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なんかすごいクーポンアプリ!~配信された謎クーポンでグルメから嫁まで異世界旅行を満喫する男  作者: 八海
第一章

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07:家を買う、そして職員を拾う

★★★★☆


「……あの、このクーポンって使えますか?」

「はい。では金貨9400枚のこちらの物件を値引きをしまして、金貨9枚と銀貨40枚に割引させていただきます」


「「「はい?」」」


 

 翌朝。

 ベルグ不動産という街の名前を冠した一番有名だという不動産屋のカウンターで、俺たち3人は素っ頓狂な声をあげていた。



 

「えっ……っと、店長さん? 私たちだからとそう言う、特別扱い的なサービスはやめていただきたいのですが……」

「ライネ様、レイネ様だからと言うわけではございません。そちらの割引券をお見せいただきましたのでこのお値段になります」



 ベルグ不動産の会長だという初老の男性は至って真面目にそう説明する。



 

「金貨、約1万枚が10枚? アナタ……どうなっているの……? もしかしなくてもやっぱりどこかの御貴族様?」

「えーよくわからないけど、旦那さますごいー」




 

 ちなみに一晩明け、2人からの呼ばれ方が『アナタ』と『旦那さま』になっていた。



 『ノユキ』がすでに名前じゃないので好きに呼んでもらっていいのだが、これでは夫婦のようでムズムズしてしまう。

 


 

 俺たちは朝イチで見学させてもらった庭付きの屋敷と、昨晩に見た屋敷を比べていた。

 結局ライネとレイネは俺が気に入ったという理由で朝から見た豪華なほうの屋敷を購入したのだった。

 




 

 最初、あまりにも高い値段に目玉が飛び出そうだったのだが、2人の貯金を合わせればはギリギリいけると言われた。

 だから、この話のキッカケになってしまった俺としては、せめて少しでも力になれたらと思ったので『お買い物クーポン(99.9%)』とやらを不動産やさんへ見せたのだった。








 

 (0.1%引きだと思ったら99.9%引きだった)


 こんな高い買い物だと0.1%下がるだけでも楽になると思ったのに、大変な買い物になってしまった。



◆◆◆◆◆


 

「と、とりあえずこのクーポンが使えるってことが分かったな」

「割引は……嬉しいんだけど、どうしよう。使う予定だったお金がほぼまるまる残ったのだけど……」


「お姉ちゃん、旦那さまの服とか装備とか買わない?」

「あ、それいいわね」




 (このクーポンがあと9枚もあるなんて言える空気じゃないな)


 せっかくなのでライネとレイネには良いものを買ってもらいたいし、安く手に入る方法があるなら使わない手はない。



 

 

「ちなみに装備品って高いの?」

「そうねー……んー物によってはお屋敷より高いものもあるけれど、王都にでも行かなきゃ売って無いわよ」


 

 武器や防具なら普段から使うだろうと思ったのだが、なるほど確かにそう言うものか。




 

「どうせなら高級家具とかも買おうか」


 武器や防具がだめなら家具だということで、今日買った家は代金を全て払ったので明日には住めるらしい。

 だが家具などはないためしばらくは雑魚寝になるだろう。


 でもせっかく家を3人で決めたのだからと、装備品を買ってから家具もまとめて買いに行く予定を入れた。




 

 2人は俺にどんな装備品を買おうかわいわい話しながら歩いている。


「あら、ライネちゃん、レイネちゃん! 今日は美味しいブル肉が入っているわよー!」

「おっ、ニ姫のお二人、串焼き食ってきな!」


 2人はやはり有名人らしく、街の人たちから結構な頻度で声をかけられる。


 (みんなライネとレイネを見て、ちょっとニヤニヤするか顔を赤らめて俺を見るのはやめてくれ……恥ずかしい)


 昨日は2人の部屋に泊まらせてもらったので、色々と気づかれている気がする。


 2人は全く気にしていないらしく、昨日と同じノリで少し立ち止まって会話をして、また歩き出すを繰り返す。


 俺は2人に挟まれながらも、中世ヨーロッパのような石とレンガ、木材で作られた立派な街並みを満喫しながら目的地はと向かったのだった。




 ◆◆◆◆◆


 



「アナタ、ここよ」

「ついたー」


 2人が武器の手入れをしてくれていると言う武器店は街の北側にある職人街にあり少し遠いので、今日はギルド近くにある武器防具屋に連れてきてもらった。



 

「いらっしゃいませ」


 かなり広い店内に剣や槍、鎧などが所狭しと並べられており、何人かの若い冒険者たちが品定めをしていた。

 

 先ほど恐ろしい効果を発揮してしまった「お買い物クーポン』がまだ9枚もあるが安易に使っていいものか悩む。




 どうせならお得に買い物したいなと思いクーポン一覧を見ると『記念品交換クーポン(冒険者)』というのがあることを思い出した。





「……すいません、これって使えたりするんですか?」


 俺はカウンターにいた背の低い女性店員にクーポンを提示すると、何事もなかったかのように「はい使えますよ」と言いながら店の奥へと消えていった。


 記念品とはなんのことだろうか。

 いやそれよりも。




 (……普通、クーポンの引換ってどこかからその店に代金が支払われているはずなんだがどう言う仕組みか全くわからん)



 そもそも家を買った時の割引いた分の補填はどこからあの不動産屋に支払われるのか。




 (……いやだめだ。気にしないって決めたんだし、このことは考えるのを放棄しよう)



 そんな感じでカウンターで店員さんが戻るのを待っていると、ライネとレイネがいくつかの服を見繕ってくれた。





 街中で見かける冒険者の人たちが来ているような服。革鎧や胸当ての下に着るような服らしい。

 肌触りは良くないが頑丈で破けにくく、通気性がいいらしい。




「私たちはもうこの格好が慣れちゃったんだけどね」




 ライネもレイネも今日も上下に分かれたいつもの服。肌の露出が多いのでマントを首から巻いており膝下まで肌を覆っている。


 鎧などの防具は蒸れるし、動きにくくなる。攻撃は避ければ大丈夫という精神だそうだ。


 俺は2人に選んでもらった上着とズボン、ブーツに肌着を数点。それと簡単な胸当てと脛当てをカウンターへと持っていく。




 実は昨日ライネにもらった報奨金の一部とやらを持ってきているので、今回の買い物はそんなに高くないと言っていたからこれで買おうと思う。





「私が出すわ」

「えー私も旦那さまに買ってあげたい」

「いえ、ここは……」






 そう思っていたら、レジに女性が複数いると発生するイベントが発生してしまった。




「全部で金貨2枚と銀貨60枚になります。後こちらはそちらの方への記念品になります」




 店員さんはそう言って正方形の小銭入れのようなウエストバッグを一緒に渡してくる。

 俺が着替えたいとお願いすると、更衣室のような部屋を使わせてもらったので買ったばかりの服を着る。 胸当てやらは使ったことがないので、装備しなくていいかなと思いバッグだけ腰に下げる。




「あ、これを入れる鞄も買えば良かった」




 ライネに渡された皮袋はそのまま持ち歩いているのだ。

 中身の価値は家を買う時に知った。


 詳しくは数えていないが金貨が100枚ぐらい入っているらしい。




 脳内で価値計算してみると、1000万円ほどになったので早く何処かにしまいたい。

 もしくは銀行は無いのか。



「しゃーない……ライネ達といる限りスリとかされなさそうだし」



 結局俺は諦めて胸当てと脛当て、皮袋を持ったまま店内へと戻った。



 ◆◆◆◆◆



「ありがとうございましたー」




 店員さんの元気な声を受け、店を後にする。

 結局ライネとレイネに胸当てと脛当てを装備させられてしまった。




「そういえば、アナタさっきもらったた記念品って何?」


「んー? あぁ、俺が持ってるクーポンを見せたらくれたんだよ。ほらこの記念品ってやつ」




 ライネに『使用済み』と書かれたクーポン画面を表示させて見せてやる。



「んんー文字は読めないけど、さっきの家といい不思議な力なのね」

「旦那さま凄いよねー。さっきの家のやつってまだ使えるの?」


「あー……あーそうだな……あと9回ぐらい使えるらしいぞ」




 言おうかどうか悩んでいたことだったが、レイネに確信をつかれたので白状した。


 白状した結果、俺の着ていた服が入った紙袋をバサバサっと落とすライネ。

 純粋に「すごいー」と喜んでいるレイネ。




 (ライネはヤバさに気づいたか……)





「それより旦那さまーこれなにーすごーい!」


 レイネが抱きついてきたかと思ったら、何やら膝を曲げしゃがみ始めたので何かと思い横を見ると、腰のウェストバックに肩まで腕を沈めていた。



「――っ!?」

「れ、レイネ!?」



「凄いねこれ! どこまで入るんだろうねー」




 空いた口が塞がらないとはこう言うことを言うのだろうか。

 ライネは慌ててレイネの腕を引っ張り出し、近くにあった冒険者ギルドにダッシュして貸し会議室を借りた。




 そして俺はウェストバックを外すと持ち物の皮袋と一緒にテーブルへと置いた。







 それから、なんだこれはと実験を続けた結果、俺が持っていた皮袋の中身はすべてウェストバッグに入ってしまっていた。ついでに俺が着ていた服や、ライネがギルドから引き出してきた金貨も全てバッグに収納されてしまったのだった。





「魔道具……えっ? アナタ……これ記念品って言ったっけ?」




 ライネの反応を見るからに、これは確実に屋敷より高いやつだ。




 クーポンで手に入れたのは『マジックバッグ』とでも呼べばいいのだろうか。

 小さいくせにいくらでも荷物が入る夢のような鞄だった。



 

 ――コンコン




 手に入れたものは仕方ないので、どうしたもんかなと思っていると不意に会議室の扉がノックされた。






 ライネは慌ててウェストバックをマントの下へと隠し、レイネもヤバさに気付いたらしく、中身の無くなった皮袋を慌てて隠す。




 俺はそれを確認して「どうぞ」と声をかけると、扉を開けて入ってきたのは昨日見た私服姿の職員さんだった。







 何やら元気がなさそうだが休みなのだろうか。


「あれ? ミカどうしたの?」



 ライネが声をかけると、ミカさんと呼ばれていたギルド職員さんは口を開こうとしては諦めと言うのを、繰り返す。


 何かあったのかと、ライネとレイネもじっと相手が口を開くのを待った。

 そしてスカートの裾をギュッと掴み何かを決心した顔になる。



 そして――。




「私をお二人の奴隷にしていただけないでしょうか!」





 そんなセリフと共にギルド職員のミカさんが綺麗な土下座をキメたのだった。


次回明日の20時投稿予定です!


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