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創命理念で異世界ライフを  作者: Izma
第一章 第二節 少年期冒険譚篇 ―始まりの旅路と邂逅― ナティア冒険者編

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第十六話 「変わりたい少年と、小さな一歩」

鳥のさえずりで目が覚めた。

胸の奥に残る重たさは、まだ完全には消えていない。

それでも昨日より、ほんの少しだけ心が軽かった。


(祠で祈ったから……なんて理由じゃないと思うけど)


あの温かさが嘘ではなかったことだけは、はっきりしていた。


朝食を取り、支度を整えて宿を出ると――背後から声が飛ぶ。


「アイザックちゃん、今日は顔がちょっと“頑張るぞ”って感じだね!」


「はい……今日は少し楽な気がします」


(前世でも似たようなこと言われた気がする……僕ってそんなに顔に出るのかな)


気持ちを整えながら、ギルドへ向かった。



扉を開けた瞬間、空気が張りつめた。


――視線。


「初依頼でビビってたガキだろ」

「魔物も倒せなかったやつだな」


押し殺した声が耳に刺さる。

胸の奥がじくりと痛む。


(……前よりは大丈夫。でも、やっぱり刺さる)


それでも足を止めなかった。

逃げてしまえば、本当に折れてしまう気がした。


(怖い。でも……僕は、逃げない)


逃げても何も変わらない。


一瞬だけ“俺”と意識が揺れる。

その小さな変化が、不思議と背中を押した。


「アイザックくん、大丈夫?」


受付のミーナが心配そうに覗き込む。


「……うん。たぶん大丈夫」


ミーナはそっと微笑む。


「その顔なら……今日は昨日より前向きだね」


その笑顔だけで、張りつめていた肩の力がふっと抜けた。



ミーナが一枚の依頼書を差し出す。


■薬草採取の護衛

■依頼主:ミリエル(薬草師の弟子)

■危険度:低


「この子、すごくいい子でね。あなたに向いてると思うよ」


「……やってみる」


自然と口が動いていた。


そのとき、元気な声がギルドを揺らす。


「ミーナさーん! 準備できたよ!」


僕より少し年下くらいで栗色の髪の少女――ミリエルが駆け込んでくる。

僕を見るとぱっと表情を明るくした。


「今日一緒に行くアイザックくん? よろしくね!」


「え、あ……うん。よろしく」


眩しいほどの笑顔に、胸のざわめきが少し薄れた。


(……すごいな。こんなふうに笑えるんだ)



エルドの森へ向かう途中、ミリエルが足を滑らせた。


「きゃっ!」

「危ない!」


反射的に手を伸ばし、彼女を引き寄せる。

直後、茂みが揺れ、小さな魔物が顔を出した。


(また魔物……!)


体が固まりそうになる。


(怖い……でも!)


「大丈夫、これは!」


ミリエルが素早く小瓶を投げる。

瓶が割れ、白い煙が広がる。


「キュゥ!」


驚いた魔物は、慌てて逃げていった。


僕は大きく息を吐く。


(まだ震える……でも、昨日よりずっとマシだ)


ミリエルは僕の手を握ったまま、笑みを向けた。


「今の、助けようとしたでしょ? すごかったよ!」

「す、すごいって……僕は……」

「震えててもいいの。前に出ようとしたんだから、それって立派な“強さ”なんだよ」


ミリエルの手は、小さくて温かかった。


胸に温かさが広がった。



採取を終えて街へ戻ると、昨日と同じ祠の前で足が止まった。


夕陽が祠を赤く染めている。


(今日の僕は……少しでも変われたかな)


そう思いながら手を合わせた。


「明日も……今日より強くなれますように」


その瞬間――ちりん。


風のないはずの境内で、小さな鈴が揺れた。


「……昨日と同じだ」


思わず笑みがこぼれる。


胸の痛みはまだ残っている。

でも確かに、ひとつ前に進めた。


そんな気がしていた。

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