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創命理念で異世界ライフを  作者: Izma
第一章 第二節 少年期冒険譚篇 ―始まりの旅路と邂逅― ナティア冒険者編

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第十七話 「迫られる選択と、胸を貫いた力」

ナティアに来てから、一か月が経とうとしていた。


採取、護衛、鍛錬――。

できることを毎日少しずつ積み重ねるうちに、

胸の痛みは少しずつ薄れてきた。


それでも完全に消えたわけではない。


(……それでも。前よりは、顔を上げて歩けてる)


そう自分に言い聞かせながら、ギルドの扉を押し開けた。



空気がぴりつく。


――また、視線。


「ほら、あのガキ……」

「祠にすがったって噂のやつだろ」

「狩りもできねぇFランクじゃねぇか」


遠巻きの声は小さいのに、胸には重く刺さった。


(……痛い。でも、昨日よりは耐えられる)


一瞬足が止まりかけたが、歯を食いしばって前へ進む。


「アイザックくん、おはよう」


ミーナが心配そうに微笑む。

その声だけで胸の緊張がほぐれた。


「今日も依頼、見ていく?」


「……うん。見るだけでも」


狩りの依頼へ手を伸ばしかけ――

胸がひゅっと縮み、指が止まった。


(……まだ、怖い)


掴んだのは、軽めの採取依頼だった。


「これ、受けます」


ミーナは優しく頷いた。


「うん。気をつけてね」



依頼を終えて戻る途中、街道の空気がざわついていることに気づいた。


(……何だ? 風向きが……変だ)


胸の奥で、警鐘のようなざわめきが走る。


その瞬間――


ゴォォォォン!! ゴォォォォン!!


街の中央塔から、重々しい“警報の鐘”が鳴り響いた。


「魔素の暴走だ!」

「森から魔物が出るぞ!」


冒険者たちが武器を抱えて走り、

ギルド職員が必死に叫ぶ。


「エルドの森で魔素の暴走を確認!

小型、中型の魔物が街道に出没中!

戦える者は防衛線に急いでください!」


(魔素の暴走……!)


胸が跳ねる。


背後から嘲る声。


「Fランクが来ても足手まといだ!」

「昨日泣きそうだったガキが戦場に出るのかよ」

「田舎者は宿に隠れてろ!」


拳が震えた。


(怖い……でも……)


胸の奥の、あの日の記憶。

何もできず死んだ前世。

誰も守れなかった悔しさ。


(――誰かが傷つくのはもっとイヤだ)


「……俺は、行く」


自分でも驚くほど、はっきりした声だった。


ミーナが焦ったように走り寄る。


「アイザックくん!? 危険だよ!」


「分かってる。でも……行かないほうが、もっと怖い」


ミーナは、少しだけ目を潤ませて微笑んだ。


「……うん。絶対に、無茶はしちゃだめだよ」


その言葉が、強く背中を押した。



森の入口には、二十名ほどの冒険者が集結していた。


「来るぞ!」

「戦士前衛! 術師は後衛に!」


緊張の空気が張りつめ、森の奥が揺れる。


次の瞬間――


ドゴォォッ!!


巨大なドリンブルが木々をなぎ倒して突進してきた。

幼体とは比べものにならない速度と質量。


「どけっ!」

「ひっ――!」


冒険者が弾き飛ばされ、地面を転がる。


そして魔物は――

避難できず立ちすくむ青年へ突っ込んだ。


(やめろ……!)


胸が裂けるほど痛い。

足が震えた。


(怖い……それでも……!)


「――やめろッ!!」


叫んだ瞬間。


体の奥で何かが爆ぜた。


バチィンッ!!


魔素。霊素。

そして名前も知らない第三の力。


それらが混ざり、うねり、噴き上がる。


足元から圧が立ち上がり、

目に見えない衝撃がドリンブルへ叩きつけられた。


ドガァッ!!


「な……なんだ今の!?」

「Fランクの力じゃねぇ……!」

「成体のドリンブルは角のある獣型魔物で、Fランクでは本来相手にできない危険度――D~Cだよな?」


冒険者たちが息を呑む。


僕は――自分の手が震えていることに気づいた。


(……これ……僕の……?)


ドリンブルは気絶しているだけだった。

命は奪っていない。


(よかった……本当に……よかった)


上級冒険者が駆けつけ、魔物を拘束していく。



ギルドに戻ると、ミーナが泣きそうな顔で駆け寄った。


「アイザックくん……! 無事で、本当に……よかった……!」


胸がじんわりと温かくなる。


「……僕、守れたよ。誰も……傷つけずに」


ミーナは、優しい笑みを浮かべた。


「うん……あなたは、強いよ」



夜。

祠の前で、僕はそっと手を合わせた。


風はないのに――

鈴が、ちりんと鳴る。


「……守れた。奪わずに、守れた」


胸に残るのは、痛みよりも温かさ。


(……俺は、変われるのかもしれない)


小さな確信が胸の奥で、静かに灯っていた。

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