表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創命理念で異世界ライフを  作者: Izma
戦後療養編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/275

第八十一話 「目覚めの大騒動と、英雄(?)の悲鳴」

「わあああああああ!!!!

 なんかいるうーーーっ!!!!」


自分でも理解できないぐらいの大声が出た。

喉が痛いとか、息が苦しいとか、そんなのどうでもよかった。


“なにか知らないものがそこにいる”という恐怖が、身体を勝手に動かした。


その瞬間――


「なんだ!!?」

「敵襲か!!?」


僕を囲むように眠っていた仲間たちが、一斉に跳ね起きた。

まるで爆発音でも聞いたかのような反応速度だ。


ガルドさんとロッカさんは即座に僕の前へ飛び出し、僕に背を向けて武器を構える。


「おい! アイザックを守れ!」

「せっかく回復してきたのに、ここで倒れさせるわけにはいかん!」


たぶん僕を守る気持ちが強すぎて、ちょっとテンションが壊れている。


そして――

僕の身体の上に、何かが覆いかぶさっていた。


いや、“何か”じゃない。

“複数人”だ。


ミーナさん、ミリエルちゃん、ミゼスさん、ティーネさん、ララさん……

五人くらいの柔らかい重圧がのしかかり、呼吸がほとんどできない。


(ちょ、ちょっと待って……! なんでみんな僕の上に乗ってるの!?)


さらには、僕の視界の左右には――


左にカールアさん、右にシルファさん。


二人は僕の顔を挟むように覗き込んでいて、互いの頭頂部が視界の中心線を境にぴったり左右に位置している。


距離が近い!!


そして二人の胸と腕が思いっきり僕の喉と胸のあたりを圧迫している。


(やばい……肺が……!! のど……!!)


呼吸ができない……

口をあけても“上に何か乗ってる”から空気が入ってこない。


そんな中で――


「弟弟子が!!」

「アイザックくんが!!」


カールアさんとシルファさんの声が魔法のように重なり、


「起きた!!」


さらに声がハモる。


いや、起きたも何も、起きてたけどみんなが乗ってるから死ぬって!!


「んんんんん!!!!」


声にならない声しか出せない僕。

顔はきっと真っ赤。

酸素が薄い。

脳がふわふわする。


その気配に気づいて、皆の顔が覗き込む。


「わあ! 起きてる!」

「きゃっ!! ちょ、なんで二人ともそんなに密着してるのっ!?」


「きゃああああ!!!」


周囲が悲鳴と混乱に包まれる。


(これ僕のせいじゃないよね!? 不可抗力だよね!?

 変態じゃないよね!?)


そう心の中で必死に弁解していた。


カールアさんとシルファさんは、はっとして頬を赤らめながらひょいっと跳ねるように身体をずらした。


圧迫が消え――


すー……はー……っ!!


ああ、生き返る。

冬の朝の澄んだ空気が、肺の奥まで染み渡っていく。

こんなにも空気が甘いと感じたのは初めてかもしれない。


そこでようやくガルドさんとロッカさんが振り返る。


「おい!! 本当に起きてるじゃねえか!!」

「マジかよ!! よし、じゃあ――」


二人が僕のすぐ近くへ腰を落とそうとした瞬間。


「ちょっと!!!

 乗っからないでくださいよ!!」


半泣きで叫んでしまった。


「はあ!? なんかあったのか?」

「お前、寝起きからテンションおかしくね?」


いや、違う。

ほんとに、命の危機だったんだ……。


そんな僕の状況を、少し離れた場所で見て笑いをこらえている男が一人。


城壁に寄りかかって腕を組み、唇を震わせている。


––––強そうな騎士さん。


いや、“飲んだくれおっさん”と呼ぶべきか。


笑いを必死に堪えている姿が腹立たしくて、つい言ってしまった。


「おいおっさん!!

 分かってるなら止めてくださいよ!!」


そのおっさんの眉が跳ね上がる。


「おっ……おっさん!?

 誰がだ、この坊主!!」


「す、すみませんお兄さん!

 でも分かってるなら止めてくださいよ!

 本当に死ぬかと思ったんですから!!」


そこで追い討ちのようにシルファさんが口を開く。


「まあまあ。実際おじさんでしょ?

 レ・オ・ニ・ス・お・じ・さ・ん♪」


レオニスさんの顔がひきつる。

カールアさんは呆れた顔でため息をつく。


そんな騒ぎの中、下から兵士や冒険者たちの声が響く。


「なんだ!? また敵か!?」

「いやもうやめてくれよマジで!!」


足音が近づき、城壁の上に駆け上がってきたのは――


「アイザックになにかあったのか!!」


ハルドさんだった。


後ろには鎧姿の男女。騎士団の人間だろう。


「どうも、ハルドさん……」


「もう大丈夫なのか?」


「はい。とりあえずは……」


そんなやり取りをしたあと、ハルドさんは皆に向かって叫んだ。


「騒ぎの原因はーーー

 悪い夢を見て泣き叫ぶ冒険者だったーーー!!!」


……え、ちょ、それ僕のことじゃない!?

でもまあ……間違ってはない……。


恥ずかしさで耳が熱くなる。


そのとき――僕は気づいた。


ハルドさんの右腕が、肘から先ごっそり無くなっていた。


「ギエエエエエ!!!!

 ハルドさん腕!!! 右腕ないですよ!!!」


叫ぶ僕に、ハルドさんは平然と返す。


「アイザック。お前も右脚ないぞ」


「ふぇっ!?」


布団をどけ、右脚を確認する。


……ある。


あるけど……


真っ黒だ。


「な、なんか黒いんですけど!!

 なんでえええ!!?」


ハルドさんが素で驚く。


「お前の反応のほうが怖いわ!」


その後も二人の即興漫才が続き、

周囲は抱腹絶倒。

一部は涙を流して笑っていた。


そんな皆の笑顔を見て……ふと思った。


(……人を笑わせるって、案外、悪くないな)


戦いとは真逆の暖かさが、胸に広がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ