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創命理念で異世界ライフを  作者: Izma
戦後療養編

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第八十六話 「治療目前、英雄扱いは慣れてません」

四人の兵と騎士が、門の前で何やら盛り上がっていた。

普段は別々の持ち場にいるらしく、久しぶりの再会で話が弾んでいるのだろう。


――と思ったら、彼らの視線がこちらに向いた。


「聖女様! わざわざご足労いただき感謝いたします!」


四人が一斉に姿勢を正して深々と頭を下げた。


(え、なんか顔引きつってない?

 それに言葉遣いが一段階“王族モード”なんだけど……!)


やっぱり聖女様って、王様みたいに扱われる存在なんだなぁ。

……その王様を見たことはないんだけど。


続いて、今度は僕たち七人にも向き直って挨拶が始まった。


「レオニスさん、ミレナさん、お疲れ様です!」


「おー! これは……一閃の剣・シルファ様と、その後継者のカールアさんでは!」


(…………ん?

 なんでシルファさんは“様”で、カールアさんは“さん”なんだろう?

 それに後継者? 後継者ってなに?)


心の中でツッコミながら耳を傾けていると、兵の一人がハルドさんに向き直った。


「そちらはギルド長のハルドさんでは!

 この街のために右腕まで犠牲にして守っていただき感謝いたします!」


「いや、当たり前のことをしたまでです」


ハルドさんがいつもの落ち着いた声で返す。

けれど兵たちの熱はまだ収まらない。


今度はララさんが前に出てくる。


「あ! 回復術師のお姉ちゃんじゃないか!

 すごい助かったぞ、本当にありがとうな!」


「わ、私なんて……っ、あ、ありがとうございます……」


ララさんは照れながら頭を下げた。


(回復術に加えて他の魔術まで使えるんだから、そりゃすごいよな……うんうん)


そんな和やかな空気の中で、四人の兵と騎士の視線が何かを探すようにさまよった。


そして――僕を背負っているカールアさんの姿に気づいた。


「あれ? そこの少年は……?」


その問いに、ハルドさんが“待ってました”と言わんばかりに口を開いた。


「ナティアの英雄、と言ったらわかるかな?」


やけにニヤニヤしていて、なんか誇らしげだ。


次の瞬間――。


「あの!! ナティアの英雄!!!」


四人の声が揃った。


「今回の戦争に参加した最年少冒険者でありながら、

 最も力を振るい、この辺境の街ナティアを守ったという……

 赤茶の少年!!」


騎士の方が妙にテンションが高い。

なんだこの熱量。


(え……僕、そんな活躍してたの……?

 右脚もこんなだし、実感まるでないんだけど……)


そんな浮ついた空気を、レオニスさんがビシッと締めた。


「おい、お前たち。聖女様の御前だぞ。

 聖女様も時間がない中、わざわざ来てくださっている。早く案内を頼む」


(そ、そうだ……僕とハルドさんを治すために来てくれてるんだ……!)


気が引き締まる。


「はっ! 了解です! ではご案内いたします!」


騎士たちは慌てて直立すると、四メートルはありそうな大きな門の開門作業に取りかかった。


金属の軋む重い音が響く。

光沢のある門がゆっくりと左右に開いていく。


「皆さん、こちらです」


騎士二人が前に立って案内を始める。

門兵二人はそのまま左右で待機した。


――そして、敷地内へ。


広い。想像以上に広い。

むやみに豪華ではなく、品のある華やかさだ。


木々が庭園のように配置され、小さな川が流れ、橋まである。


(冬なのにこれって……春や夏だったら絶対めちゃくちゃ綺麗じゃん……)


カールアさんに背負われながら、僕は移ろう景色を目に焼き付けた。


そして――ついに目的の建物の前へ。


(……え、ちょっと待って)


「では、こちらが治療を行う建物になります」


(…………なんで本館なのぉぉぉぉ!!?)


心の中で絶叫する。

けど口には出さない。出せるわけがない。


騎士さんが丁寧に説明を続ける。


「おそらく、中には領主・ガエル様がお見えになるかと。

 もし見当たらない場合はメイドか執事にお申し付けください。

 では、お入りください」


そう言って門のような大扉を開き、手のひらで“どうぞ”と示す。


……そして、入った瞬間。


(お、おぉぉぉ……!!)


大理石の床。

ふかふかの絨毯。

どこを見ても高そうな装飾品。

大小さまざまな絵画が壁に飾られている。


(貴族の家って……本当にこんななんだ……

 え? これって歩くの緊張しない? 僕だけ?)


と感動していると――。


「これは聖女様ではありませんか。

 わざわざご足労いただきありがとうございます」


爽やかな声が響いた。


振り向くと、柔和な表情の青年――執事だ。

落ち着いた佇まいで、けれどどこか親しげな雰囲気がある。


「お連れの方々は……あ、なるほど。そういうことでしたか。

 ガエル様からは『お見えしたら治療室に案内してくれ』との指示が出ております。

 では、このままご案内いたします」


執事さんは僕たちを一瞥すると、即座に状況を理解してくれたようだった。


――階段へ。


(うっ……階段、多っ……!)


一段の高さがあるせいで、実際以上に長く感じる。


けれど背負ってくれているカールアさんはまったく息を乱さない。


(女性なのにすごい……って言い方は失礼だけど、

 単純に僕より体力も筋力もあるんだよな……)


三階ほど上がったところで廊下へ出る。

その奥へ奥へと歩いていき――。


「こちらに四部屋ございます。もしよければ、自由にお使いください」


(……四部屋!? 自由!?

 いや、広いよ絶対……一部屋一部屋絶対広いって……貴族こわ……)


「では私はガエル様へ到着の報告をし、お茶をご用意してまいります。

 どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」


執事さんは柔らかく微笑み、丁寧なお辞儀をして去っていった。


(……ついに、ついに……元の右脚に戻れるんだ……!)


胸が高鳴る。


右脚は重く、黒く、異質だった。

でも、もうすぐ戻る。


緊張と期待で、僕は思わず拳を握りしめた。

最後まで読んでくださりありがとうございます!


アイザックが意識を取り戻してから“英雄扱いされる”描写が続いていますが、

十三歳のEランクの少年があれだけのことを成し遂げたら、

周囲がここまで持ち上げてしまうのも当然だよな……と思いながら書いていました。


本人としては等身大でいたいのに、勝手に期待が積み上がっていく――

そのギャップこそ、今のアイザックらしさだと思っています。


次回はいよいよ、右脚の治療が本格的に動き出します。

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