにあるのか、そもそも残っているのかも、ここには書いていない」
ヴェルデリカは目録の余白の書き込みを読んだ。
「北の山、峠の村から、さらに奥。……今も塔が建っているかどうかは分からん。建っていれば、観測室や、綴りの続きが残っているかもしれん。同型の器械もな。かもしれん、だ」
ヴェルデリカは第四十七号を開き、欠けの欄の書き込みのある行を指で押さえた。
「この四日、あんたたちの前で読んでいて気づいた。欠けのあった日と、その前の日とで、同じ欄の数字が違う。欠けの前後で、何かが動いたのを測っていた。……今の計器には、この欄に当たる目盛りがない」
ヴェルデリカは円盤の観測器を見た。
「妹さんの状態を、今の計器より細かく見られるかもしれん。見られんかもしれん。ここでは、一度光っただけだ」
「行きます」
レトは言った。
ヴェルデリカはすぐには答えなかった。窓の外を見た。
雪が降っていた。四日前から、止んだり降ったりしながら、ずっと降っていた。
「今は行けん。クルムまでは、冬でも街道が通じている。その先は、毎年雪解けまで閉じると聞いている。例年なら、ひと月ほどだ。塔への細道が今どうなっているかは、行ってみないと分からん」
*
ひと月。
レトは財布の中身を思い浮かべた。宿代はかからない。けれど、食べるものは買わなければならない。汽車賃は、もう残っていなかった。
「ここで待つのは」
イルザが言った。
「この部屋は、研究に来た者のための部屋だ。ひと月くらいなら、私の名でどうにかなる」
ヴェルデリカは言った。
「だが、あんたたちの食い扶持までは出せん。それに、ここで待っても、塔への道は近くならん」
「街で、修繕の仕事を探します」
レトは言いかけて、止まった。リュッセンの印刷所を思い出した。街の仕事は、店から店へ、通りから通りへ呼ばれて歩く。そのたびに、エナを連れて回るか、置いていくかを決めなければならない。
「……峠の村は」
レトが聞いた。
「峠の村なら、塔への道の手前です。雪が解けたら、すぐに行ける。村の仕事なら、一軒の家に何日もいて直すことが多い。エナをそばに置いておける」
ヴェルデリカはレトを見た。
「クルムという村だ。この冬、この辺りの村はどこも人手が足りないと聞く。……とはいえ、聞くだけではあてにならん。村の者に手紙を書いて、仕事と寝る場所があるか問い合わせる。返事が来てから発ちなさい」
「先生は」
「私は、ここで綴りの続きを読む。塔への道が開きそうになったら、クルムへ知らせる。そうしたら、クルムで落ち合おう。……それまでに、もう少しましなことを言えるようにしておく」
レトはエナを見た。
エナは帳面を閉じていた。
「村なら、いいよ。この四日、兄さん、夜中まで帳面つけてたでしょ。村なら、日が暮れたら仕事、終わるもん」
イルザが小さく笑った。
ヴェルデリカはその日のうちに、クルムへの手紙を書いた。
封をしてから、円盤の観測器の前に立った。
「返事を待つあいだに、もう一度やる。四日目と同じ配置だ。妹さんは向こうの部屋で休む。あんたは最後のねじを締め直して、枠に手を添える。明日の夕方、私が書庫から戻ったら」
*
次の日、日が傾きかけたころだった。
レトは研究室へ持っていく帳面を探していた。エナは学寮の部屋の窓辺で、指先をこすり合わせていた。
「兄さん」
振り向くと、エナは両手を膝のあいだに挟んでいた。
「冷たい。……それと、耳の奥で、また」
村の夜と同じ言い方だった。
「波か」
「たぶん」
エナは自分で窓辺を離れ、寝台に上がって壁に背をつけた。それから、戸口にいたイルザを見た。
「イルザさん、先生に言ってきて。今日はできないって」
イルザはすぐに渡り廊下へ出ていった。
レトは帳面を置いて、寝台の端に腰を下ろした。手を伸ばせば妹の肩に届く。それより離れない。扉の外へは出ない。
ほどなく、渡り廊下に足音が二つした。ヴェルデリカは戸口で止まり、中へは入らなかった。
「一日延ばす。明日の夕方だ」
「すみません」
「謝ることではない。器械は逃げん」
ヴェルデリカは寝台の上のエナを見た。
「要るものは」
「灯りの油を。今夜は、たぶん寝られないから」
イルザが油を足しに来て、それから自分の部屋へ下がった。
波は夜半まで続いた。
エナは壁に背をつけたまま起きていた。ときどき指先が灯に淡く透けた。透けるのは指の先だけで、手首より上へは来なかった。耳の奥の声を聞き取ろうとするように、何度か首をかしげた。何を言っているのかは分からない、とエナは言った。遠くて、切れ切れで、言葉になる前に途切れる。
二人はあまり話さなかった。レトは膝の上で、外した部品の図を清書した。一枚描き終えるたびに顔を上げて、妹の指を見た。
四日続けて測られたからか。この何日か、昼に半日近く離れていたからか。雪のせいか。村の夜は、離れる試験をした夜だった。どれとも言えなかった。
夜半を過ぎて、エナが指先を灯にかざした。爪の際まで色が戻っていた。
エナは帳面を裏返し、後ろの頁を開いた。村の夜の分が書いてあった。その下に、今夜の分を書いた。
二回目。ヴィラメント、学寮の部屋。夕方、日が傾いたころから。夜半すぎまで。遠い声。何を言ってるのかは分からない。兄さん、ずっと寝台の端。
その下を一行空けて、エナはペンを置いた。
「明日のことは、明日書く」
*
翌朝、エナは階段を下りなかった。昼までは脚がもたない、と自分で言った。イルザが一人で街へ下りて、パンを買ってきた。
昼を過ぎてから、エナは渡り廊下を二度往復して、足を確かめた。
「向こうの部屋、行けるか」
レトが聞いた。
「行く。昨日は寝てないから、向こうで寝る。四日目と同じでしょ」
エナは指先を兄の手の甲に当てた。冷たくはなかった。
夕方、ヴェルデリカが書庫から戻った。前触れが出たらすぐやめる、とだけ言って、三本針の計器を円盤の横に置いた。
エナはイルザに付き添われて学寮の部屋へ行き、寝台に横になった。扉は両方とも開けてあった。
レトは最後のねじを緩め、四本を回りながら同じだけ締め直した。締め終えて、枠に手を添えた。
一本の針が浮いた。円盤は光らなかった。
手を離して、また添えた。針は浮き、円盤は光らなかった。
「二度目はなし」
ヴェルデリカは紙に書いた。
「これも記録だ」
その夜、エナは帳面の裏の、空けておいた一行を埋めた。
翌日。昼まで、階段はやめた。夕方には平気。向こうの部屋で寝た。
*
クルムからの返事は、まだ来なかった。レトは道具袋を寝台の脇に置いた。外した部品の包みが、袋の底で小さく鳴った。
お読みいただきありがとうございます!
「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク・評価・リアクションをいただけると嬉しいです。
Xでも更新情報などを発信しています。
よろしければこちらもフォローいただけると嬉しいです!
https://x.com/st_shosetsu




