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五十路転生 −転生先は更年期障害が呪いとされている世界だったので、現代漢方薬の知識を持ち込むことを女神に許されました−  作者: ねねこ


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28/28

28 エピローグ

 ユイが王都から村に帰ってきて一年がたった。

 

 だが、生活は特に大きな変わりはない。

 漢方の薬草を育て。

 森で自生している薬草を採取し。

 漢方薬の調合をし。

 子どもたちに漢方薬の調合を教え。

 王都での話をし。

 そうやって大きく変わらない穏やかな日々を過ごしていた。


 

 そして、前ほどの頻度ではないけれど、時折カルーシャもやってくる。

 唯一変わったことといえば、カルーシャが村へ来る前には必ず神託を下ろすようになったことだ。

「急に真面目になったね」

『違います』

 カルーシャはむっと頬を膨らませた。

『上位の神から「管理者たるもの、訪問にも礼儀がある」と叱られまして』

「神様も怒られるんだ……」

『女神もいろいろ大変なのです!』

「まあ上司に怒られたのならやめて正解だよ」

『はい。ですから、必ず神殿に神託を下ろすようにしました。この村だけでなく、どこに下りるときもです』

「うん、いいと思う」

『でもこれで一ついいこともあったのですよ』

「何?」

『下りる場所で、必ず供物が用意されるようになりました』

「供物……?」

『はい!主に甘いものです!」

「餌付けじゃん、それ……」

『違います!民の敬虔な信仰の証です!』

「その割には目が完全にお菓子目当てだけど」

『だって美味しいのですよ!』

「……カルーシャらしいよ」


 この緩い感じが女神らしくなく、出会った時からフランクに付き合える良さだ。

 神様だけど、友達で。


「そうだ、カルーシャ。最近、子どもたちがね、新しいお菓子作ったの。今日のおやつなんだけど食べてく?」

『食べます!』

「たぶん、カルーシャ好きなやつだと思う」

『まあ!楽しみです!』

 ちょっと待ってて、余分があるか確認してくる、と言い、ユイは孤児院のキッチンへと向かった。

「おーい、みんないるー?」

「あ、ユイ姉ちゃん!あれ?カルーシャ様といたんじゃなかった?」

「うん、カルーシャ来てるよ。それでさ、今日のおやつにって言ってた炭酸のデザートってできてる?」

「うん、あるよ。魔導氷室で冷やしてる」

「じゃあ、それ、カルーシャの分もあるよね?」

「うん。カルーシャ様が来るって神託があったから追加で作っておいた」

「じゃあ、今日はいい天気だし、外でおやつにしようか?」

「さんせー!」

 今日も元気な子供たちにおやつの用意は任せて、ユイはカルーシャの元に戻ろうと外に出た。

 

 その時。

 カルーシャの前に誰かが立っているのが見えた。

 逆光になっていて顔は見えないが男性のようだ。

 

『予定より早かったですね』

 カルーシャは驚く様子もなく笑っている。

「え?」

 青年がこちらへ向き直る。

 逆光の中から現れたのは……。

 

「お久しぶりです、ユイ様」

「……レオルド?」

 思わず声が裏返った。

 真新しい白いローブを着たレオルドが笑っていた。

「どうしてここに!?」

 レオルドは、肩に担いでいた筒状の羊皮紙入れを軽く叩いた。

「辞令が出ました」

「辞令?」

「来月付けで、辺境西部魔術師団第一分団を新設することになりました」

 ユイは瞬きを繰り返す。

「へんきょう……せいぶ……なんだって……?」

「辺境西部魔術師団第一分団です。分かりやすく言えば、王宮の魔術師団の分団を作るように命じられました」

「ええと……?」

「その拠点が――」

 レオルドが辞令を開いてユイに見せる。

「この村です」

「はああああああああ!?」

 確かにそこにはこの村に魔術師団の分団を置く、と書いてあった。

「その魔術分団の団長として私が任命されたのです」

「ちょ、ちょっと待って……。え、理解が追い付かない……」

「つまり私はこれからこの村でお世話になると言うことです」

「なんだってーーー!?」

 ポカンとしていたユイに、カルーシャが

『ユイ!子どもたちがおやつの用意ができたと呼んでいますよ!レオルドも行きましょう』

 とレオルドの顔を覗き込む

「ぜひご相伴にあずかりたいですね」

『では行きましょう、二人とも』

 カルーシャが先頭になってふわふわと飛んでいく。

 孤児院の庭では、子どもたちが大きなガラス鉢を囲んで待っていた。

「ユイ姉ちゃん!できたよー!」

「今日はしゅわしゅわフルーツポンチ!」

「カルーシャ様の分もちゃんとあるよ!」

『やりましたー!』

「完全にカルーシャ用のおやつになってる……」

「あれ?お客さん増えてる!」

「あのかっこいい乗り物で帰っていった兄ちゃんだ!」

「器!器の追加持ってきてー!」

 子どもたちが慌ただしく孤児院へ駆け込んでいく。

 その光景を見ながら、レオルドが小さく笑った。

「どうやら、私も歓迎していただけそうですね」

「うん。たぶん、この村のみんなならね」

 

 炭酸の弾ける音。

 子どもたちの笑い声。

 女神の嬉しそうな歓声。

 そして、新しく始まる日々。


 レオルドは隣で楽しげに笑うユイの笑顔を見下ろして「ほら、また会えたでしょう?」と小声で囁いた。

「?レオルド、なんか言った?」

「いいえ」

「?ふうん?」

「そうですね。まずしゅわしゅわフルーツポンチとやらをいただきながら、ゆっくりこの一年の話を聞かせてください」


 王都で貴女がいないことをさみしいと思ってしまったとか、ここに来るのにさらに高速にした絨毯の魔法陣の苦労とかはいずれゆっくりとできたらいい、などと思いながら、レオルドは今日からこの村で始まる新しい日々に胸を躍らせた。


 今日からはまた会いたくて会いたくて仕方なかった人と会える日々なのだから


 終

ここまでありがとうございました。いやー、ラブコメって難しいですね……。

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